バンプレストオリジナルと石森もしくは石ノ森のこと
*ネタバレ注意!てかバレ嫌な人はココに向いてないとおもうよ!
一口にバンプレストオリジナルと言いましても膨大で、私の扱ってるものはごく一部にすぎません。どれを扱ってどれを扱わないかの基準はあります。「石森章太郎の影響を受けているものに限る」てことです。若い方は復刻版でしか作品を知らないかも知れないですね。尚、後期ペンネームは石ノ森ですが、ここでは石森で統一させていただきます。
SRW界では立派な黒歴史扱いのアニメ版『魔装機神サイバスター』、でも歌だけはいいんだよなー、てのが共通する意見です。激しく同意。ところで主題歌『戦士よ、起ち上がれ!』の歌詞、当時から言われていたことですがアニメ版『サイボーグ009(新)』の主題歌『誰がために』に酷似している、ていうか単語と言い回し変えただけで内容は同じじゃね?というくらい似ています。ここに歌詞は載せられないので各自でお確かめください。『009』の原作者が石森で、この歌詞は石森本人による作詞だそうです。ちなみに「誰がために」とくれば「鐘は鳴る」と続くものと決まってますが、『戦士よー』でも「鐘を鳴らそう」という歌詞があり曲中鐘が打ち鳴らされてます。
なにゆえ『魔装機神』系の主題歌が『009』インスパイヤなのか?それは多分、「地底王国ラングラン」の発想が漫画版『009』第二部にして真のエンディングエピソードと言われている「地底帝国ヨミ編」から取られたものだからです。サイボーグ戦士たちは地底で巨大な魔神像と戦うんですが、この魔神像がグランゾンの元ネタと思われます。彼らは後に神様やら天使やらとも戦うことになるんですけど、アルベルトが「神に喧嘩を売れるのはオレたちしかいない 」みたいなことを言ってて、シュウが神をも倒すという発想に至るヒントになってるわけですね。ラ・ギアス三大神の設定も、「ヨミ編」のラスボスが3人の人間の「悪」だけを抽出して合体させた存在であるというところから来ているんでしょう。
SRWはアニオタ向けのキャラゲーですので、魔装機の発想はオーラバトラーから来てる、アカシックバスターはゴッドバードのインスパイヤ、という事はファンの間では割と有名ですが、基本ロボものではない石森作品からの影響についてはあまり知られてないんですよね。『009』は石森が亡くなったため未完となっていますが、「ヨミ編」で一度最終回にしたんだけど人気がありすぎて再開した、ということのようですので、やはりあれを本当の最終回と見るべきでしょう。ジェットのセリフ「君はどこに落ちたい?」は有名ですね。なにしろ真のエンディングだけあって良くできた作品で、いいとこ取った『魔装機神』が面白くないわけがありませんですね。ちなみに私はブラッドベリは合わないのでさらに元ネタは未読です。SFが流行った頃は基礎教養だったのかも知れませんけど、どうも翻訳文は苦手です。知識で知ってるだけ。ヴェルヌはまだ読みやすいですけど。
『魔装機神』はアホエピソードも多いですけど、基本的にはものすごく暗くてハードな話だと理解してます。『武装機甲士グランゾン』が混じったことでさらに拍車をかけてる気がしますね。『α』シリーズで増えた設定はキャラクターをキャッキャウフフさせたいファン的には納得いかないものが多いように思いますが、『魔装機神』という作品の設定として考えると理解できるので可能な限り取り入れることにしてます。小話書くときは基本ギャグなんですけど、今は題材に合わせて激情とか感情のうねりみたいなものをできるだけ短めに描くように心がけてます。多分さらっと読むには読みづらくなったけど今書くべきはこうかなと思うので。でキャラクターたちのそういう描写がどこから来てるのかと考えると、人の持つ悪意に立ち向かう戦士たちの悪戦苦闘する姿を描き続けた石森作品に源流があるのは間違いないでしょう。ロボットものが巨大な力の描写を選んだのに対し、あくまで人間の等身大のヒーローを描いたところが石森なりのヒューマニズムだったかなと。
このサイトでは『魔装機神』とともに『ヒーロー戦記』からゲシュペンスト及びギリアム=イェーガーを取り上げがちなんですが、ギリアムの右目を隠した髪型は『009』の主人公島村ジョーから取られています。「ヨミ編」においてジョーはマインドコントロールされ00ナンバーズたちと一時的に敵対するんですが、このへんギリアムの一時的記憶喪失ネタにつながってるわけです。またゲシュペンストはドイツ語で「幽霊」の意味、機体色は黒。これは『009』でジョー達を戦闘サイボーグに勝手に改造した悪の秘密結社「ブラックゴースト(黒い幽霊団)」から取ったものです。スタッフの誰もそんなことは言ってませんが、あまりにも明らかなのと著作権問題がアレなので大きい声では言ってないだけかと。
