【2024/2/29非公開予定】「宇宙世紀……じゃない? スパロボだ、コレ!?」   作:永島ひろあき

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第二次があったとして、主人公に彼女を選んだとして、乗り換えイベントがあったとして、そんな感じでごく一部を抜粋しました。


おまけ リアル系女性主人公

 『太陽系大戦』終結後の新代歴189年。

 デューク・フリードの治めるフリード星を盟主とする『銀河共栄連盟(銀栄連)』に参加し、軍事面における事実上の要として、天の川銀河に広くその名を知られた地球。

 現在は地球連邦政府に代わる『太陽系連邦政府(太陽連)』が統治機構として存在し、大戦によって負った傷を癒すべく奔走する一方で、宇宙や異世界からの悪意に備えて軍事力の再整備にも時を追われていた。

 

 銀栄連は参加する惑星国家の数こそ多いものの、その多くは過酷な支配を受けて疲弊した星々だ。母星を守り抜いた太陽連からはそういった星々へ、可能な限りの人道的支援、並びに軍事力の提供が成されている。

 もし地球をはじめ太陽系に新たな敵が姿を見せた時、銀栄連からの援軍を期待するのはもう数年は見込めないのが悲しい現状だった。

 

 戦火に焼かれた大地と人々への救援、破壊された都市の再興、他の惑星への開拓計画の発足と必要となる移民船団の編成、太陽系内部の各惑星ならびに主要なスペースコロニー間へのワープゲートの設置。

 大戦中に大量に開発された機動兵器の在庫確認と部隊の再編成、銀栄連への各種物資の供出並びにお友達価格での輸出計画、新たな敵に備えた新型兵器の開発、大量に鹵獲した敵勢力の兵器の解析その他……

 

 これまで地球人同士で行えばよかった各種の官民のアクションが、今となっては銀河規模に広がったことで太陽系はてんやわんやだ。

 そんな中、太陽連でもっとも忙しいと誰もが認めるのが、先の大戦で縁の下の力持ちとして地球を支えた元スパロボプレイヤー、ヘイデス・プルート太陽連初代大統領である。

 

 いろいろな人々に嵌められて、気付けば大統領になるしかなかったヘイデスだが、彼が呆気に取られていた時間は短かった。というよりは許されなかったと言うべきか……。

 スパロボプレイヤーとしての知識と経験を持つ彼は、場合によってはまだまだ異星人、宇宙生物、異世界人、異次元人などなどからの侵略的行為が続く可能性を否定できなかった。

 

 この宇宙にこれ以上、敵対勢力がいなくても、並行世界、異世界、過去や未来からやってくる可能性を捨てきれないのだから、ここは地獄かな?

 太陽系大戦中のアレコレで耐性の出来ていたヘイデスは、大統領就任の件を数分の躊躇の後に受諾し、一代でアナハイムやロームフェラ財団に並ぶ財閥を築き上げた辣腕を発揮し、太陽系の復興並びに自衛戦力の拡充に邁進することとなる。

 

 そしてさらに一年後の新代歴190年。宇宙世紀に換算すればU.C.0090となる年に、銀河は再び争乱の嵐に飲み込まれた。

 地底世界ラ・ギアスから侵攻、星間共和連合ゾヴォークの一部過激派による地球圏への侵入と武力行使、複数の異星人勢力からの侵略とヘイデスが、いや、地球人類が想定していた最悪の予想が的中してしまったのだ。

 

 太陽系への侵入を目論む敵対勢力にとって、最初の壁になるのは太陽系外に配備された無人兵器による防衛線だ。

 戦後、バルマー・サイデリアル連合帝国から譲渡に近い形で手に入れた無数の無人兵器と、製造プラントの数々をフル稼働して手に入れたソレらは現在、太陽系連合と友好勢力の頼もしい刃となっている。

 

 特に敵対勢力にとって厄介なのがズフィルード・エヴェッド、エル・ミレニウム、ゼル・ビレニウム、更にアンチスパイラルの母艦群だ。バサ帝国というよりはユーゼス経由で手に入れた兵器群だが、その戦闘能力たるや太陽連にしてもオーバーテクノロジ―気味だ。

