「で、この状況はなんなんだ?」
俺はマリアと貸し切った運転手付きのリムジンの後部座席で二人仲良く並んで座っていた。
目の前には飲み口が二股にわかれたストローがささったジュースが一つだけ置かれている。
『何ってそれがマリアちゃんの望みのデートプランよ』
俺の右耳に装着されたイヤモニから長澤の声が聞こえてきた。
そう。俺は今まさにマリアとドライブデート中なのである。
「だからってなんでイヤモニなんかする必要があるんだよ」
リムジンに乗る直前、俺だけが長澤に呼び止められイヤモニを耳にむりやりつけられたのだった。
『だって佐倉あんたデートしたことないんでしょ。だからあたしたちがこっちから指示を出してあげるってわけよ』
長澤と水川はリムジンの後ろをタクシーでぴったりとついてきているようだった。
「お前らだってデートしたことないって言ってただろうが」
『女心はあたしたちの方がよくわかってるわ。大丈夫、大船に乗ったつもりであたしたちに任せなさいっ』
「あのな――」
「真琴様、せっかくのデートなのですから今はわたくしとの時間を大切にしてほしいですわ」
隣に座るマリアが頬を膨らませて言う。
「はいはい。わかったよ」
『はいは一回っ』
イヤモニから長澤の檄が飛んだ。
☆ ☆ ☆
「……そうしたらお母様がお父様になんて言ったと思いますか? あなた、それは頭にかぶるものではなく履くものですわよ、ですって。ふふふふっ」
「あー、そう。変わったお父さんなんだな」
「そうなんですのっ」
言いながらマリアは楽しそうにけらけらと笑っている。
俺とマリアはもうかれこれ三時間ほどドライブをしながら談笑を交わしていた。
さすがに同じ体勢でいるのも疲れてきたなぁと思った頃、
ぐぅ~~~。
とマリアの腹が鳴った。
マリアは恥ずかしそうにとっさに腹を押さえる。
『佐倉っ、今マリアちゃんのお腹が鳴ったことを上手くフォローしつつマリアちゃんをお昼ご飯に誘いなさいっ』
と長澤の声。
「は? なんだそれ――」
『いいから早くっ』
……まったく長澤め。
「えっと、マリア気がつかなくて悪かった、もう昼ご飯の時間だよな。ハンバーガーでも食べに行くか……ってマリアはハンバーガーは食べられないんだったっけか、悪い悪い」
「……ふふっ。真琴様、わたくしチーズバーガーは食べられませんがハンバーガーでしたら食べられますわよ」
「ん、そうなのか? じゃあ行こうか、俺すっごく腹減っちゃったよ」
「はいですわっ」
マリアは笑顔でうなずいた。
すると、
『及第点ってところね』
イヤモニから長澤の冷静な声が届いた。
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