【2024/2/29非公開予定】「宇宙世紀……じゃない? スパロボだ、コレ!?」 作:永島ひろあき
感想、誤字脱字の御報告ありがとうございます。
矛盾とご都合と捏造のごった煮ですが、笑って楽しんでもらえれば幸いです。
地球連邦軍の新型宇宙戦艦もとい強襲揚陸艦ホワイトベースは、宇宙要塞ルナツーにてパオロ・カシアス他、サイド7襲撃時に負傷したクルーを預け、一路、南米にある地球連邦軍総本部ジャブローを目指していた。
その実態はブライト・ノア中尉を艦長とし、更には少なくない数の民間人をクルーとして運用するという驚くべき状況に置かれている。
幸いなのは彼らホワイトベース一行に、プルート財閥の所有する人型機動兵器アクシオ二機とその母艦である武装コロンブス級サンタ・マリアが、大気圏突入までは同行したことだったろう。
彼らを追撃するシャア率いるジオンの部隊は、派遣された補給が中途半端に終わってしまった為、アクシオの援護を受けながら大気圏へ突入するホワイトベースを攻撃しきれずに、地球への降下を許す事態となってしまう。
この大気圏ギリギリでの攻防により、シャアは部下のザクを失い、彼自身もまた負傷して療養を余儀なくされる結果となる。
かくしてホワイトベースは、アーウィンやグレースに見送られながら地球へと降下したのである。ただし、ヘイデスがスパロボ知識というか原作知識に基づいて予測したように、ジャブローではなく北米へと。
現在、北米大陸はそのほとんどをジオンに制圧されており、その拠点は太平洋に面したキャリフォルニアベースとニューヤークシティに置かれている。
ジオン公国を支配・指導するザビ家の末弟ガルマ・ザビは、友人たるシャアを退けたホワイトベースに対して、功を焦っている事もあり果敢に攻撃を仕掛けていた。
砂塵の舞う乾いた大地にホワイトベース、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクが出撃し、頭上からはジオンの戦闘機ドップ、地上からは主力戦車のマゼラアタックと地上仕様のJ型のザクⅡが攻め立てている。
宇宙で療養中のシャアと彼のザクの姿がこの場にないのは、ホワイトベースにとっては幸いであったが、その分、ガルマの戦意は高く、その戦意は部下にも伝わっていて、初めて地球での戦闘を経験するホワイトベース側を焦燥させるには十分だ。
「このお!」
アムロはガンダムを大きく跳躍させて、ホワイトベースに仕掛けようとしていたドップを一機、ビームサーベルで袈裟切りにして撃墜する。現在、実用されている他のMSで果たして同じ芸当が出来たかどうか。
ガンダムの性能とアムロの技量が合わさっての非常識な一撃だ。マゼラアタックの175mm砲とドップのミサイル、更にはザクのマシンガンとバズーカが次々と降り注ぐ中、ホワイトベース側は懸命に反撃を行っている。
「くそう、アーウィンとグレースが居ればなあ!」
必死にガンキャノンを操って、ビームライフルを撃ち続けるカイ・シデンは、ヘルメットの中で冷や汗を流しながらいなくなった二人を思い出し、ついつい愚痴を零す。
「居なくなった人達をあてにしても、なんにもなりゃしませんよぉ」
カイの耳に通信機越しに、怒鳴っているのと泣き言が半分ずつ混じった声を届けたのはガンタンクを操縦しているハヤト・コバヤシだ。アムロを含めて、カイもハヤトもついこの間まで民間人だった三人だ。
慣れない環境下で味方から孤立したまま戦闘に突入すれば、泣き言の一つだって言いたくもなる。
ハヤトと一緒にガンタンクを操縦している正規軍人のリュウ・ホセイも、ホワイトベースで拙いなりに必死に指揮を執っているブライトも、表に出さないだけで内心は似たようなものだろう。
それでも強力なビーム兵器とホワイトベースの火砲は、周囲のジオンの部隊を着実に減らしている。流石に友人のリベンジと功を求めるガルマも、退くべきかと思案し始めた頃に、趨勢を決定付けるイレギュラーは侵入してきた。
一機の高速シャトルが両軍の戦闘区域に突入してきたのである。三連装ビーム砲一門、二連装レーザー砲二門で武装したシャトルは、戦闘区域の頭上に差し掛かるとハッチを開いて、そこから二機の人型機動兵器を投下する。
シャトルにはプルート財閥傘下のバベッジ・エジソン研究所のロゴが記されており、当然、投下されたのは地上仕様のアクシオ二機だった。
サンドカラーの塗装が施されたアクシオの一機には、黒に近い紫色の髪と赤い瞳を持った青年レナンジェス・スターロード――通称ジェスが搭乗している。
「おおおお! これが、俺の必殺技! 究極、アクシオキック!!」
空中で機体各所のバーニアを噴いて体勢を整えたアクシオは、あろうことかザクの一機へとめがけて右の飛び蹴りを敢行してのけた。
シャアの情報にあった民間企業の開発した新型MSの登場に、ザクのパイロットは反応が遅れる。ザクにヒートホークが装備されている事から、ジオンでも対MS戦闘が想定されていないわけではない。
しかし、空中から降下中のMSがこちらに飛び蹴りを仕掛けてくるなど、想定外に過ぎる!