 惑星並みのサイズを誇るアシュタンガ級を総旗艦とし、更にフーレ級、アドラティオ級から成る艦隊から、銀河基準で見てもトップクラスの機動兵器と、デイモーンやメギロートといった数で攻める機体の組み合わせは、敵対勢力の骸を星の数ほど生み出していた。

 

 とはいえ太陽系への侵入を完全に遮断するにはどうしても数が足りず、またワープによって太陽系内に侵入されるケースも存在する。

 今回は、そうして太陽系内、場合によっては各惑星や地球にも侵入してきた命知らずの侵入者達を相手に抗う正義のスーパーロボット軍団の一幕のお話である。

 

 太陽系冥王星近海にて独立遊撃部隊『ノイエDC』とガルラ大帝国、暗黒ホラー軍団、ザール星間帝国、更にゾヴォークから成る一時的な軍事同盟との死闘が繰り広げられていた。

 この時、ノイエDCはラ・ギアスへの殴り込み勢、太陽系外に戦力を集めている超文明ガーディムならびにガトランティス帝国への対応部隊、そして太陽系内に留まる三つに部隊を分けていた。

 

 その内、太陽系内に留まる部隊を狙って、敵対勢力が狙い撃ちにしたのだ。

 パンドラボックス内部の異世界技術から建造されたマクロスや大空魔竜、クロガネなどの艦隊に、あまりにも手強すぎるノイエDCを倒す為、恥辱を忍んで手を結んだ諸勢力の兵器が雲霞の如く群がっている。

 ガイキング、ダルタニアス、ゴライオンといった新たなスーパーロボットが奮戦し、シーマのターンX、アムロのRνガンダム、クワトロのガイア・ギアαに率いられたMS部隊が新人達をカバーしながら敵機を返り討ちにする光景が延々と続いている。

 

 ガルラ大帝国のデスブラック獣人にメカブラック獣人、暗黒ホラー軍団の暗黒怪獣、ザール星間帝国のベムボーグにツインボーグ、そしてゾヴォークの機動兵器の総数は一千を超えている。

 あくまでお互いを攻撃しない程度の薄い同盟関係だが、それだけでもこれまで顔を突き合わせれば攻撃し合っていた状況よりもはるかにマシというもので、ノイエDCに対して徐々にその圧力を高めている。

 

 敵部隊がマクロスキャノンによる一掃を警戒し、母艦への攻撃を躊躇って散開しているのも相まって、ノイエDC側はよく奮闘していた。

 特に前大戦で真化融合を経験して、存在のステージを半歩分進めたアムロやクワトロ、シーマといった歴戦の戦士達の活躍は目覚ましい。

 既に百以上の敵機を撃墜したノイエDCの規格外の戦力に、ゾヴォークから派遣された指揮官のヴィガジは、怪獣めいたデザインの愛機ガルガウのコックピットで、剃り上げた頭部に青い血管を浮かべながら怒りを言葉に変える。

 

「地球人め、野蛮な猿め! 貴様らを駆逐する為にこんな蛮族共の手を借りなければならんとは、屈辱の極みだ!」

 

 銀河の列強に数えられるゾヴォークの一員たるヴィガジからすれば、ガルラもホラーもザールも、全てが唾棄すべき野蛮にして残虐極まりない連中だ。

 そんな連中と手を組まなければ、銀河の辺境にある小さな星一つ制圧できない事実は口にした通り恥辱の極みに他ならない。

 

「本末転倒も良い所だが、地球人の後はこいつらを俺の手で駆除してくれる」

 

 鼻息の荒いヴィガジだが、他の勢力の者達にしても考えていることは同じだ。目障りな地球人が居る内は仕方なく手を組むが、それが済んだ後はお互いの野心がぶつかり合う者同士。一匹残らず皆殺しにするか、奴隷にしてやろうと考えている。

 一応、ゾヴォークは植民地化辺りで目的が留まるので、このメンツの中では最も穏健派ではあるが、地球人側からすれば倒すべき敵であるのに変わりはない。

 

 そしてまたなぜこの冥王星近海で戦闘が勃発したのか? 答えはこの宙域にユーゼス印の兵器製造プラントが隠匿され、現在は太陽連の管理下で大量の兵器を供給する重要拠点となっていたからだ。

 また、現在はノイエDCのあるメンバーの為の新型機が開発されており、ノイエDC内部でも重要視されている場所だった。

 

