じつは、有名どころなら「たくさん落ちている」恐竜化石…あえて過酷な地にこだわる「深いワケ」

小林快次の「極北の恐竜たち」連載スタート! 

極圏の恐竜を追う!

今から何千万年も昔に、地球の陸上に君臨していた恐竜たち。シダ類やソテツ類の茂った暖かい地域で暮らしていたイメージがあるかもしれないが、彼らは地球上のあらゆるところに進出していた。南極大陸からも、北極圏からも恐竜の化石は発見されているのだ。

この連載では、北極圏のアラスカで15年以上にわたって調査を続ける筆者が、極圏での厳しい環境で、どのように恐竜たちが暮らしていたのか、その生態と進化の謎に挑むーー。

今回は、アラスカでの発掘・研究の意義についての解説をお届けしよう。

【写真】小林快次氏アラスカでの発掘・研究の意義とは?

意外に身近なところ…「恐竜化石のメジャー産地」

いまから約2億3000万年前に誕生し、約6600万年前まで地球の陸上を支配していた恐竜は、それこそ北極圏から南極大陸まで、あらゆる陸地に生息していた。

とはいえ、恐竜化石が多産する国は、アメリカ、カナダ、中国、モンゴル、アルゼンチン、イギリスの6カ国といわれている。たしかに、ティラノサウルスやトリケラトプス、ミクロラプトルやデイノケイルス、イグアノドンやアルゼンチノサウルスという有名恐竜は、これらの国から発見されている。

私が国外で本格的に恐竜発掘を始めたのは1996年なので、今年で28年目になる。前述の6カ国のうちイギリス以外の国では、訪れるだけではなく、ちゃんとした発掘を経験済みだ。どの国でも、恐竜化石産地に行くと、あまりにたくさんの恐竜化石が落ちているため、踏まないで歩くのが大変なくらいだ。全身骨格が発見されることも珍しくなく、興奮も大きい。

そんな化石産地はどんな山の中や砂漠の中にあるのかと思うかもしれないが、実際のところは比較的大きな街が近くにあり、定期的に食料を買い出しに行ったり、休日にはレストランに行くこともある。もし怪我や病気をしたら、病院に行くことだってできる。

予算、環境、捕食動物…桁違いに厳しい「アラスカでの発掘」

私が2007年から恐竜化石調査を行っているアメリカのアラスカ州はどうだろうか。

研究は比較的歴史が浅い。アラスカという自然に憧れをもつ人は多いが、実際に調査に行くとなると話は別である。

まず何よりも、調査にお金がかかる。日本からアラスカに行くための飛行機代はもちろんだが、アンカレッジやフェアバンクスといった比較的大きな町から、調査地までは、セスナやヘリコプター、ボートといったもので移動するため、その手配には数百万円から一千万という多額の予算が必要である。

仮にお金があっても、調査するための許可を取るのも大変である。かなり時間に余裕を持って調査の許可申請をしても、夏のアラスカは調査のラッシュで、限られた国立公園のスタッフで許可申請の書類をこなすのも簡単ではない。時には、一年も前に申請しているのに間に合わないこともある。

辺鄙なところが多いため、食料は全て持参、セスナやヘリコプターで一度下ろされたら、次に迎えに来るまで1週間や10日間は、野生動物のど真ん中に置いてきぼりである。

ハイイログマが近くを徘徊し、集団でオオカミが谷を歩いている。これらの動物を動物園で見ることはあるが、アラスカで調査をしていると、私たち人間が「獲物」としての対象になってしまう。骨折や靭帯を痛めたくらいでは、痛み止めで我慢するしかないし、どうしても病院に行かなくてはいけなくなると、一気にレスキューミッションになってしまう。

【写真】アラスカでの研究・発掘は過酷な状況下で行うことになるアラスカでの研究・発掘は過酷な状況下で行うことになる

一度怖い目に遭うと、それがトラウマとなってしまい、二度とアラスカで調査をしたいと思わなくなった研究者を私は複数人知っている。

アラスカは、先ほど述べた多くのメジャーな化石産地とはかなり事情がちがうのだ。

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