文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について(素案)」については、2月12日までがパブコメ期間ですが、新聞協会から意見が出ましたね。
pressnet.or.jp/statement/broa
内容的には、ある意味これまでの新聞協会のスタンスを貫いている訳ですが、特に気になった点についてコメントを。
▼ 「ただし、当協会が求めている法改正には全く触れておらず、十分とは言い難い。」
→素案は現行著作権法上の解釈指針を示すものなので、当たり前では。
▼ 「新聞社等にとってデータベースやそれに含まれるコンテンツは、どのような形式で格納されているとしても貴重な知的財産であること、すでに広く市場が形成されていることに変わりはなく、その無断利用を防ぐのは当然の権利である。」
→報道機関の本音が出ちゃっていますね。
素案は、あくまで① 報道機関等が提供しているデータベースが、「情報解析のためのデータベース著作物」である場合において(通常の記事データベースは「情報解析のための・・・」にはあたりません)、② 個々のデータを収集する行為によって、当該「情報解析のためのデータベース著作物」の創作的表現部分を利用した場合に、③当該「情報解析のためのデータベース著作物」との関係で30条の4ただし書に該当する可能性がある、と言っているだけです(実際にはその可能性はないと思いますが)。
新聞協会の上記主張は、「自社が提供してるDBがDB著作物に該当しなくても権利行使可能」「DBに含まれている個々の記事の複製についても権利行使可能」と言っており、意図的なのかよくわかりませんが、素案の内容とは全然違います。
ただ、この主張を見ると、素案が現在の内容で確定した場合、報道機関による過剰な権利行使と、AI開発への萎縮効果が起こることは容易に想像できます。
▼ 「今回、素案で現行の著作権法に関する解釈が示されたことによって、日本での生成AI開発が遅れることを懸念する声もみられるが、説得力ある主張とは到底言えない。国内外を問わず、生成AIの開発事業者やサービス提供事業者が権利者から許諾を得て、適切な対価を支払ったうえで著作物を正々堂々と利用すればいいだけの話である。」
→これ、誰に対するセリフなんでしょうか。
「適切な対価を支払ったうえで著作物を正々堂々と利用すれば良いだけの話である」って言っていますが、日本著作権法30条の4にしたがってデータの収集を行っているAI開発事業者は「正々堂々と」データを利用していると思いますけどね。
そういうAI開発事業者に対してのセリフなのであれば、新聞協会のこの主張は、通常のビジネスをしている主体に対して、法的な権利もないのにショバ代を払えと言っているように感じます。
報道機関はここまで言うのであれば、AI開発事業者に対してバンバン訴訟を起こして、ちゃんと司法判断を求めるべきじゃないですか。
それがまさに「正々堂々」とした態度だと思います。
諸外国ではNYTをはじめとして「正々堂々」と訴訟を提起しているわけで、日本の報道機関はそれを見習うべきではないでしょうか。
ということで、みなさん、ちゃんと意見出しましょう。
pressnet.or.jp/statement/broa
ちなみに、私は、ここ2,3週間ほどパブコメ対応にかかりきりです。
多数の大手事業者や研究機関、個人の開発者と意見交換をしていますが、AI開発者・AIサービス提供者の、素案の内容に対する不安や危機感は非常に大きいです。
それらの事業者も意見提出を予定しており、最終的にどのような内容で素案が確定するのか、非常に注目されます。
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