来月頭からハワイに行くことになった。極めて有難いことに、交通費や滞在費を出すから遊びに来ないかと誘っていただいたのだ。僥倖。ハワイ行きが決まった途端、心の闇がスッキリと晴れ、全身に力が漲り、生きる喜びと希望にあふれた。なんて単純な男なんだと感動した。世界にハワイがあって良かった。かつて私はハワイで強盗に遭い拳銃を突きつけられて全財産を奪われた体験がある。だが、ハワイが好きな気持ちに変わりはない。あんな場所は頭の悪い芸能人が行く場所だと思っていたが、全然、違った。まさに、地上の楽園であると思った。全財産なんてくれてやる。その時の所持金は八千円だった。ディズニーランドに行ったのだと思えば安い。安いと言うか、タダ同然だと思った。

本当に良い買い物は絶対に高くない。タダ同然だ。中国茶が好きな人は一杯のお茶に何千円も何万円も出す。中国茶に興味がない人は「お茶にそんなにお金を出すなんて」と引くのだろうが、中国茶フリークにとって「樹齢二千年の木から取ったお茶をこの値段で飲めるのはタダ同然。自分で中国に行く手間や自分で育てる手間を考えればほぼタダ」となる。この違いはかなり重要で、何でも安いのが一番となったら貧。それこそ貧。貧富の貧。貧より冨。ぷっぷ〜。海外に呼ばれたと書くと「お金がある人はいいですね」みたいなことを言われるが、違う。その人は、金があるから呼んだんじゃない。価値を感じたから呼んだのだ。無自覚に過ごしていると金なんて簡単に飛ぶ。勇気を出して冒険に使ったお金は、人生の宝物になる。大事なものは金ではない。ロマンであり、心意気である。

自信がないと言う人がいるが、私は断言する。足りないのは自信ではない。冒険であり、アドベンチャーである。冒険が足りないから、人生に退屈しているのだ。生きるのが「つらい」のではなく、生きるのが「つまらない」だけなのだと言いたい。最悪で最高。これぞ、大冒険。汗かけ恥かけ涙しろ。命知らずの、恩知らず。本当は身体を張って生きたいのだ。頭だけになっている自分をぶん殴り、広い世界の美しさに心をときめかせる。浪漫飛行でも浪漫非行でも何でもいい。旅に出よう。ロードムービーのような人生を。俺たちにはハッピーエンドの才能がある。ハッピーエンドに向かって爆撃をするのだ。身体を張り、人生を張り、有り金は死に金だとホラを吹き、死ぬ方向に突っ走る。ものがあるから豊かなんじゃない。ものがなくても面白がれる心を持った男が真の富裕層なのだ。

フットワークだけは軽い。これが、持たざる者（俺）の強みである。普通、来週からハワイに行くから一週間空けろと言われても、空けられない人の方が多いと思う。仕事があったり、家庭があったり、逡巡したり、理由は様々だ。だが、俺は行ける。常にパスポートは携帯している。明日エジプトに呼ばれても行ける。君は行けるか。俺は行けるぞ。羨ましいか。わっはっは。私の仕事は、私が私である特権をフルに活用して、みなみなさまを羨ましがらせることである。そして「よし俺も」と明るく死ぬ方向に舵を取る狂人が一人でも発生したら大成功。私は、悪い影響を与えたいのである。最悪、路上生活者になるだけである。路上は路上で、それなりに楽しい。一緒に洞窟で暮らそう。自分を守るから弱くなるのだ。出し惜しみをしている間に人生が終わる。被害者ヅラをしている間に人生が終わる。私は、楽しもうぜと発破をかけたい。楽しければ自殺をしない。一文無しになったとしても、心はすっきり晴れやかである。

薬物中毒患者が「一人になるのが一番やばい」と言っていた。これは、薬物中毒患者に限った話ではない。人類全体にとって大事な指摘だ。人間は、あまりにも一人でい過ぎるとおかしくなる。偏った自意識の沼に嵌り、食事も適当になる。何より、美味しくない。他者は、鏡だ。他者がいるからこそ、自分を正しく見つめることができる。誰だって、人のことならよく見える。自分のことになると簡単に発狂する。そんな方には、是非、私を目撃して欲しい。私を目撃して「こいつよりはマシだな」と思って、安心して欲しい。明日から長崎に行き、明後日は福岡に行く。その後は予定も寝る場所もない。会える人は会おう。このままでは路上生活者になる。あたたかいご飯を食べて、あたたかい布団で眠りたい。路上生活者にはなりたくない。