「う、うぉおおお!?」
ザクのパイロットは驚きの叫びをあげなら、モニターを埋め尽くすアクシオの足を避けようと愛機を動かしたが、回避は間に合わずに首の付け根にアクシオの足が深々と突き刺さり、そのまま大きく仰向けに吹き飛ばす。
反動でアクシオの関節に重大な負荷が襲い掛かるが、格闘戦を想定して特別頑丈に作られた仕様の機体は、戦闘続行に支障はない。
「まずは一機撃墜!」
仰向けに大の字に倒れたザクからパイロットが這う這うの体で脱出するのを見届けて、ジェスは残るザクやマゼラアタックに機体を向けなおす。
右手にマシンガン、左手にシールド、背中のウェポンラックにはロケットランチャーとロングスピア、そして左右の腰部にはダガーという取り合わせだ。
ガンダムに続く新型MSの出現にガルマ配下の部隊は混乱に陥り、そこにもう一機のアクシオが踊り込む。
パイロットはジェスの恋人であるミーナ・ライクリング。緑色の髪を左右で細く編み込み纏めた少女は、愛機の両手に持たせたショットガンを空中で連射し、射程に入ったドップを一機、また一機と撃ち落とす。
「私の推理によれば、これは親の七光りと呼ばれるのを嫌うガルマ・ザビが、士官学校時代に次席だったシャア・アズナブルの敵討ちと、地球連邦の新型MS撃墜という戦果を求めた威力偵察ね!」
空中で散弾の雨を降らし終えたミーナはショットガンを腰の左右に懸架して、背中のバックパック兼ウェポンラックから、グレネードランチャーとハルバードを引き抜く。
「この人達、アーウィンさんとグレースさんの同僚!?」
思わぬ増援にアムロが安堵とわずかな警戒心を抱く中、ジェスがガンダムへと通信を繋げる。
「君がアムロ君か。アーウィンとグレースから聞いているよ。アーウィンも、あいつなりに心配していたよ。俺はレナンジェス・スターロードだ。これから俺達が北米大陸を抜けるまで、ホワイトベースを援護する」
ジェスはそう告げて、いかにも熱血漢らしい笑みをアムロへと向けるのだった。
*
ホワイトベースに地上仕様のアクシオ二機とその輸送機、更に食料と医薬品、弾薬といった援助物資が無事に届いた報告と既に数度に渡って行われたガルマ・ザビとの戦闘の詳報を確認し、ヘイデスは深々と執務室の椅子に背を預けた。
ホワイトベースが大気圏に突入するタイミングでシャアが一時的にとはいえ戦線を離脱、というのは彼にとっても予想外であった。
その結果として既にホワイトベースは、ジャブローからの補給を受け、ガルマ自らが戦闘空母ガウに乗って行った攻撃を潜り抜けている。
ただプルート財閥の介入によって、パオロがルナツー到着後も生存して一命を取り留めたように、ホワイトベースに退けられたガルマもまた生存している。
ホワイトベースを取り逃した失態と損失した戦力の多さに意気消沈しているのは間違いないが、機動戦士ガンダムの原作から外れた結果になったのもまた疑いようのない事実。
(ギレンの野望シリーズなら、ガルマが生き残る展開もある。そういうifが売りの一つである作品だからな。スパロボにだってそういう一面はあるが、ガルマが生き残る? うーむ、彼の生存が今後どう関わってくるのか。
デギン公王がレビル将軍に和平を申し出なくなるか、それともガルマが新生ジオンを立ち上げるのか。ガルマが生存したとはいえ、ドズルならランバ・ラルを差し向けるだろう。ジェスとミーナにはこのまま北米大陸を抜けるまで同道させるとして、うーん)
ヘイデスとしては第四次スーパーロボット大戦とスーパーロボット大戦Fとその完結編の八人の中から選ぶ主人公だった、ジェス、ミーナ、アーウィン、グレースの四名が存在していたのも、運よく入社してくれたのも嬉しい誤算だった。
だが、彼らが四人も居るという事は同時に彼らがこのスパロボ時空の主人公ではない証明かもしれない、とヘイデスは考えている。
