【2024/2/29非公開予定】「宇宙世紀……じゃない? スパロボだ、コレ!?」 作:永島ひろあき
短めです。
◆DLCウルトラマンパックシリーズ・共通チュートリアル『初代ウルトラマン』
「僕達の寿命? うーん、もう成長は十分に遂げたから、あとは普通のペースになるから?」
とシュメシは双子の片割れに目を向けて、続きの言葉を委ねる。委ねられたヘマーは唇に立てた人差し指を当てて、んーと可愛らしく唸ってから答えた。
「大きな病気とか怪我をしなければ、七十年とか、八十年とか……。人並みの寿命じゃないかな?」
ユーゼスとの死闘の果て、どことも知れないウルトラマンの世界の一つに転移した後、具体的な帰還の時期が見込めず頭を悩ませていたヘイデスが、ハガネのラウンジで休憩している最中、ふと悲しげに呟いた問いかけの答えが、上のものであった。
赤ん坊からあっという間に大きくなったシュメシとヘマーがこのまま同じ速度で成長し続け、数年で寿命を迎えるのではという彼女らを知る者たち全員の苦悩は、実のところ、当の双子からするととっくに解決済みの問題だったのである。
何の問題もないと、喜ばしくはあるが予想外すぎる答えを返されて、ヘイデスはぽかんと口を開けて固まり、母たる所長はと言えばウーロン茶のチューブドリンクから口を離し、やれやれと肩を竦める。
「つまりあなた達に先立たれる心配はないというわけですね。もっとも重い懸念が解決されて、とりあえず喜んでおきましょう。もちろん今回の事件を迅速に解決するべきであるのに、変わりはありませんが重大なシコリが消えて、ええ、非常に良い気分です」
ニッコリとモナリザにも負けぬ笑みを浮かべる所長だったが、それを向けられる双子はなんだかお母さん怒ってない? と背筋を震わせるのだった。
格納庫のフェブルウスはこの時ばかりは、その場にいなくてよかったと安堵していた。生身を持たず機械仕掛けの肉体を持つこの子の方が、人間の機微に詳しいらしかった。
アステロイドベルトに転移し、部隊の状況把握を終えて急ぎの修理と補給、手当を進めるDCと愉快な仲間達であったが、厳重にケースに収められたカラータイマーの一つが大きな反応を示した為、準備の整わぬまま行動を余儀なくされていた。
地球圏を超高速で離脱する超高密度エネルギー体を検知し、それに対してカラータイマーの一つが強く反応を示したのである。
カラータイマーを見て、それが誰のものであるのかを瞬時に悟った者は少ない。
「ここは初代ウルトラマンの世界でしたか」
まずフラスコの外の視点と情報を持っていたヘイデス、それにウルトラマン達と惑星エルピスで面識のあるギリアム、ユーゼスの系列に一応は名を連ねるウーゼス、並行世界を観測可能なクォヴレーとケイサル・エフェス、それに双子とフェブルウス……
まあ、割といた。
ウルトラマンのカラータイマーに導かれるまま、DC艦隊はアステロイドベルトを離れて、二つのエネルギー体へと向かった。その正体は、すなわちウルトラマンとゾフィーである。
同時にヘイデスは準備の整っていない状態で訪れたのが、初代ウルトラマンの世界だったのに感謝した。ヘイデスの考える、最も急ぐ必要も戦う必要もない世界だったからだ。
DC艦隊がウルトラマン達が光の国に帰還する前になんとか接触を持とうと、大急ぎで進む中、ウルトラマン達もまたこの宇宙にとって異物に他ならないDC艦隊に気付き、方向を転換して超光速で近づいてくる。
「超高エネルギー体、方向転換、艦隊に向けて急速に接近してきます!」
ハガネのブリッジでレーダー手からの報告を受けて、レビルは冷静に落ち着き払ったまま指示を出す。つい先ほどまで真化融合を始めとした超常現象を多々経験したこともあり、今更、新たな宇宙生命との接触で驚くほど初心ではいられないのだ。
各機出撃の用意は整えていたが、これまでの彼らにとって極めて珍しく友好的な接触という事態の為、ちょっと勝手が分からないという地獄のスパロボ世界を戦い抜いてきた弊害は発生していたが……
