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AIと著作権に関する考え方について(素案)のパブコメに書く意見を考えてみる

パブコメはこちら→ 「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に関する意見募集の実施について|e-Govパブリック・コメント 受付終了日時は2024年2月12日23時59分。 以下、現時点で私個人が考えた内容の要旨をいくつか記す。 色々な視点を示すことに主眼を置いているため、意見には一貫性がないかもしれない。 追加する可能性あり。 1.はじめに 仮に合法的な行為であっても、他文化の尊重などの倫理的規範が求められることを示すことが望ましい。 2.検討の前提として (2

    • 生成AIが文化を発展させる可能性を考えてみる

      1.文化に属し、文化的表現を探求するのは特権か社会権規約15条1項(a)において、文化的生活に参加する権利が認められている。 文化的表現を探求し、発展させる権利も含まれており、これは一部の人にのみ認められる特権ではない。 すなわち、文化的表現は特権的独占はされていない。 生成AIに関して、表現の民主化という名目は適切ではないと解される。 2.生成AIによる文化の継承の可能性文化の定義について、社会権規約 条約機関の一般的意見21の注釈12を参考にする。 これらから、簡

      • 人間の学習と生成AIの学習の違い ~ジャービスの学習過程モデルを基に~

        1.ジャービスの学習過程モデルまず、成人学習者の認識変容のメカニズム一欧米の成人教育理論の成果を手がかりに一にて紹介されている、ジャービスの学習過程モデルについて理解していきます。 論文では、9つのタイプの反応が、(図4)においてどのような過程を辿るのか説明されています。 ここでは、「技能の学習」「記憶」「黙想」「反省的な技能の学習」「経験学習」の5つに絞って見ていきます。 「技能の学習」は単純な作業などを覚えるような場合です。 「人間」がどのように行うか「経験」し、そ

        • 生成AIを「文化の盗用」として考えてみる

          文化の盗用とは文化の盗用は、自身が属さない文化の要素を取り込むことです。 すべての文化の盗用が問題であるわけではありません。 問題となった例を見てみましょう。 これらは著作権や意匠権等の知的財産権を侵害したわけではありません。 主に倫理的、道徳的問題によるものです。 一体どういった場合に問題となるのか見てみましょう。明確な線引きはないので、問題にされる可能性を高める要素として捉えます。 問題のある文化の盗用とは「窃盗」や「攻撃」の形態によって不当な危害を与える可能性があ

        AIと著作権に関する考え方について(素案)のパブコメに書く意見を考えてみる

          生成AIによる問題を列挙

          $$ \begin{array}{|l|l|l|l|l|}\hline \text{被害を被る主体} & \text{関係する権利・法律・憲法・条約} & \text{内容} & \text{要因} & \text{備考} \\ \hline \text{自身の著作物を情報解析に利用された著作者} & \text{同一性保持権、著作権法30条の4の享受目的} & \begin{array}{l} \text{・故意又は過失により既存の著作物に類似}\\ \text{した出力物

          生成AIによる問題を列挙

          生成AIによる文化的利益への悪影響を防ぐには?

          生成AIに関して様々な問題が懸念されていますが、今回は文化的利益への影響に焦点を絞って考えていきたいと思います。 1.文化的利益とは内心で着想した思想や感情を他者と分かち合う利益。 表現者側にとっては受け手から評価や地位を得たりし、 鑑賞者側にとっては魅力的な表現によって心を豊かにします。 双方向に生じる利益です。(参考:著作者人格権の一般理論 34ページ目) 世界人権宣言27条第1項では表現者として又は鑑賞者として文化に参加する権利を示しています 表現者はもともとは鑑賞

          生成AIによる文化的利益への悪影響を防ぐには?

          生成AIが同化問題を生んでいるという仮説

          私の認識に誤りがある可能性がありますので、あくまでひとつの考えであることをご了承ください。 1.創作文化と生成AI文化の性質は異なると思われる創作者は、文化の表現に触れ、個人的感情を普遍的手法で表現します。 創作は、自己の文化の代弁と言えます。 生成AIは、文化の表現を解析し、統計に基づいて出力します。 生成AIによる出力は、他者の文化の代弁と言えます。 創作が主観的評価に基づいて行われるのに対し、 AI生成は客観的評価に基づいて行われます。 創作者と生成AIの違いは

          生成AIが同化問題を生んでいるという仮説

          生成AIがもたらす消費主義 著作者人格権の経緯を踏まえて

          この記事は、論文著作者人格権の一般理論 ーフランス法を例にーを元に、私が考えたことを書いていきます。 私の個人的な解釈が多く含まれると思いますので、ご了承ください。 著作者は独占する特権を持つのか 論文内で語られている、フランスの著作者人格権に関する歴史を、ざっくりと見ていきます。  1.印刷技術が生まれたことで、書店は作品を印刷する特権を王から得た  2.著作物は著作者固有のものとして所有権を得たが、有体物所有物のように扱われた。(権利の全面的な譲渡が可能)  3.経済

          生成AIがもたらす消費主義 著作者人格権の経緯を踏まえて

          著作権法第30条の4の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」について国際条約をもとに考えたこと

          浅学ゆえ内容にあまり自信がありませんので、話し半分に読んでもらえたらと思います。 結論から書きますと、「民主的社会における一般的福祉を増進することを目的としていない場合は、著作権者の利益を不当に害しているとみなすのが妥当ではないか」という考えに至りました。 説明していきます。 まず、当該著作権法の条文を見てみましょう。 これは、権利者の許諾を得ずに著作物を利用できる場合を規定している権利制限規定のひとつです。 但し書きについて、文化庁の見解を見てみると、 と、第35条

          著作権法第30条の4の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」について国際条約をもとに考えたこと

          著作権のないAI生成物に表現の自由が及ぶことは望ましいのだろうか?

          AI生成物は基本的には著作権はなく、創作意図及び創作的寄与があれば著作権が得られるというふうに言われています。(参考: 文化庁 AIと著作権  ) この記事では、前者の著作権がないAI生成物について、表現の自由で守られるべきなのかについて考えていきます。 広島AIプロセス等で国際的なルール作りの議論がなされている最中であり、生成AIと法律・憲法等の関係性については多くが検討段階にあると思われる現状を踏まえると、結論は出せないとは思いますが、原理に従って考えることは叶うでしょ

          著作権のないAI生成物に表現の自由が及ぶことは望ましいのだろうか?

          名誉声望保持権から画像生成AIについて考える

          私は法律に関して素人なので、この記事は私の感想をまとめたものにすぎません。 この記事を書くにあたり、「青山学院大学 学術リポジトリ AURORA-IR」の 「著作権法第113条第6項の意義と機能 : 著作者人格権侵害とみなす行為と名誉毀損」( https://www.agulin.aoyama.ac.jp/repo/repository/1000/11008/ )という論文を引用させていただきます。 これは2007年に書かれたものなので、当時の著作権法第113条第6項は現在の

          名誉声望保持権から画像生成AIについて考える

        ひょ男|note