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アンダーテイル ガスター博士の報告書17の考察

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2020-08-20 11:55:45

ごりごりのSF読みがたまに真面目な考察をする。色々ネタバレ。あと、これも当たり前ですが、あくまでも全て仮定の話ですので、一つの見方としてください。

Posted by @BjcShigure

※ガスター博士についてのイベントや台詞は「Undertale Japan Wiki」https://undertale.fandom.com/ja/wiki/W._D._Gasterを参考にしています。



ガスター博士とは、アルフィーの前任の王立科学者でコアの開発者である。劇中の台詞によると、「自らの発明品の中に落ちて命を落とし」、「時空の彼方に消し飛んだ」ことになっている。
ちなみに「自らの発明品」=コアだという解釈をよく見るが、今回は他に候補を考えたい。たとえば、サンズの家にあった謎の機械だ。

「しんじつのラボ」の報告書は17が欠番となっており、セーブファイルを操作することで、報告書17を見ることができる(方法については割愛)。
報告書17は絵文字フォントのWingdingsで書かれていて、アルファベットに変換すると、

ENTRY NUMBER SEVENTEEN(報告書17)
DARK DARKER YET DARKER(闇はさらに暗くなり)
THE DARKNESS KEEPS GROWING(暗黒は広がり続ける)
THE SHADOWS CUTTING DEEPER(影はますます深く切り裂く)
PHOTON READINGS NEGATIVE(光子の値はマイナスである)
THIS NEXT EXPERIMENT SEEMS(次の実験は)
VERY
VERY
INTERESTING(非常に興味深いものになるだろう)

WHAT DO YOU TWO THINK?(キミたち二人はどう思う?)

という文章が出てくる。
「キミたち二人は」とわざわざ「二人」と強調しているところが意味深だが、今回はこの一文を無視して全体の解釈をしたい。

しんじつのラボに見る報告書は、何をやっているのかわかりやすい(報告書なのだから当たり前だろう。わかりにくくては困る)のだが、報告書17は何を言っているのかさっぱりわからない。
しかし、天才科学者が書いている報告書なのだから、「闇は深くなる」だとか「影が深く切り裂く」が、絶望等の心情を表した詩的表現だとは考えにくい。この文章がそういうプライベートなものならば、「次の実験は興味深いものになるだろう」という結論に行き着かないだろう。
「「次」の実験」という単語から考えても、この報告書は何かの実験の観測結果だと考える方が自然である。

それならば、この謎めいた前半は、いったいどういう意味なのか?

ここで着目したいのは、この報告書の中でもっとも科学的な印象がする「PHOTON READINGS NEGATIVE(光子の値はマイナスである)」という一文である。

光子が「マイナス」という表現から連想されるのは「反光子」である。
物質には反物質が存在し、反陽子や反中性子は既に存在が確認されているが、光の粒子である光子に反光子が存在するかどうかはわかっていない。質量の観点から反光子は存在しないのではないか、と考えられているが、存在しないことを証明するのは非常に難しい。

ガスター博士のこの報告書は、「反光子の存在を観測した」という意味ではないだろうか。
光子と光は同じモノなので、その反対の性質を持つ「反光子」を闇に例えるのは自然だ。反光子の様相を、「闇」「暗黒」「影」と表現していたのであれば、この前半に納得がいく。

物理学上、過去から未来に飛ぶ光子は、未来から過去へと飛ぶ反光子と同時に存在することになっており、反光子を観測できれば過去を観測できるかもしれない(もちろん物理学上は不可能なので、SF的な話になるが)と言われている。

ガスター博士は過去を観測したのか?

この前の報告書16は、ケツイを注入された被験者たちがくっついてしまって、取り乱すアルフィーが書いたと思われる記録だ。そして、次の報告書18は「あの はなが きえた。」という一文のみ。
「あのはな」とはもちろんフラウィーのことなので、フラウィーが初めてケツイの力で時間を巻き戻した辺りである。

時間を巻き戻した……

先ほど、反光子は私たちの世界に存在しない、と書いたが、これは時間が過去から未来への一方通行にしか流れないからである。未来から過去へ時間が流れている世界なら、反光子を観測できるかもしれない。

サンズはGルート最終戦で
「our reports showed a massive anomaly in the timespace continuum.」
(非公式訳:俺達は研究によって時空連続体における大規模な異常を観測した)
という台詞を述べる。「our report」の共同研究者が誰か明言していないものの、ガスター博士でほぼ間違いないだろう。
ちなみに「時空連続体」というのは物理学用語で、三次元空間に「時間」を加えた四次元を一つの連続体と捉える考え方である。

私はこの台詞を聞いたとき、「どうやって時空連続体の大規模な異常を観測したのか」と不思議だった。
この戦闘内でサンズは「他の時間軸ではおれたち友達だったんじゃないか?」と聞くが、恐らく彼は何度も時間が巻き戻っていることは知っているものの、他の時間軸の記憶があるわけではなく、あくまでも時間が戻った時にそれを「察せる」だけである。

ここで、先ほどの考察に戻る。
反光子は、未来から過去へ流れる時間の中では存在できるかもしれない。報告書18でフラウィーが失踪している。そして報告書17でガスター博士が反光子の検出に成功した。
この三つを紐付けると、フラウィーがケツイの力で過去に戻った際に、ガスター博士は反光子を検出し、この世界の「時間が巻き戻っている」ことに気付いたのだろう、という結論に到達する。
※時間が巻き戻っているなら観測データも消えるのでは?という身も蓋もないツッコミはひとまず置いておく。

そう解釈すると、報告書17の「闇はさらに暗くなり暗黒は広がり続ける」→反光子が大量に検出されている→フラウィーが何度もループを繰り返している描写、と受け取ることができる。
この反光子検出器がサンズの家にあった謎の機械だ、と仮定すれば、サンズが記憶が無くてもループを察せることについても説明がつく。彼は、自宅の機械が反光子を検出することで、ループが起こったことを知るのである。

ここでさらに興味を引かれるのは、報告書17の「次の実験は興味深いものになるだろう」という一文である。
反光子を検出して世界がループしていると気付いたガスター博士の、「次の実験」とは何だったのだろうか?
「自らの発明品の中に落ちて命を落とし」「時空の彼方に消し飛んだ」実験とは、ひょっとしてその実験だったのではないだろうか?

ここで「自らの発明品」=反光子検出器、だと仮定すると、「中に落ちて」→ガスター博士は反光子検出器に入った、と考えられるが、「落ちて」とは何を意味しているのだろうか。
「時空の彼方に消し飛んだ」という文章と合わせて考えると、機械の中に時空の裂け目のようなものが出現し、そこへ落ちてしまった、という意味だろうか。

もしも時間が巻き戻っているのに観測データが残っているのだとしたら、反光子検出器は時間の干渉から独立している。そこで、ガスター博士は自分も反光子検出器に入れば、自分も時間遡行の影響を受けず、記憶を保ったままでいられると考えたのではないだろうか。

だが、恐らく、この時間遡行は生体が耐えられる体験では無かったため、ガスター博士を構成する物質がちりぢりになってしまったのだろう。彼が未だに意識を保っているかどうかはわからないが、もしも意識を保っているとしたら、未知の領域を観測できて科学者冥利かもしれない。もっとも研究成果を外界に発表する手段はないが。


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