艦隊の先頭を進むハガネの甲板にはウルトラマンとの面識のあるギリアムとゲシュペンストXN、知識だけはあるヘイデスと所長の乗るヴァルシオー、並行世界の番人たるクォヴレーとディス・アストラナガン、そして大事にウルトラマンのカラータイマーを収めたケースを持ったフェブルウスと双子の姿がある。
ほどなくして単独で恒星間移動すらたやすい超生命体が、彼らの前に姿を現す。
宇宙恐竜ゼットンに敗れ、一度は命を失いつつもゾフィーの持ってきた命によって生き返り、一時、融合していた地球人ハヤタ・シンから離れたウルトラマン。
そしてウルトラマン達の故郷『光の国』でも有数の実力たる、ゾフィーである。おおよそ40m前後の白銀に輝く巨人たる彼らは、DC側に戦意がないことを類稀なる超感覚で理解し、ゆっくりと速度を落としながらハガネと一千メートルの距離を置いて止まる。
なにより二人の視線はフェブルウスの抱える、奪われたはずのウルトラマンのカラータイマーへと否応なく向けられていた。
フェブルウスがゆっくりとカラータイマーを収めたクリアケースを抱え、この世界に来訪した事情──半ば事故だが──を告げる。
「はじめまして、光の国の人達。僕達はこの宇宙とは違う宇宙からやってきました」
「目的は貴方たちから奪われたカラータイマーをお返しする為です。このウルトラマンさんのカラータイマーだけではありません」
「たくさんのウルトラマン達が存在する異なる次元の世界から、多くのカラータイマーが奪われ、それを僕達は返す旅をしなければなりません」
「最初にこの世界にやってきて、初めてお返しするのがこのカラータイマーです」
シュメシ達の話は宇宙各地で多くの戦いや仕事を経験しているウルトラマン達にしても、他に類を見ない話であったろう。それでも答えはあった。アルカイックスマイルを浮かべているような顔立ちの二人から、テレパシーによる返答が発せられる。
『限りなく近く、極めて遠い世界から来た人々よ。確かにソレは私のカラータイマーに違いない。そしてあなた達の戦艦の一隻からは、私の知る仲間達の命と、知らないウルトラマンの命を感じる』
奇縁と言えばこれ以上ない奇縁だが、双子の言葉に嘘がないことを証明するいくつかの証拠を感じ取り、ウルトラマンとゾフィーはDC側への信用を少しは抱いてくれたと祈りたいところだ。
『それにそちらのロボットとパイロットの君からは、何か特別な力を感じる。この宇宙でも滅多に出会うことのないような、特別な力だ』
さすがの観察力、あるいは生物の究極形の一つとしての感覚が、ディス・アストラナガンの特異性をウルトラマンとゾフィーに漠然とではあるが訴えかけているようだ。
ただ事情を説明するにしても厄介なのが、DC側が自由に世界を移動できるわけではないことだ。カラータイマーを返却する為に、もともとの持ち主が居る世界へと世界間規模での転移を成功させなければならない。
一応、ディス・アストラナガンとウーゼスのクロスゲート、ケイサル・エフェスのアカシックレコードへの干渉能力、フェブルウスの多次元観測能力を頼みに、これから研究してゆく予定ではある。
事情をヘイデスやギリアム、クォヴレーらが伝え終えると、ウルトラマンとゾフィーは互いの顔を見やり、一つうなずき合う。彼らの間でDCに対する処遇が決まったらしい。
『それならば我々と共に光の国へ来てはどうだろうか? ウルトラの星の環境は、120Gはあるし、そのほかの要素からも君達に適切なものではないが、安全は保障しよう』
彼らの目から見ても並大抵の悪意ある宇宙人や凶暴な宇宙怪獣を、軽く凌駕するDCを監視する意味合いが欠片くらいはあるかもしれないが、カミーユやバナージらが善意しかない、と半ば呆れながら断言する提案である。
