住まいずの信念とは
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■(株)住まいず代表取締役会長、10代目 有村 吉孝 |
思いがこもらないものは、ものづくりではありません私が考える住まいずの経営理念はね、ちょっと言葉は良くないかもしれないけれど「人が面倒くさがることをやる」ということなんです。着工式、上棟式、引渡し式・・・いまの風潮からいくと「そんなの時間とお金の無駄だから、しなくてもいいじゃない」と言われてしまいそうなんだけど、「それじゃあ思いはこもらないよ」というのが私の言い分です。 着工式は家づくりに関わるすべての人が、「しっかりつくるぞ」と魂を込めるためのものだし、上棟式は土地の神様に工事の無事を祈ると同時に、これから住むことになる地域のみなさんとご縁を結ぶための大切な儀式なんですよ。そして引き渡し式は魂込めてつくった建物を、お施主様にきちんと引き継いでいただくためのもの。どの行事にも人の思いがこもっていて、それがあるからこそ大切に住み継いでいこうという気持ちが生まれるのだと、私は固く信じているんです。 |
子や孫のために50年かかって育てた木を活かしましょう
「自分の山の木で建てる」という取り組みを始めたのも、同じ思いから。
私の周囲には、話を聞いてみると山をもっている人がかなりおられて、本音では子や孫に渡してやりたいと思っておられる。でも今の工務店は製材所とつながりをもっていないから、山の木をどうすれば家が建てられるかがわからない。それで「買った方が安いですよ」とか「手間もかかるし面倒ですよ」と言うわけです。でもね、ここが大事な所だと思うんですが、木を植えたおじいさんの気持ちはどうなるんですか?木がそのまま放置されれば、おじいさんの子や孫を思う心もそのままでしょう?そういう状況を放っておいてはいかんと私は思うんです。
だからね、私は言うんです。「自分のために植えたんじゃないでしょ、子や孫のために50年かかって育てたんでしょ。その思い、伝えましょうよ」って。
そうして私が山を見て、伐採する木を決めて、運搬ルートも確保して、「これで建てられる」とわかると、みなさん本当に喜ばれます。泣き出す人もおられるくらい。私は自分にできることを、しかも仕事でしているのですが、それが泣くほど喜んでいただけるというのは、やはりものすごく感動しますよね。その感動があるからこそ、この取り組みを続けているのだと思います。
鹿児島の山に生かされ、人に生かされた先祖の思い
10代前の私の先祖はね、戦場から命からがら逃げてきて、姶良市の山の中で自給自足の生活を送っていたと思うんですよ。そんな中で山から受ける恩恵ははかり知れなかったことでしょう。山に行けば木の実やキノコなどの食べ物もあるし、小鳥や獣などを狩ることだってできます。火を焚く燃料、道具作りの材料、布を織るための木の皮や蔓、そして家の建材までが山にはあるんですから、文字通り宝の山だったはずです。
その、先祖が感じたであろう山への強い感謝の念は、私の血の中にいまも流れています。だから木を伐ったら絶対に無駄にしません。最後の最後まで使い切ります。山は私にとってのホームグラウンド。そこで生きているものは、草も木も鳥も獣もみんな仲間なんです。
もうひとつ、私の中に強くあるのは、地元が良くなるということへのこだわり。自分の仕事が、近隣の人に何らかの利益をもたらすことができないのなら、しても意味がないと思っています。地元の木を使って、地元の職人さんに腕を揮ってもらい、地元の皆さんと顔の見える関係で喜んでいただける家をつくる。これもきっと、鹿児島でたくさんの人に生かしてもらったご先祖様の思いが、私の体にしみついているからに違いありません。