ちなみにギリアムのオマージュキャラとしてはなぜかイングラムが有名ですが、実はアクセルのほうがギリアム的ですよね。ギリアムの二つ名は「漆黒の堕天使」、アクセルは「ダークナイト」。ギリアムはゲシュペンストが黒いからわかるけどアクセルはどのへんがダーク?と思った方も多いのではないかと思いますが、それはギリアムから取ってるからです。それ言っちゃうと実はトロンベカラーもそうなんですけどね。特にアホセルはギリアムのおいしいとこだけ取ったキャラで私も好きです。そのアホをあえて捨てちゃった『OG』は完全に判断ミスだと思うんですが。『OG外伝』からはアクセルにアルフィミイという幼女属性が付いてますが、これもまた『ヒロ戦』でギリアムが少女を助けたエピソードが元になっているのかもですね。
ものすごい私見ではありますが、SRWのオリジナル系は『ヒロ戦』から始まったと思っています。いや『第二次』にマサキとシュウが出たほうが先だから時期で言えば間違いなくそっちが先なんですが。マサキとシュウは『魔装機神』という架空の作品からの出展、という設定なので、私の中では『マジンガーZ』とか『ガンダム』とかの個別作品と『魔装機神』は同じ扱いで、バンプレストオリジナルに『魔装機神』が含まれているって感覚自体があまりないですね。
対してゲシュペンスト、押しも押されもせぬバンプレストオリジナルを代表するロボですが、じゃあどんな番組名というかタイトルの作品から出たものか?と考えると、これはもう『ヒロ戦』が初出であるとしか言いようがないでしょう。『魔装機神』については一時著作権上の争いがあったか何かでSRWで使われなくなっていましたが、ゲシュペンストとギリアム=イェーガーについては、登場したときからずっとバンプレ側で好きに使えるメカ、キャラのままだったと言えるのではないでしょうか。
前期SRWにおいては脚本は富野ガンダム準拠であり、富野ガンダムなくしてSRWなしみたいな時代がありました。だからその頃はギリアムもクワトロとつるんでたりしたんですけど、なんだか違和感があったわけです。富野モノこそ基礎教養で見てただけで好きでも嫌いでもないですが、石森系のギリアムとはちょっと異質だったんだろうと思います。ので個人的にはギリアムはラ・ギアス人なんじゃないかとずっと思ってました。最近の描かれ方からするともっと別のモノになっちゃってるようですが。
イングラムの初出作品『スーパーヒーロー作戦』では、これまた石森の代表作である『仮面ライダー』を出してしまうと強く影響を受けすぎるとの判断で、ライダーはあえて外したそうですよ。『ヒロ戦』はコンパチとは言えメインのエピソードはやっぱり仮面ライダー関連でしたからね。そんなわけで私はイングラムのことはあまり書きません。メタルヒーローシリーズもけっこう見てたんですけどね。
『OG2』でギリアム関連イベントのクライマックスと言っていい「生きろ!」、これは元々『ヒロ戦』で仮面ライダーblackこと南光太郎が言ったセリフです。特撮『仮面ライダー』シリーズの原作は石森であり、『black』は特に人気のあった作品です。TV版『blackRX』なんかはライトすぎる作風とムチャクチャな脚本で正直微妙扱いされることもありますが間違いなく人気でしたし、一方漫画版は非常にシリアスで、光太郎がTV版準拠とすればギリアムは石森版準拠という割り振りだったんではないかと思います。いや光太郎のライトさはTV版以上ていうか性格まるで別人なんだけどね。ので私がなにか書くときは設定がほぼ同じな別人として書いてますって、そもそもSRWは全部そういうもんなんですが。
blackは謎の悪の秘密結社ゴルゴムと戦いますが、これもまたブラックゴーストの別の姿だったのかも知れないです。ブラックゴーストは人間の心に潜む悪が具現化したもので、人の悪意がなくならない限り滅ぶことはないんだそうですよ。名前からしてブラックだしね。『ヒロ戦』には様々な悪の秘密結社がでてきて、それら全部をコントロールしているのがアポロン総統、ギリアムのもうひとつの姿です。『ヒロ戦』において悪の秘密結社の寄せ集め集団の名称は「ネオアクシズ」となっていますが、本当は「ブラックゴースト」という名前にしたかったんじゃないでしょうか。『ヒロ戦』に『009』からの出演はなく著作権の許可も取ってなくてできなかっただけで。「ブラックゴースト」の後継組織は「ネオブラックゴースト」ですし。『ヒロ戦』のゲシュペンストって誰が造ったの?て疑問は未だに明示されてないのですが、クロスオーバーな裏エピソードが許されるとするなら所属はブラックゴーストで決まりでしょう。能力は悪の秘密結社側のものだけどギリアムが離反するのは『009』や『仮面ライダー』の作劇と同じです。