ウルトラ族(稀にウルトラ星人とも)が種族単位で、かつ数十万年のスケールで正義の味方をしているのを知っているギリアムやヘイデスとしては、無警戒で二人からの提案を了承しようとしたほどである。
なおウーゼスや双子といったメンバーを除くDCの人々、特に正規の軍人達はというと、二つ返事はしかねた。悲しいかな、彼らは悪意ある同族や異星人、異種族というものを嫌というほど知っているのだ。
ウルトラマンに続いて、光の国の警備隊隊長であり、ウルトラの父に次ぐ実力者たるゾフィーも続く。
二十七万年(あるいは二十六万年)以上昔のウルトラ族とよく似た姿をしているDCの面々に、地球人を相手にするのと同様に親近感を抱いているのかもしれない。
『もし資源で必要なものがあれば可能な限りで協力ができるだろう。
ただ、我々はすでに食事を必要としなくなって久しい。星で飼育している生き物用のものはあっても、君達人類型の生命体に適したものは、改めて用意する必要がある。
食料に関して、急を要するのならば友好関係にある、他の星にも協力を求めよう』
両者からの提案に返答をしたのは、正義の味方のスポンサーとしてオリュンポスの備蓄資源と艦隊の弾薬や生活物資の在庫を把握しているヘイデスだ。彼はヴァルシオーのサブシートで、データを呼び出しながら返答する。
テレパシーのみならず、電波でも音波でも聞き取ってくれるウルトラ族の超受信能力に感謝である。
「生活物資についてはご心配には及びません。備蓄とリサイクルで最低限以上の質と量は確保できています。ただ技術交流や文化面での交流を、行わせてもらえると助かります。
一期一会の出会いを大切にして、お互いに実りのある時間を過ごしたいですから。それに平和的な異文明との接触は、僕達にとって悲しいことに希少な経験なもので」
ヘイデスが哀愁を隠せないくらいに、スパロボ世界は内ゲバ、侵略が当たり前の世界であり、ウルトラマンも内ゲバの頻度は低いが似たようなものなのだが、身内の脚の引っ張り具合がダントツなのがスパロボ世界の問題点だろう。
かくしてDC艦隊は初代ウルトラマン世界のM78星雲は光の星の近海の宙域と、ウルトラスペースボートに間借りする形で腰を据える。
短命かつ多様性の塊であるDCメンバーは生命体として圧倒的過ぎるが為に新たな文化の誕生と変化がひじょ~~~~うにゆったりとしたペースのウルトラ族に、大きな刺激を与えながら友好的に接触し、アインストのような人外、ハイネルやデュークといった異星人とも交流を深め、実に有意義な時間を過ごすのだった。
◆チュートリアル終わり
後はウルトラマンティガに世界中の子供達の光を返しにゆき、ガタノゾーアとの決戦に可能性の獣達と太陽と月のライディーンをメインとしたお返し部隊の参戦。
メビウス・フェニックスブレイブに変身する為の命を奪われていたメビウスとヒカリのもとへと駆け付け、エンペラ星人との決戦に加わるマジンカイザーや真ゲッターロボ。
マザースフィアザウルスの決戦において、奪われたデッカーへの再変身用のエネルギーを送り届け、スフィアの大群を蹴散らすアムロやシャア、ゼファー、コン・バトラーV、ボルテスVなど。
そして何話かクリアすると、各ウルトラマン世界から初代世界へ帰還する最中、襲撃してくるアブソリューティアンと激突するヴァイシュラバ、アインスト・レジセイアやケイサル・エフェス、ウーゼス、ラオデキヤ……複数回。
というのが昭和、平成、令和の各パックで行われるという設定です。
各パック1,000円(税抜)なお変身が強制解除されるほどダメージを負う、死亡した描写のないウルトラマン作品は除外されています。
ただウルトラマンシリーズで未視聴のものが多く、視聴した作品でもキャラクター像を忘れているので、具体的に話を続けるのは難しいのです。なにとぞご容赦を。
続きは難しいので皆さんの心の中にお任せします。三次創作にも期待を寄せましょう。それでは、ありがとうございました。