 異星人側がこのプラントの破壊もしくは奪取を目論んでいる、と偽情報を流してノイエDCを誘い込むのに成功している。

 この手の罠は分かっていても自ら嵌まった上で突破するのがこれまでのDCだが、今回も苦戦しつつ、確かに敵部隊を倒している。

 正直、ヴィガジもひょっとしてこのまま押し切られるのではないか、と滲むような焦燥感を抱いていた。

 

「……重力震だと、この反応は!」

 

 ガルガウの捉えた反応はゾヴォークで一般的な転移反応だった。

 戦場の隙間を狙うにようにして、ゾヴォークで運用されている752.8mを誇る巨大強襲空母ゼラニオの艦隊とライグ=ゲイオス、ゲイオス=グルードを始めとしたゾヴォーク系の起動兵器が百機以上出現する。

 ヴィガジの目を引いたのはその中にゾヴォークで開発が終わったばかりの新型機、バラン=シュナイルの機影があったこと、より正確にはそのパイロットが戦場に姿を見せた事実。

 

「まさか、ゼゼーナン卿!?」

 

 同じゾヴォークでもヴィガジとは異なる派閥で、地球への武力侵攻を主導するタカ派のトップ、それがテイクニェット=ゼゼーナンであり、バラン=シュナイルのパイロットだ。

 

『ふん、大きな口を利いた割にはまだサル共を始末できていないとは。存外、ガルラやザール共もだらしのない。所詮は品性の欠片もない蛮族どもか』

 

 ゼゼーナンはあくまで一時的な同盟者に対する罵倒だけを口にしたが、通信画面越しにヴィガジを見る瞳には、同じ嘲りが含まれているのがはっきりと分かる。

 別派閥とはいえゼゼーナンはヴィガジよりも役職が上の人物だ。彼と対等な態度を取れるのは、ヴィガジの直接の上司であるウェンドロだけ。

 ヴィガジは頭に新たな血管を浮かべながら、ゼゼーナンにおもねる言葉を絞り出した。悲しいかな、彼は中間管理職、社会の歯車であった。

 

「ご足労いただき、誠に申し訳ございません」

 

『このバラン=シュナイルの力があれば、地球人如きの浅知恵など握り潰すのは容易い。お前達はそのままノイエDCの足止めをしていろ。多少惜しくはあるが、奴らのプラントはこのまま破壊する!』

 

 一部の護衛を残し、ゼゼーナンの引き連れてきた部隊がノイエDCとの戦闘に向かう中、バラン=シュナイルは小惑星に艤装されていた兵器プラントをターゲットに捉える。

 バラン=シュナイルは地球の誇るスーパーロボットを研究し、その撃破をコンセプトにして開発された超高性能機だ。現在、ゾヴォークで運用されている機動兵器としては間違いなく最強を誇る。

 

「バラン=シュナイルの力をもってすれば、宇宙から地球上の都市を焼き払う事とて出来る。宇宙空間でならば機体をフルパワーで運用するのに支障もない。

 愚かな地球人共は、大人しく私に従わなかった過去を悔やむがいい。貴様らサル如きにあの世があったらの話だがな、フハハハハハ!」

 

 ゼゼーナンにとって、戦闘に特化した地球人の兵器プラントは喉から手が出るほど欲しい代物だが、ノイエDCを片付けるのが、地球人類全体を屈服させる近道だと判断し、バラン=シュナイルの力に酔いしれながらトリガーを引こうとした。

 その指を止めたのは兵器プラントの近くで新たな重力震が発生し、黒紫色の境界領域を作り出す光景をセンサーが捉えたからだった。

 戦闘の始まる前から強大な重圧を感じていたアムロやクワトロ等、感受性の豊かな者達は新たに姿を見せたソレが、重圧の主なのだと直感で理解する。

 

 ソレはさながら漆黒の堕天使を思わせた。鋭い刃を連ねたような一対の翼から、緑色のエネルギーの羽を噴き出し、40m前後の機体は四肢から頭部に至るまで鋭角の直線で構成されていて、触れるだけで血を噴く刃のよう。

 両肩の側面に長大な細身の砲身が接続されていて、その力が解き放たれたなら、黙示録の到来の如く世界に終焉を呼び起こすような力強さと不気味さとがあった。

 

