日本企業で働いていても、職種によっては外国人と食事を共にする機会は多々あると思います。今回はランチミーティングに焦点を当てて、彼らがその場をどのように活用しているのか、また日本人として気を付けるべき点などをまとめてみました。

ヨーロッパ企業におけるランチミーティングの一例

私が働いているスウェーデン企業や以前勤めていたドイツ企業では、ランチミーティングが頻繁に行なわれています。通常のミーティングとは異なり、あまり堅苦しい雰囲気にはならない場合がほとんどです。

最も多いのは、午前中に会議室でのミーティングがあり、そのままランチを一緒に楽しむというパターンです。議題がたくさんある場合ですと、そのまま午後も会議という流れになります。もちろん全てとは言えませんが、ランチはあくまでも休憩の位置付けで、多くの場合、会議とは全く異なる話題となります。たとえば家族の話や天気の話、外国からのゲストであれば、お互いのお国柄などについて話すことが多い印象です。

私がイタリアの企業で経験したのは、まさに上述のとおり。ランチには午前午後の議題は持ち込まれませんでした。当時、私は元請けとしてクレームを付ける立場でドイツ人の同僚と共にイタリア企業へ訪問しました。ですが、先方は我々の主張を一切認めず、午前中の会議では双方ともかなりヒートアップし、ピリピリとした空気になったのを覚えています。

ところが、ランチになるとコロっと態度が変わり、双方のプライベートの話で盛りあがりました。そして午後の会議開始と同時に、再び一瞬にしてヒートアップ。ただし、一方的に主義主張を展開するのではなく、つとめて論理的に相手を納得させようとする過程で、どうしても感情の起伏が出てしまうといった感じです。先方が契約書を出して、「我々はこの契約に従ってやっているだけだ!」と言いながら机をバンバン叩いていたのを思い出します。

結局、物別れで終わった会議でしたが、我々が帰る時はきちんと見送りにきてくれました。そしてニコニコしながら握手をし、「次回は明るい話題で会えるといいね! ハハハ!」なんて冗談を言われたことを覚えています。

ランチミーティングで注意すべきこと

会議とランチでメリハリをつける

上述のように、ランチミーティングは午前午後の殺伐とした会議の緩衝剤として機能する場合があります。日本ですと、会議中は反対意見をあまりストレートに述べる文化ではありませんが、ヨーロッパではどれだけ合理的で適切な主張ができるかが勝負。ですから欧州企業と会議やランチミーティングをする機会があったら、緩急をつけて交渉などを楽しむと良いでしょう。

ほかに会議がない場合の話題

ほかに会議がなく、ランチミーティングのみが設定されることも多々あります。よくあるのは、双方の役員レベルが顔を合わせて親睦を深めるようなケースです。こうしたランチミーティングでは、当然ですがプレゼンをする機会はないのが一般的で、グラフなどを用いて視覚的に何かを伝えることは不可能。ですから、あまり込み入った話題は避けるべきでしょうし、そもそもランチミーティングに改まった“議題”を設定するのは不自然です。ただし役員やトップ同士の会談の場としてのランチミーティングであれば、これからの会社としての戦略や方向性だけでなく、漠然と今後の業界の未来についてなど、わりと唐突な質問が飛んでくることもあります。

私もドイツ企業在籍時は、こういった場によく同席しました。でも、役員であっても場慣れをしていない日本人ですと言葉のハンデもあり、あまり受け答えができないという状況をよく目にしました。とはいえ、こうした場では特に何かをコミットすることは一般的ではないですし、あとで言葉尻を取られて「あの時こう言ったじゃないか!」などと言われることもないでしょう。また、時折通訳を同席させる日本企業もありましたが、ランチミーティングではなるべく避けた方が良いかもしれません。簡単な冗談を言い合って笑い合い、親睦を深めることが目的の一つですから、通訳を介してしまうと面白さも半減してしまうでしょう。

どんなにつたない英語であっても自分の言葉で伝えることが大切ですし、相手の印象にもより強く残ります。そもそも通訳が必要なぐらい語学に自信がないのであれば、外国人とのランチミーティング自体避けるべきかもしれません。

パスタをズルズルと食べない

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Jacek Chabraszewski / Shutterstock.com

