第二百十六章 重なる指先、すれ違う想い
「――いよいよ、だな」
「……うん」
天空都市の船首。
その甲板に、俺は仮面を取ったサザーンと並んで立っていた。
「こんなところまで付き合わせて、ごめん」
常ならぬ、儚げな声で彼女は言う。
孤島の上空についたところでサザーンが甲板に出たいと言い出し、その意をくんだ俺がついてきたのだ。
「邪神の欠片の討伐は、僕の、ううん、一族の、悲願なんだ。
そう考えたら急に、怖く、なって……」
「力を貸すって、言ったろ」
遮るように返すと、彼女は「ありがとう」と微笑んで、寂しげに故郷を見下ろした。
「封魔の陣の、光。昔はあんなに嫌だったのに、何だか全部、懐かしいな」
彼女にしか見えない光に向かって伸ばしていく、その震える手に……。
俺はそっと、自分の手を重ねた。
「あ、あ、あ、あのっ、ソーマ!?」
「力を貸すって、言ったろ」
俺がもう一度そう口にすると、彼女は真っ赤になってうつむいてしまった。
その緊張をほぐすように、あえて軽い口調で話しかける。
「ほら、ゆっくり深呼吸してー」
「……う、うん」
「右手をピンと伸ばしてー」
「……うん」
「邪神の封印解いてー」
「うん。……え?」
そして……。
甲板の端で封印を解かれた邪神の欠片はひゅーんと落ちていって、封魔の陣にぶつかってベチャッてなって死んだ。
消えていく死体を呆然と眺めるサザーンの肩を「やったな!」と叩くと、喜びが溢れ出したのか、彼女はそのまま泣き崩れたのだった。
悲願成就!
ソーマ「いいことをすると気持ちがいいなあ!!」