 天上の主も地獄の魔王も等しく葬るだろう堕天使は、明確な意思をもって機体の双眸にバラン=シュナイルの巨影を映す。ただカメラアイを向けられただけの筈なのに、ゼゼーナンは自分の心臓が凍り付く錯覚を覚えた。

 なにか自分が途方もない間違いを犯し、しかもそれは取り返しがつかないのだとなぜかそう思えてならなかった。

 

「廻れ、ティプラー・シリンダー。ラウドスフィアによる事象干渉開始。次元交差点を観測。トロニウムエンジン、並行励起……」

 

 漆黒の堕天使のコックピットでパイロットたる彼女──ヴィレッタ・『プリスケン』は自ら手掛けた究極級の機動兵器アストラナガン・パワードをぶっつけ本番でフル稼働させる。

 前大戦で回収されたアストラナガン・アフをベースに、この宇宙に転移してきたヴィレッタのR-GUNパワードを同化して損傷部位を補い、更にシュマシとヘマーら双子の生成したラウドスフィア──副作用のないリミッター付きのスフィア──を積み込んでいる。

 更にマジンセルやゲッターセルといったこの世界独自の技術各種もどん欲に盛り込み、イングラムのアストラナガンとは似て非なる機体として、このアストラナガン・パワードは完成している。

 

「なん、なんだあの機体は!? 信じられん、エネルギーを計測しきれないだとっ」

 

 ゼゼーナンが驚愕に震える中で、アストラナガン・パワードの両肩にある砲身が接続を解除し、機体の正面で合体。更に巨大な砲身を形作る。その間に機体の胸部装甲が左右に展開し、無数の色が激しく輝く内部が露となる。

 オリジナルアストラナガン最大の攻撃インフィニティ・シリンダーは、並行宇宙に干渉する特殊機関ティプラー・シリンダーを応用し、対象を超光速の時間逆行に陥れることで存在そのものを虚無へと消し去る究極の兵器の一つである。

 

 これに対してアストラナガン・パワードの有する最大最強の攻撃は、ティプラー・シリンダーの応用によって並行世界のトロニウムエンジンに接続し、本体のトロニウムエンジンと同期後、並行励起して全ての膨大なエネルギーを集束させて行われる。

 無限に存在するとも言われる並行世界から、膨大なトロニウムのエネルギーを集約し、上限の存在しないエネルギーによる絶対的破壊を齎す──

 

「メタルジェノサイダーモード起動! アストラナガン・パワード、フルパワー! 因果地平の彼方だろうと撃ち抜く! ITB(インフィニティトロニウムバスター)キャノン、デッド・エンド・シュート!!」

 

 ヴィレッタのヘルメットにターゲットのロックオンマーカーが反射し、荒ぶる愛機の手綱を華麗に操って、無数の世界から集められたトロニウムエンジンのエネルギーがついに解放された。

 光り輝く黄金のエネルギーがゼゼーナンの連れてきた援軍を目掛けて発射され、直撃どころかその余波を浴びただけでライグ=ゲイオスは疎かゼラニオさえも瞬時に破壊され、次々と爆発が起きて行く。

 

 バラン=シュナイルにも被害は及び、直撃コースから大きく外れていたというのに、ゾヴォークの技術を結集して作られた堅牢な機体は見る間に装甲を失って、中破以上の損傷を負ってゆく。

 さらに伸び行くITBキャノンの射線上に突如として、ぽっかりと黒い穴が開いた。アストラナガン・パワードの開いたワームホールだ。

 

 調整不足の現段階でも、天の川銀河の端から端までを貫き、その余波をもって破滅を齎しかねない天文学的な破壊力を誇る。

 ITBキャノンの射線軸上にこうしてワームホールを設置し、並行世界の熱的死を迎えた宇宙などエネルギーを放逐しても問題ないどこかへと逃がすことで、余計な犠牲を生まない安全措置を取っているわけだ。

 ITBキャノン発射後、砲身が分離してハイ・ツイン・ランチャーとして機体の両肩に接続される。それ以上、ヴィレッタは機体を動かさなかったが、ただの一撃で戦場を支配することには成功していた。

 

「調整もろくにしないまま実戦に投入するのは避けたかったのだけれど、仕方ないわね。R-GUN、これからはアストラナガンとして共に戦ってもらうわ」

 