少なくとも謎のエネルギーか新しいエネルギーを動力源としたロボットに乗った誰か、がこのスパロボ時空の主人公であるはずだ。
あとは謎の組織が作った人造人間だとか、母星を失った異星人だとか、並行世界から転移してきた地球人だとか……あれ、パターン多くない? とヘイデスは途中で考えるのをやめた。タイトルを重ねてきた弊害であった。
ともかくとして、機動兵器に乗る予定のない自分がそのポジションでないのを、ヘイデスは日夜、某プロデューサーと某企業に祈っている。
生憎と彼は組織の長でありながら機動兵器に乗って、のこのこと前線に出てゆくようなタイプではないのだから。
(あるいはこれからも俺の行動次第で、ファーストガンダムの重要キャラの生死が変わるかも……なんて、調子に乗り過ぎか)
ふう、と最近数の増してきた溜息を吐いて、ヘイデスは立ち上がって外出の準備を進める。彼が手の届く範囲で最も警戒している、コロニー落としを阻止したナニカについて、今度こそ夢ではなく現実で手掛かりを掴んだのだ。
マクロス、セプタギン、あるいはパスダー、ひょっとしたらフューラーザタリオンかジェネラルガンダムかも、と日に日に彼は思いつく可能性の数々に悩まされていた。
(コロニー自体は木っ端みじんになって、大気圏での断熱圧縮でほぼ消失して地球への落下物はなかった。ではコロニーを破壊したナニカは? 地球に落下して眠っているのならそれでいい。モノによっては全然よくないが、それでも動かずにいる分まだマシだ。
問題はどこにも落ちていない場合だ。コロニーを破壊し、大気圏を突入してなお即座に行動が可能な頑健さ、そして移動可能な存在となる。
地球の誰にも気付かれないところに潜伏されて、こちらが気付いた時にはもう手遅れって状況に持ち込まれていたら最悪だ)
一つの例として、スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーション(OG)シリーズのメテオ3ことセプタギンを挙げよう。
あれがもし地球人類の軍事技術向上と収穫を目的とした種子としてではなく、最初から人類抹殺を目的としていたなら、パーソナルトルーパーもアーマードモジュールもない上に、ガンエデンや超機人も冬眠状態であったはずだから呆気なく全滅していただろう。
あるいはデビルガンダムやELSのように、浸食・同化するタイプの存在であったら、ある日、気付いたら地球丸ごと取り込まれていた、なんてことにもなりかねない。
なぜならここは画面の向こうの娯楽の世界ではなく、お腹もすくし、眠りたくもなるし、胃も確かに痛む現実の世界なのだ。
プレイヤー部隊が活躍する余地もなく滅びる可能性が、十分にあり得るのだと、不幸にもヘイデスは自覚していた。
「前向きになれる要素が欲しい……」
マジンガーZの大敵であるDr.ヘルは既に行方を晦ませており、バードス島の捜索を方々の人脈も含めて行っているが成果はまだ出ていない。
光子力研究所や早乙女研究所、南原コネクションを始めとしたスーパーロボット関係の施設は、不審がられるくらい熱烈に支援をしている。
光子力、ゲッター線といった未知の新エネルギーを広く知ってもらうために、という名目でパリンと割れる光子力せんべいやゲッター線饅頭、超電磁キャンディーといったコラボ商品を販売するくらいの関係は築けている。
(博士やその子供達の年齢からして、やはり本格的に地下勢力や宇宙からの侵略者と戦うのは、七、八年後、Zガンダムの時代になってからか。こうなるとこの世界はαシリーズを下敷きにした世界なのかもしれない。
Fだったら、Fシリーズだったらガンバスターが作れる可能性だって、一億分の一くらいはあったかもしれないのに! なによりあの世界は【トップをねらえ!】が参戦するのに、宇宙怪獣は出てこない! なんて素晴らしい!!)
