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建設業界でブルドーザーなどの重機を無人化する動きが広がっている。来年4月に残業時間の規制が始まり、業界の人手不足が懸念される「建設2024年問題」への対応に加え、現場の負担軽減や安全性向上につなげる狙いもある。ゼネコン各社は、将来の収益源として無人システムを外販することも視野に入れる。(経済部 佐々木拓)
効率アップ
鹿島建設が秋田県東成瀬村で進めている「成瀬ダム」の建設現場では、最大14台の無人重機が稼働している。自動で搬送されてきたセメントをダンプトラックが次々に運び、ブルドーザーがならした後にローラー車で固めていく。オペレーターは約400キロ・メートル離れた神奈川県小田原市の管制室からモニターで状況を確認するだけだ。自動運転の建機だけでの施工は世界初という。
重機は事前にプログラムされた通りに最短距離で動き、1台あたりの作業量は有人の場合よりも2~3割増えたという。現場責任者の松本孝矢氏は「手の空いた人は別の作業に従事でき、現場の生産性がさらに高まる」と話す。
大成建設も栃木県鹿沼市の「南摩ダム」の建設工事で無人のブルドーザーやローラーを制御するシステムを導入するなど、他社も注力している。
外販も視野
背景にあるのは深刻な人手不足だ。建設業界では就業者の3分の1を55歳以上が占め、高齢化が進む。今年9月の「建設・採掘従事者」の有効求人倍率は5・92倍に達し、新たな担い手の確保も難しくなっている。厚生労働省によると、建設業界の1か月あたりの平均労働時間は163・5時間(22年)と、平均(136・1時間)よりも20時間以上長いことも要因の一つだ。
来年4月には建設業界にも働き方改革関連法が適用され、残業時間は労使で合意した場合でも年720時間に制限される。工期の遅れなども懸念され、対応が急務になっていた。
鹿島は成瀬ダムの現場で使っているシステムを地方の中小ゼネコンなどに販売するため、昨年8月にNECとの合弁会社を設立した。
「3K」対策も
無人化には安全面でのメリットも大きい。「万が一、事故が起きても人的被害は発生しない」(鹿島の松本氏)ためだ。大手ゼネコンの広報担当者は「『3K』(きつい、汚い、危険)とも言われる業界の負のイメージの
早稲田大の黒田祥子教授(労働経済学)は「ゼネコンが必要な人手を確保できなければ、社会インフラにも影響を及ぼす可能性が出てくる。AI(人工知能)など他の新しい技術も取り入れ、若者が働きたいと思える環境を整えることが不可欠だ」と指摘する。