私が最も多く経験した“場がシラケる”のがこれです。スパゲッティは日本のそばやラーメンではないので、ズルズルと音を立てて食べるのはご法度中のご法度。ランチミーティングに同席する相手の外国人全員が日本文化に精通している人であれば、まだ平気かもしれませんが、そのような確率は極めて低いでしょう。いくらバッチリとスーツを着こなして話が弾んでいたとしても、ズルズルとやった瞬間に会話が一瞬にして途絶えます。そんな状況を目の当たりにしたことが何度もありました。また、後になってドイツ人から「あれは何なの?」と聞かれたこともよくありました。スープやコーヒーでも同じことです。気を付けましょう。

また、日本へ外国のお客さんを招いた時も同様です。彼らが日本文化に精通している可能性は低いと思った方が無難です。いくらホームだからといって、激しく蕎麦や麺類をすするのはやめましょう。良い印象を抱いてもらうはずが、真逆の結果を招きます。

我々にたとえて言うなら、箸から箸へ食べ物を渡すぐらいのことかもしれません。いくら外国人であっても、これは許せないですよね。あの、ズルズルといった音は西洋人には生理的に受け入れられないようです。

第二次世界大戦の話はタブー

ランチに限った話ではありませんが、特にドイツやイタリアのお客さんとの間で「日本とドイツ・イタリアは昔同盟を結んでいましたからね!」なんて言う方をよく見かけました。これを言うと場が凍り付きます。特にドイツではナチス系の話題やヒトラーの話題はたとえ冗談であってもマズイです。たんに教養の無さを露呈することになります。気を付けましょう。

余談ですが、日本の歴史の教科書は縄文時代から始まり、近代史の特に第二次世界大戦近辺は2~3ページで終わるという話をすると興味を持ってくれます。ドイツでは、まず時系列が逆ですし、第二次大戦については特に深く学ぶそうです。こういった事柄について私的に意見を述べるのであれば、逆にスマートな印象を与えられるかもしれません。

ランチミーティングでアルコールを楽しもう

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Image: Dmytro Zinkevych / Shutterstock.com

ヨーロッパの企業では、ランチミーティングを行なうために会社がわざわざ社内に立派なレストランを構えていることがあります。もちろん一般に開放しているわけではなく、取引先のゲストをもてなすためです。私が現在勤めるスウェーデンの会社にも個室があり、昼食を取りながらプレゼンをすることもできます。

また、かつてのスウェーデンでは一般的だったことですが、少なくともドイツにあるBMWの本社のゲスト用レストランでは、丸テーブルの中央にワインが置いてあり、ビールを飲むことも可能でした。日本人でアルコールに手を付けている人は見かけませんでしたが、ドイツの人はビールを飲む人がけっこういました。ただ、5%の本当のビールを飲む人もいれば、ライトビールといって2~3%ほどの軽いビールを飲む人も多くいました。

私のスウェーデンの会社でもライトビールは毎日社員レストランで飲むことが可能です。私も時々飲んじゃいます。

このように、ランチミーティングには様々なバリエーションがあり、個々に異なる雰囲気が存在します。明るい話題になることが予想でき、かつ先方もビールを飲むようであれば日本人であってもライトビールぐらいであれば全然問題ないはずです。もちろん、その後の車の運転は控えなくてはなりませんが、チャンスがあればぜひともお仕事中にお酒を飲んでしまうことをお勧めします。

吉澤智哉(よしざわ・ともや) | Blog | Facebook |

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東京都出身ストックホルム在住。妻と4歳の長女、生後4カ月の次女と暮らす36歳。2016年3月より、スウェーデンの自動車部品メーカー Öhlins Racing ABにて研究開発業務に携わる。

12~14歳は米国オハイオ州で過ごす。日本大学理工学部機械工学科を卒業後、(株)本田技術研究所及び(株)ホンダレーシングにてオートバイの車体設計に9年間従事。娘の誕生をきっかけに、ワークライフバランス向上を目指し32歳でBMW Japanへ転職、品質エンジニアとして2年間勤めた後に更なる家族の幸せを求めスウェーデンへの移住を決意。

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編集部からご連絡です。

ライフハッカー[日本版]は、ライフステージが変化した、もしくは変化を起こそうとしているひとを応援したいと思い、それぞれのライフステージをハック(=よりよくしている)ひとが登壇するイベント「Lifestage Hackers」をシリーズ開催していきます。

その第一弾として、来たる2017年11月15日(水)に本稿の筆者でもある、吉澤さんを招いたイベントを開催いたします。テーマは、「スウェーデンへ家族と移住したエンジニアが語る、サラリーマンが海外へ転職する方法」。

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