アジアと北米をつなぐ橋「アラスカ」
さて、なぜ私はこんなにお金がかかり、危険で、しかも全身骨格が簡単には見つからないアラスカで15年以上調査をしているのだろうか?
その理由は、私が同時に日本やモンゴル、中国を含むアジア大陸で恐竜化石調査をしていること、そしてアメリカ本土やカナダ、メキシコといった北米大陸で多くの調査を行っていることにある。
先に述べたように、両大陸には恐竜を多産する恐竜化石産地がある。私たちはさまざまな恐竜を発見し、想像を超える恐竜の多様性を知ることとなる。
三十年ほど前は、恐竜の世界というと、ティラノサウルスやトリケラトプス、ステゴサウルスにブロントサウルスというイメージを持っていたが、これらはすべて北米の恐竜である。北米大陸の恐竜たちは大繁栄をし、さまざまな種類へと進化していった。
いっぽうで、アジア大陸の代表国モンゴルや中国でも、ここ三十年間で北米をもしのぐ数の恐竜たちが発見され、恐竜のイメージというものが少しずつ変わってきている。北米の恐竜の世界とは一味ちがうアジアの恐竜の世界が存在していたことがわかってきたのだ。
私は、北米ではアメリカやカナダ、アジアではモンゴルや中国で恐竜の研究をすることで、それぞれの大陸の恐竜の多様性について研究している。似たような恐竜がいたり、まったくことなった恐竜がいたりした。研究を進めていくと、これらの恐竜の多くが、北米からアジアへ、アジアから北米へと渡っていきながら進化していったことがわかってきた。
じつは、これら恐竜の進化や渡りを解明するのに重要になるのが、恐竜時代両大陸をつなぐ陸橋だったアラスカなのである。