ヘイデスの知る限り、地球の科学力で建造されたロボットとしては最強の一角であるガンバスターが、その敵である宇宙怪獣と戦う必要なく暴れられるのである。
ゲームとしての制約がない状況で運用出来たら、たとえアクシズが落とされようが、『アクシズ? ガンバスターなら簡単に粉砕できますが?』と余裕綽々の態度で居られる。
ただし……
(あ、Fシリーズだとイデオンが参戦するのか。宇宙のリセットと天秤にかけたら流石にガンバスターとはいえ……ぬあ~~。頼む、コロニーを壊しながら落ちてきた誰かさんかナニカ! 君は俺の味方でいてくれ!!)
そして例によってヘイデスは、ナニカを回収したヘパイストスラボを訪れるのだった。
プルート財閥の機動兵器開発の要であるこのラボを訪れる以上、回収されたナニカもまた機動兵器に類する存在であるのは明白。
正直、ラボの中を進むヘイデスの心臓は今にも破裂してしまいそうだった。スパロボプレイヤーだった部分は今にもこの場で吐き出してしまいそうだが、若き才人としてのヘイデスはいつもの温和で社交的な態度を崩さない。
「地球連邦の海軍もまだまだ健在なのに、よく見つけられたねえ。頭の下がる思いだ」
今日の所長はメリハリの利いた肢体をベトナムの民族衣装アオザイ風の衣装で隠し、その上に白衣を重ね、プラチナブロンドをストレートに流している。ヘイデスは思わず拍手したくなるほど美しいと感激した。所長は、ヘイデスの傍らを歩きながら会話に応じる。
「もしコロニーが落ちていたら沿岸沿いの海軍の艦艇は軒並み全滅していたでしょうけれど、それを免れましたからね。
ジオン軍はやけに水中用のMSを投入して、シーレーンの確保に躍起になっておりますから、海軍はそちらの相手に忙しくて民間のサルベージ会社になど関わっていられないのでしょう」
「コロニーを壊した何かを探しているのは連邦もだと思うけれど、コロニーと一緒に壊れていた可能性もあるし、今はジオンの脅威をどうにかするのが優先だからね。上手く隙を突けたのかな。彼らにも臨時ボーナスを弾まなきゃ」
「最近、あちこちの部署にボーナスを弾んでおいでで。功あれば褒賞あるべしとは思いますけれど、財閥の財政は大丈夫なのですか?」
「はははは、いざとなれば僕の資産を切り崩してでもボーナスは確保するとも」
「ふうん? 破産しない程度になさってくださいな。私には貴方が必要なのですから」
「うん。分かっているとも」
「……本当に分かっておいでかしら。それにしても以前に総帥がおっしゃった通り、ジオンはなんでもかんでもMSにやらせようとしますわね。わざわざ水中用のMSをあんな何種類も作る必要があるのかしら?」
一年戦争期の主要なジオンの水中MSとなるとマリンザク(ザク・マリンタイプ?)アッガイ、ゴッグ、ズゴック、終盤にハイゴッグとズゴックEといったところか。現在投入されているのは、前者の四機種だ。ヘイデスとしてはハイゴッグが一推しである。
「地球の七割は海だし、過去の戦争もシーレーンの確保が重要だったから、注力するのは分からないでもないけれど。所長の見解は違うのかな?」
「素人の考えを聞いてもつまらないと思いますけれど、地球連邦の大きな軍事拠点はジャブローにベルファスト、ペキン。北米は地続きですしユーラシア大陸は、ベルファストとペキンから反攻を開始すればいいでしょう。
アフリカ大陸だって、無理に海路を使わなくても、欧州と中東方面をどうにかしてから攻めればいいでしょう。無理に太平洋を横断する必要、あります?」