ゲシュペンストが黒いボディに真っ赤な目なのは、もちろん仮面ライダーblackのデザインに準拠しているからです。主人公たちのマブダチにして悪の秘密結社の総統にしてもう一人の仮面ライダー、というギリアムの複雑な立ち位置は、blackのライバル・シャドームーンが元ネタでしょう。シャドームーンの正体は南光太郎と兄弟同様に育った親友の秋月信彦。光太郎とともに改造されてしまったんですが、光太郎はのーみそを改造される前に逃げ出すことができたので正気。どうにか信彦を取り戻そうとがんばったものの信彦の洗脳は解けず、結局その手にかけることになってしまいます。親友殺しは光太郎のトラウマになっており、ギリアムを倒すときも本当は倒したくなかった、だから『ヒロ戦』で「生きろ」という言葉が出てしまったと。ウルトラマンとガンダムも出演していますけれども、『OG』シリーズまで引っ張った(引っ張りすぎです)セリフからもわかります通り、『ヒロ戦』のメインストーリーは『その後の仮面ライダーblack』だったんですね。で光太郎が二度も親友殺しするなんてシャレにならない過酷すぎる運命なので、『ヒロ戦』のエンディングは、もしかしてギリアム生き延びたかもしれない?みたいな話にしてあったと。SRWで、原作の展開があんまり救いがない場合は救済脚本(いわゆるスパロボ補正)が用意されることがよくありますが、これは『ヒロ戦』が始めたことじゃなかったかなと思ってます。『ヒロ戦』の後SRWと派生作品にはゲシュペンストと派生機体およびギリアムのオマージュキャラが出演し続け、脚本面でも『ヒロ戦』を参考にしたと思われるところが多いのです。
石森という人は『009』に大変思い入れがあったらしく、『仮面ライダー』その他の作品は他の漫画家も描くことを許可したのですが、『009』の漫画だけは必ず自分で描いたのだそうです。ギリアムが『009』のオマージュなのは間違いありませんが、石森本人は生涯知らないままだったかと。『009』のファンなら自分で気づくはずだから言うまでもありませんし『ヒロ戦』の制作者自身が表立って言ってませんし、石森氏の思い入れが強い作品を勝手に「料理」したのはまずかったかな、とか思ってたのかも知れないですね。
ということには割と昔に気づいたんですが、まあ制作者側が明言してないしと思って控えてました。でも石森も亡くなって随分経ち、知らない間に「009イヤー」やら始まって終わってたし、このままだと誰も指摘しないんじゃ?と思ったので、ギリアム=イェーガー研究の第一人者を勝手に自認する私が書いちゃうぞ!とゆーことで書いちゃってみました。
なので実は、『OGS』は『ヒロ戦』の後日談で『ヒロ戦』は『仮面ライダーblack』の後日談。イングラムやエルザムやアクセルはギリアムのオマージュで、ギリアムは『009』と『仮面ライダーblack』のオマージュだったという、なんかもう何がニワトリでタマゴ?みたいなことだったのです。
これだけ楽しくやってくれれば石森氏も天国で喜んでくれてるんじゃないかと思うので、こっそりネタに使ったことも笑って許してもらえるんじゃないでしょうか。少なくとも私はこれらの作品が存在してくれたおかげで大層楽しめました。世に出してくれた皆さんにあまねく感謝する次第でございます。ここにのっけてる小話は全部、感謝の気持ちで書いてるつもりです。イタい出来ではありますが、面白がってくれる方が一人でもおられましたらこれ幸いです。
あと蛇足。さらに小ネタについて言えば、もうどこが元ネタとかいちいち書いてられないほどに詰め込まれてますので、いちいち書きません。この作品におけるシャアとかガルマとかアポロガイストとか他にも色々、突っ込んで書いたほうがいいかなと思うことはあるんですが、それやってしまうと元ネタの個別作品にも突っ込んでいかなきゃならないので。でオリジナルな事象に限って書くんですがなんか、原作見たことない人だと誤解されがちでそれも何だか。てなわけで、とりあえずストーリーの根幹に関わると思える部分だけネタバレてみました。ヒロ戦についてはまだ全然書けてないので、少しづつ書けたら良いですな。
*トラバて片道に意義があると思うのだが相手方がどう思うかわからないのね。とりあえずこの頁のみ勝手トラックバック実験中。ご自分の判断でお取り扱いください。
ん?トラックバック先が表示されてなかったみたい。直しました。不慣れですんません。