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サッカーボール分子 フラーレンのお話

どうも,のうむです。

今回は「フラーレン」を題材にお話ししようと思います。

フラーレンの大きな特徴と言えば,球状のサッカーボール分子であることです。
今日,物性物理学者や有機合成化学者など幅広い分野で研究が盛んに行われています。

そんなフラーレンはどんな分子で,何が面白いのかについて語っていきたいと思います。

そもそもフラーレンとは?

「フラーレン=サッカーボール分子」は必ずしも正しくはない?

フラーレンはsp2炭素からなる立体構造をもつ分子です。
グラファイトなどとは異なり,湾曲した構造を持ちます。

さて,多くの人は「フラーレン=サッカーボール分子(球状分子)」と思っているかもしれませんが,正確には正しくないです(間違いというわけでもありませんが・・・)
なぜならフラーレンはいくつもの種類があるからです。

フラーレンがサッカーボール分子と呼ばれる大きな理由は,C60フラーレン(通称:バックミンスターフラーレン)が一人有名になりすぎているからです。
このバックミンスターフラーレンだけがサッカーボール分子なのです。

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バックミンスターフラーレン以外にも高次フラーレンがいくつも存在します。
C70,C72,C74,C76,C78,C80,C82,C84,C86,C88,C90・・・
CASに登録されているものではC3996という異常に大きいフラーレンも存在しているようです。

例えば,C70の場合,球状構造ではなく楕円球構造になっております。

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図はWikipedia「C70」より引用

フラーレンの歴史

フラーレンはグラファイトやダイアモンドよりも歴史が浅い。

1985年にSir Harold Walter Kroto,Robert Floyd Curl, Jr,Richard Errett Smalleyらによってバックミンスターフラーレンが発見され,1996年にこの3名がノーベル化学賞を受賞している。

バックミンスターフラーレンは発見されるよりも20年も前に,サッカーボール分子として提唱されていました。
提唱したのは当時北海道大学の大澤映二,日本人なのです。

大澤は五員環にベンゼン環が5枚縮環した分子であるコランニュレンが曲がったお椀構造を持つことから,球状の炭素分子が存在するのでは?と考えたそうです。

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しかし,フラーレンの提唱論文は日本語の学術論文に掲載されたため,世界的に全く注目されていませんでした。
(というよりは日本国外の人間は日本語の論文なんて読まないので・・・)

フラーレンの研究

ではフラーレンでどのような研究(有機化学分野)が行われているのか,キーワードを解説します。
(のうむ自身フラーレンの研究をしていたわけではないので,大雑把な話しかできませんが・・・)

金属内包フラーレン

フラーレンの特徴として球状あるいは楕円球構造であることです。
つまり,中に空洞があります。

その空洞に種々の金属を入れる研究が行われています。
これが金属内包フラーレンでM@C60と表記されます。
金属種以外にも水素分子などを内包させたフラーレンも研究が進んでいます。

フラーレンに入れることのできた金属種としてリチウムイオンやスカンジウム,ランタン,セリウム,チタンなどが挙げられます。
一方,アルミニウム,鉄,金など一部の金属種はフラーレンに内包させることができず,この原因については明らかになっていません。

分子手術

では金属内包フラーレンはどのように合成するのか?
その一つに分子手術があります。

名前だけ聞くとカッコイイですよね?(笑)

でも名の通り,分子(フラーレン)に手術を施すような華麗なスキームをかくことができます。
流れとしては「フラーレンの開口→開口から内包分子を導入→フラーレンの開口部分を閉じる」と,実際の手術に似ていますよね?
この分野は京都大学村田研の研究が有名です。

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図は京都大学村田研ホームページより引用

また,村田研では,2011年にはフラーレンの中に水を入れることにも成功しています。

Kurotobi, K.; Murata, Y. Science 2011, 333, 613.
https://www.science.org/doi/10.1126/science.1206376

この研究はChemStationの解説がわかりやすいです。

ホスト-ゲストケミストリーへの展開

フラーレンと湾曲したπ分子は,π-πスタックにより,共結晶を形成することができます。
俗にいう,ホスト-ゲストケミストリーです。

有名なものとして,コランニュレン2分子がフラーレンを捕捉する研究が報告されています。

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図はWikipedia(英語版)「Corannulene」より引用

Sygula, A.; Fronczek, F.; Sygula, R.; Rabideau, P.; Olmstead, M. (2007). Journal of the American Chemical Society. 129, 13, 3842.
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ja070616p

身近なものへのアプリケーション

ではフラーレンは身の回りのどのようなところで使われているのでしょうか?
簡単に解説していきます。

化粧品

まず,フラーレンは化粧品に使われているらしいです。
正直,なぜフラーレンがお肌にいいのかは知りません(笑)。

n型半導体

フラーレン誘導体のPCBMは低いLUMOを持つことからn型半導体特性が報告されている。

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まとめ

以上が簡単にですが「フラーレンのお話」でした。

あまり深くは掘り下げず,有機化学の視点からお話してきましたが,コメントがあればよろしくお願いします。

それではまた。

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企業の研究員です。有機化学を中心に化学のトピックについて(気が向いた時に)紹介していきます。アイコン画像は変えるの面倒なだけです。
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