「う~ん、返答に困るなあ」
「確かにシーレーンの確保は重要ですけれど、地球連邦としてはジオンが思う程に力を入れていないように思うのです。“海”という地球の青を代表する存在を前にして、ジオンは迷走しているというか持て余している、という印象が拭えません」
一年戦争後の宇宙世紀シリーズを見ても、確かに各タイトルの敵対勢力が水中用のMSやMAを投入はしても、地球連邦や視聴者側の勢力で水中用の機動兵器の投入例はヘイデスの記憶にはほとんどない。
ヘイデスの知識が浅い可能性はもちろんあるが、それでも思いつくのは∀ガンダムのカプルくらいだ。ベアッガイやモモカプルはプラモデルだし。アクアジムと水中型ガンダムくらいのものか。
後は漫画作品でアトラスガンダムなどもあるが、ヘイデスはガンダムの漫画における派生作品のあまりの多さに、白旗を挙げた口である。
「地球連邦がMSの勝手が分からなくて、緒戦で大敗を重ねたのと同じようなものか」
「膨大な国力とリソースのある地球連邦なら挽回も出来ますけれど、地球連邦の三十分の一の国力しかないとされるジオンで、リソースの割り振りを間違えるのは銃殺刑ものでは?」
(ジオンの水中用MSを推進したのは【特定の誰か】って設定されていたか? ギレンの野望のどのタイトルか忘れたけど、シーレーンの重要性を訴えてハワイの制圧を提案してくるのはキシリアだったような……。
マッドアングラー隊の設立も提案してくるしな。しかし、所長の言う通りなら銃殺刑に処されるのはキシリアになるのかね。Fの完結編でギレンを暗殺するイベントを起こすと、ガトーがノイエ・ジールと一緒に仲間になる隠しイベントがあったっけ。あったよな?)
ヘイデス自身の記憶もだいぶ薄れていて、曖昧になっているところが多い。ノイエ・ジールのデザインは大変好みだったので、自軍ユニットになったのが嬉しかったのは覚えているのだが、確か限界反応が低くて運用に四苦八苦したものだ。
(なんか、ノイエ・ジールにミノフスキークラフトをつけて、アムロを乗せていたような覚えがあるな)
あくまで画面の向こうの世界の話として楽しめていた頃を思い出して、ヘイデスはしみじみと懐かしむ。そうしている間に所長に案内されたのは、ラボの中でも新型MSの開発区画と並ぶ最重要セキュリティの施された地下格納庫だ。
今はアクシオのバージョンアップとサブフライトシステム、四足MSの開発も行われているが、その忙しい合間を縫って所長に回収したものの分析を依頼している。所長が必要になるという事は、つまり回収物は機動兵器に類する何かなのだ。
「これは随分とボロボロで……」
格納庫に案内されたヘイデスは、トレーラーの上で仰向けに拘束されている機動兵器を見上げた。四肢が付け根近くから失われ、所々に金色の部分のある白い装甲は漏れなく罅が走っている。
頭部には赤い一本角が生え、光を失ったツインアイとフェイスマスクはガンダムタイプに見えなくもない。リアル路線のロボットならそう珍しくはないか、とヘイデスは心の中で零す。
「コロニー粉砕時に地球への落下が確認できた落下物の中で、回収できたものの中で、もっとも目ぼしいものがこれだったそうです。回収の報告は私よりも先に総帥のところへ来ているでしょうから、ご存じでしたでしょ?」
「実際に目にするとまた違う感想が出てくるものだよ」
(うーむ、鬼械神のアイオーンやデモンベインではない。手足が揃っていたら三十メートル前後か?