 イングラムのアストラナガンとは開発の経緯も、用いられている技術も異なるが、確かにこのアストラナガン・パワードもまた究極の人型機動兵器と評価されるに相応しい機体として、完成していた。

 戦場に突如として出現し、惑星どこか星系を、いや銀河を破壊しうる超エネルギーを叩き出した漆黒の堕天使に、異星勢力が時を忘れて凍り付く中、ヴィガジは少しだけ思考停止から復活する。

 

「なん、なんなの、だ、アレは。あんなもの、あんなもの、ウユダーロ級を百隻揃えたとしても話にならんではないか! ウユダーロ級はゾヴォークの武力の象徴だぞ。それが、それが玩具に見えるようなものを出されては……なんだ!?」

 

 呆然と言葉を続けるヴィガジの耳を、機体のロックオンアラートが強く叩く。ヴィガジだけではない。ノイエDC以外の敵機全てがアストラナガン・パワードにロックオンされていたのだ。

 アストラナガン・パワードの翼が大きく展開され、機体の周囲に局所的な重力異常が数えきれないほど生まれていた。オリジナルアストラナガンに搭載されていた重力散弾によるMAP兵器アトラクター・シャワーだ。

 

「ターゲット・マルチロック。超重獄の顎から逃れられるかしら?」

 

 一斉に発射された重力散弾は自由自在の軌道を描き、敵味方を識別しながら戦場で動きを緩めていた敵部隊へと容赦なく襲い掛かる。命を刈り取る死神の如く、あるいは死という運命の如く、黒々と。

 ガルガウも当然ターゲットとなり、チャフやフレア代わりにミサイルをバラまきながら、必死に重力散弾から背を向けて逃げまどう。

 

「ぐっ、なんということだ。地球には、手を出すべきではなかったという事なのか!? ゼゼーナン卿は、ええい、とっくに逃げ出しているではないか!」

 

 華々しくデビューを飾るはずだったバラン=シュナイルには不運だったが、アストラナガン・パワードの常軌を逸した力を目の当たりにしたゼゼーナンは、身もふたもなく脱兎の勢いで逃げ出していた。

 ヴィガジが思わずコンソールをぶっ叩いた直後、ガルガウに四方から重力散弾が食らいついて、ヴィガジは重力の底に飲まれる前になんとか脱出に成功し、九死に一生を得ることに成功するのだった。

 

 敵母艦や特に耐久力に優れた機体など、ごく一部のみが生き残った異星連合は、アトラクター・シャワーの第一波を凌ぐやすぐさま撤退を選択して、冥王星近海から跡形もなく姿を消す。

 亜光速戦闘にも対応しているアストラナガン・パワードのレーダーから、敵の識別信号が完全に消えているのを確認し、ヴィレッタはヘルメットを脱いでシートの背もたれに体を預ける。

 

 自ら主導し、太陽連とヘパイストスラボの所長の全面的な協力の果てに完成させたアストラナガン・パワードは、思った以上の力を発揮してくれた。

 運命の片割れであるイングラム・プリスケンと同じように、これでヴィレッタもまた自らに課せられた永遠の戦いに必要な力を得たのだが、とはいえぶっつけ本番というのは、ヴィレッタにしても心臓に悪い。

 

「……全て上手く行ったのは不幸中の幸いね。ティプラー・シリンダーが少し揺らいでいるけれど、許容範囲。DEC装甲とラウドスフィアの同期も問題なし。転移機能のチェックも出来たし、後は次元移動のテストと実戦でのデータ収集が必要か。

 でも、まずはこの世界の地球での戦いを終えてから。私の番人としての使命を果たすのは、それから。それくらいは、許されるわよね」

 

 この世界には居ないリュウセイ、ライディ―ス、アヤに尋ねるようなヴィレッタの言葉は、コックピットの中にだけ響いて、誰の耳にも届くことはなかった。

 スーパーヒーロー作戦の世界から、直接この世界に転移してきたヴィレッタ・プリスケンの戦いは、新たな愛機を得て次なるステージへと移ろうとしていた。

 

<終>




こちらではお久しぶりです。
作品タイトルにもあります通り2024/2/29中に本作を含め永島ひろあき名義で投稿している作品を、オリジナルの一作を除き全て非公開といたしますので、あらかじめご了承ください。

どなたか続きを書いてくださっても全然かまいませんので、はい。

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