国の経済が成長しているかの目安になる
Q GDPって、そもそも何?
A 国や地域の中で新たに生んだ「価値」を足し合わせた金額
GDPとは、英語の「Gross Domestic Product」の頭文字をならべた略語です。
ある国や地域の中で、1年や半年など一定の期間で新たに生み出された「付加価値」を合計した金額を表します。
たとえばパンが一つ300円で売れたとします。小麦粉など原材料に150円かかったならば、このパンの付加価値は150円です。パン以外にも自動車、家具、ゲームなどさまざまな物が日々、作られています。GDPはそうした物の付加価値をすべて足し合わせて計算されます。
GDP


日本の場合は年間で500兆円以上にのぼります。
GDPは経済が成長しているかどうかの目安になります。GDPが増えていれば、「成長している=景気が良い」とされ、減りが続くようなら「成長していない=景気が悪い」とみなされます。
そうして政府や私たち国民が、今後の経済のゆくえを考えるヒントになります。経済の状態が悪くなりそうであれば、政府は経済をもり上げるための政策を立てられます。会社も経営のやり方を変えて備えられます。
国全体のGDPを計算するのは大変な作業ですが、経済成長の目安としては早く公表されるのが望ましいです。そのためにまず「速報値」としておおまかな値が発表され、1年ほどかけて確定した値をはじき出します。
Q 経済が成長するのは、いいことばかりなの?
A 生活は上向くが、本当の豊かさにつながるのか疑問の声も
多くの人が経済成長を好むのは、仕事を失う人が減ったり、仕事でかせぐお金が増えたりして、私たちの生活が上向くことにつながるからです。ただ、国として経済成長したとしても、富める人と貧しい人との格差が広がってしまうという問題もあります。すべての人に成長の恵みが行きわたるようにする工夫が求められます。
同じように物を売るのでも、フリマサイトなどで売られた中古品の金額はGDPには加えられず、売れた時にはらう手数料のみが加わります。新たに何かを作ったのではなく、物を転売しただけなので、「新たに生まれた付加価値」とみなされないのです。
限りある資源を使って新しい物を作れば増えるGDPの計算方法に対しても「地球環境のことを考えたら、成長し続けるのが本当に正しいの?」という疑問が生まれています。GDPに限らず、さまざまな経済のデータを組み合わせてながめることで、「本当の豊かさ」を表そうとする試みもあります。
最近のNEWS
米・中に次ぎ3位の日本 ドイツにぬかれるかも
日本では景気が悪い時期が長く続きましたが、GDPの大きさではアメリカ(米)、中国に次いで世界第3位。今も世界から「経済大国」とみられています。
しかし今年、ドイツにぬかれて4位になるかもしれないと予想されています。物価高が続き、国内の会社の付加価値を生み出す力が弱まっていることや、少子高齢化で若い働き手が減りつつあることが影響しています。
こうした流れを変えるには、省エネなど物価高に負けない技術開発や、海外から優秀な働き手に来てもらうことなどが必要になりそうです。より良い日本になるよう、私もがんばりたいです!
解説者 崔真淑
エコノミスト 「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役
(朝日中高生新聞2023年5月5日号)
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