ひょっとしたらひょっとしてチェインバーか、原作の方のYF-21かSEEDDESTINYの外伝からストライクノワールか、スターゲイザーもあり得るとも思ったが、明らかに違う。でもなんだろう、見覚えがあるようなないような……)
うんうん、とヘイデスが唸りながらソレの周囲を歩き回る。ヘイデスからすれば今後のこの世界の命運を占いかねない代物だ。いくらみても見飽きるという事はない。
そんなヘイデスの様子に所長は何を思っているのか、ヘイデスの少し後ろをついて回りながら分析した範囲で分かったことを口にし始める。
「装甲の材質、動力、用いられている技術、はっきり申し上げてなにもかもが未知です」
「未知」
「未知です。オーバーテクノロジー、いえ、エクストラテクノロジー、アウターテクノロジーと呼ぶべき産物です。今の地球圏では逆立ちしたって作れるものではありません。信じがたい事ですが、これは宇宙からやってきた漂流者ですわ」
「……うん?漂流“者”?漂流物じゃなくて?」
思わず足を止めて所長を振り返るヘイデスに、所長は自分の常識を打ち壊した存在へ目を向けながらこう言った。
「スキャンしたところ、内部に生命反応が出来上がりつつあります」
「うん? なんだか言い回しがおかしくはないかな。それではまるでコレの中で生命が作り出されている最中みたいだよ」
「その通りとしか言いようのない反応なのです。この機体そのものが人間を培養する道具として機能しているようですわ。人間かどうかは分かりませんけれど」
「人間を培養……」
あれか、劇場版のガンダム00冒頭でティエリアが、ポッドの中で培養されていたようなイメージだろうかとヘイデスが考えたところで、彼の脳裏に閃くものがあった。【機体がパイロットを作り出しているのではないか】、と。
(機体がパイロットを作り出すって……シュロウガ? シュロウガ!? じゃあ、アサキムか、あのアサキム・ドーウィン?
いやいやいやいや、これはどうみてもシュロウガじゃない…………んん? なんかヘリオースに、アドヴェントの乗っていたヘリオースに、似ていなくもない?)
ヘイデスは全身にどっと冷たい汗を噴きだした。Zシリーズのラスボスを務めたアドヴェントも機動兵器シュロウガを駆ったアサキムも、どちらともトンデモ系に類される厄介なキャラクターだ。
当然その機体もまた単純に極めて高性能かつ厄介な特性を持つ。目の前のズタボロのこれがシュロウガであれ、ヘリオースであれ、もし完全復活すれば良くも悪くも面倒なことになるに決まっている。
(アドヴェントは因果地平の彼方に自ら去ったはず。アサキムだってシュロウガと共に新たな地平へ去った。
ならこれは両者ではないはずだ。まさか、その新たな地平でアドヴェントとアサキムが争った結果として、これが落ちてきたとかそういう設定? 設定なの、どうなの!?)
ヘイデスは脳裏にZシリーズの敵を思い浮かべていた。ゲッター線に寄生するインベーダー、原作以上に強力かつ数を増した宇宙怪獣に加えて地球よりも巨大なエグゼリオ変動重力源、そして宇宙そのものとも称されたアンチスパイラル……
(…………………………うん、来るなよ、絶対に来るなよ!! 絶対にだぞ!?)
*
●レナンジェス・スターロード(スーパー系主人公)が入社しました。
●ミーナ・ライクリング(スーパー系主人公)が入社しました。
●?????を入手しました。
●?????が復活中です。
□光子力せんべい
使用するとSPが10回復。
□ゲッター線饅頭
使用すると一ターンの間、パイロットの地形適応が空・海・陸の内一つがランダムで『S』になる。
□超電磁キャンディー
使用すると使用者を含む上下左右五マスのパイロットの気力を+5。
日刊ランキングを見た時、34位で、おお、すごいと思ったのです。それで今見たら2位、2位! 一話の時点だとそうでもなかったのに二話を投稿したら急に変わっていて、感想の多さも相まって怖いくらいです。でもありがとうございます。やる気がもりもり湧いてきました。
なお一年戦争編は次辺りでさくっと終わらせて、グリプス戦役までをちょろちょろっと済ませます。本番はZガンダム時代、グリプス戦役の頃を想定しています。
主人公は色々と危惧していますが、まだ難易度イージーなのでそこまでひどいことにはなりません。
最後に出てきた謎の機体と再生中の謎の人物は、某シリーズのキャラクターをベースにしてたキャラクターであり、ヘイデスとは違って完全な本作オリジナルというわけではありません。捏造ではあります。そしてZシリーズと関係のある機体と人物です。
追記
×南原コンツェルン → 〇南原コネクション