ロシアで起きているデモ
ロシア連邦を構成する中部、バシコルトスタン共和国で2024年1月、活動家のフェイル・アルシノフを支持する抗議デモが何度も発生した。最初は首都ウファから南東約1400キロに位置するバイマクで、ついで首都ウファにまで波及した(下図を参照)。ウクライナ戦争が始まって以来、ロシアで最大規模の抗議デモとみられている。
発端は昨年、ある村の住民にバシキール語で演説したアルシノフが地元の問題とウクライナ戦争について語り、演説の最後に、彼はバシキール語で「kara khalyk」、翻訳すると「黒人」という言葉を使ったことだった。この言葉を聞いたバシコルトスタンのラディ・ハビロフ首長は、人種的憎悪を煽動し、ロシア軍の「信用を失墜させ」、過激主義を呼びかけたとして、反政府活動家とみなしていたアルシノフを起訴するよう自ら地元の検察庁に要請したのである。
アルシノフの判決は1月15日に発表される予定だったが、彼の起訴に抗議する大群衆が裁判所の外に集まり、「自由を!」「われわれは黒人(バシキール語で使った言葉は「貧しい人々」を意味する)だ」と唱えたため、裁判所は17日まで発表を延期した。15日に裁判所から自由に出ることができたアルシノフは、外に出て、連帯を示すために出てきた人々に感謝した。17日には群衆はさらに大きくなり、何千人もの人々が警察に拘束される危険を冒してまで彼のために立ち上がったのだ(下の写真を参照)。地域の裁判所は同日、アルシノフを、人種的憎悪を煽動した罪で有罪とし、2023年4月に行った演説に対して4年の刑を言い渡した。これに対して、首都ウファでは1月19日未明から1500人ほどの群衆が集まり、アルシノフへの判決に抗議する活動が起きた(実際の映像)。ロシア当局は21日夕までに4人逮捕した。罪状は、「集団暴動」の組織化と公務員への暴行で、最長15年の刑が科される可能性がある。
こうした社会不安の背後には、ウクライナの戦闘に派遣される少数民族の数が、ロシア国内では不釣り合いに多いことへの反発がある。加えて、アルシノフはバシコルトスタンにおけるバシキール人の民族的アイデンティティを守るために設立された草の根運動、運動「バシュコルト」の共同設立者であり、以前から当局からマークされていた。2022年秋、アルシノフは、ウクライナ戦争と動員への反対を公に表明し、後者をバシキール人に対する大量虐殺と呼んだ数日後に警察に拘束されたこともある。