挿絵表示切替ボタン

配色








行間

文字サイズ

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
76/347
第三章 成長少年
第75話 磯さん、再び

「ふ~、この階はこんなもんかな」


青い洞のダンジョン地下二十階の大部屋で待ち構えていた魔物たちを蹴散らした俺が階下への階段を探し当て下りようとしたちょうどその時だった。


「きゃあぁ~っ! 来ないでくださぁ~いっ!」


女性の悲鳴が聞こえてきた。


「ん? この舌っ足らずな感じ、もしかして……」

磯さん?

そう思い振り返ると、


「怖いですぅ~、来ないでくださぁ~いっ!」

俺が思った通りやはりさっき会ったばかりの磯さんがハイドラゴンに追われながら部屋に逃げ込んできた。


『ギャアアアァァァオッ!!』

「嫌ですぅ~!」

と叫んだ直後磯さんは地面のでっぱりにつまづいて派手に転んでしまう。


「うぅ~、痛いですぅ~」

『ギャアアアァァァオッ!!』

すると隙ありとばかりにハイドラゴンが倒れている磯さんめがけて炎を吐いた。


うわ、ヤバいっ!


瞬時に駆け出した俺だったが距離が部屋の端から端とかなりあったため一足遅く、俺の目の前で大きな炎に飲み込まれる磯さん。


「きゃあぁーっ……!!」



――死。

真っ先にその言葉が頭に浮かんだ。



だが……、

「きゃあぁー、怖いですぅ~!」

炎の中からは相変わらずの舌っ足らずな声が聞こえてくる。


そしてハイドラゴンが炎を吐ききると磯さんが手で顔を覆った状態でうずくまっていた。


「え……?」


焼失どころか火傷すらしていないように見える。

しかもおかしなことに着ていた服にも焦げ跡一つない。


その光景に驚いていたのは俺だけではなくハイドラゴンも同じだったようで、

『ギャア……!?』

ハイドラゴンは口を開けたまま状況が理解できないといった様子で固まっていた。


それを見てとりあえず俺は一足飛びで動きの止まっていたハイドラゴンの顔の前に蹴上がると、


「はぁっ!」


右のこぶしをひたいめがけて放った。


俺の一撃はハイドラゴンのひたいにめり込むと次の瞬間頭部ごとハイドラゴンを吹き飛ばす。


ハイドラゴンの返り血が宙を舞う中俺は地面に下り立つと磯さんに近寄っていった。


「あの……大丈夫ですか?」

手を差し伸べた俺に、

「は、はい、ありがとうございます……でも怖かったですぅ~」

磯さんはうるんだ瞳でそう返した。



ゆっくり立ち上がった磯さんを俺はぶしつけにじろじろと観察する。

なんでこの人は無傷だったのだろうと。


磯さんは身長百五十センチくらいだろうか、地味な服装ながらも大きな胸を強調するかのようなニット地の服とフレアスカートという組み合わせ。

髪は肩までの長さで少し茶色がかっている。


服も髪も一切焦げ付いた様子などはなく今さっき炎に包まれていたとは到底思えない。



すると俺の視線に気付いた磯さんが、

「? あのぅ……わたしの体に何かついていますか?」

不思議そうな顔で自分の体と俺の顔を交互に見やった。


「あ、いえ、そういうわけじゃなくて……すいません率直に聞きますけどなんで無事なんですか?」

「?」

きょとん顔の磯さん。


「さっきハイドラゴンの炎で焼かれたときには正直死んでしまったんじゃないかと思いましたよ」

「あぁ~、さっきの炎ですね。とっても怖かったですけどわたし炎は効かないんです」

と磯さんは言う。


「え、炎が効かない……?」

「はい。わたしには二つのすごぉ~いスキルがあるので」

磯さんは自慢げに大きな胸を張ってみせた。


「ほかのプレイヤーさんには秘密ですよ」

そう言うと磯さんは背伸びをして俺の耳元に顔を寄せ、

「わたし【物理攻撃無効化】と【魔法無効化】のスキルを持っているんですぅ」

小さくささやいた。


その瞬間そよそよと女性特有の甘い香りが俺の鼻孔をくすぐっていった。

お読みいただきありがとうございます!

感想&評価&ブクマもとても励みになります!

これからもよろしくお願いいたしますm(__)m

ブックマーク機能を使うには ログインしてください。
いいねで応援
受付停止中
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
※感想を書く場合はログインしてください
X(旧Twitter)・LINEで送る

LINEで送る

+注意+

・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
▲ページの上部へ