「ひょ……」
「おっと、大丈夫、夜滝ねぇ?」
ゲートは微妙に段差があったりする。
地面ピッタリに出ているのではなくて少しだけ地面から離れていたりするので油断すると引っかかったりする。
走り抜けてきたために最後に少し足が引っかかってしまった。
倒れかけた夜滝を圭がサッと支える。
「ありがとねぇ」
「村雨さん!」
ゲートの外も少し変化を迎えていた。
まだ重恭は無事であった。
そしてトラックの向こう、ゲートがある場所の反対側の方に覚醒者たちが来ているのが見えた。
最初にあった護衛の覚醒者が呼んでくれた助けであった。
まだ到着したててであるようだが圭たちの後ろにあるゲートも閉じた。
これ以上ゴブリンも出てこないのならあとは倒すだけである。
「やるぞ!」
圭たちもゴブリンを倒し始める。
大王ゴブリンに比べれば簡単に倒せる。
さらに増援も駆けつけてあっという間にゴブリンは倒されたのであった。
「ケガ人を運べ! 早くするんだ!」
「焦るほどのケガ人がいたのかね?」
圭たちは一切ケガもなく戦いを終えられた。
その一方で助けに来てくれた覚醒者側の方が騒がしい。
担架に誰かが乗せられて運ばれていくのが見えた。
かなりの出血が見られて危険な状態なようである。
ゴブリン相手にそんな大ケガを負うような人がいたとは思えず夜滝は首を傾げた。
「彼は斎藤君だよ」
「斎藤?」
「トラックの運転手だ」
「ああ……えっ?」
そういえばいないなと思った。
ゲートに入る時にはトラックの上でうずくまっていたのにゲートから出てきた時にはいなかった。
「私の責任だ……」
「何があったんですか?」
「実は……」
重恭はため息をつきながら何があったのかを話した。
「自業自得じゃないですか」
G級の斎藤はトラックの上で戦うこともしないで怯えていた。
圭たちがゲートに入った後からゴブリンは出てこなくなり、圭たちも頑張っているならとなんとか持ち堪えていた。
そしてようやく助けが訪れた。
これなら助かったと思った瞬間に斎藤の浅ましさが顔を出した。
パニックに陥っていた斎藤は我先に助かろうとした。
このままではゴブリンが多くて助けのところまでいけないと判断した斎藤はもう1人の護衛を囮にしようとした。
登ろとしているゴブリンを切り付けている護衛を後ろから押して突き落とした。
そしてその間に助けのところに行こうとしたのだ。
けれどトラックを囲むゴブリンをそんなことだけでは気を引ききれなかった。
助けしか見えていない斎藤はすぐさまトラックを飛び降りたのだが、それはゴブリンたちのど真ん中だった。
重恭は落とされた護衛をなんとか引きずり上げて助けている間に斎藤はゴブリンに右腕を噛みちぎられたのであった。
助けの覚醒者たちのおかげで一命は取り留めたものの斎藤のケガの程度は重たかった。
圭も呆れてため息しか出ない。
それなりに早くゴブリンは倒せたが在注のヒーラーでもいない限りは右腕は絶望的だろうと思う。
「シゲさんのせいじゃ……」
重恭はひどく落ち込んでいた。
「しかしあの社長がなんというか……護衛として雇われているのに2回も護衛対象を守れなかった」
ヘルカトの時は重恭では到底厳しいし、今回は斎藤が明らかに悪い。
だが命を投げ出しても守れとクソ社長なら言うだろうなと圭も重恭も思っていた。
重恭の努力など関係ないように罵倒する姿が目に浮かぶ。
「今度こそクビかな……」
「シゲさん……」
圭も重恭にかける言葉が見つからない。
人のクビを勝手に切った社長が自分の仕事にねじ込むほど大事にしている甥がケガして何もしないはずがない。
圭の事件で圭というか、トラックも守れなかった重恭に対する社長の態度は最悪だった。
ただ仕事のやり方を知っているのが重恭で教える人が必要だったから残されたというだけの話なのである。
「いや、いいんだ。元々転職しようとは思っていた。時間を見つけては勉強して資格も取ったんだ。どこかで転職活動をしようとも考えてたから良い機会だ。
こんなおじさんを雇ってくれるところがあるかは別としてな」
「なんの資格取ったんですか?」
「そんな大したものじゃないさ。こうした仕事をする前は普通の会社の会計事務の仕事をしていたんだ。そうした仕事につけないかと事務系やお金の扱いに関する資格をな」
「へぇ……」
「もっと実用的な資格も考えていたが時間を取るのも難しくてな……」
「……シゲさん、一つ提案があるんですけど」
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後日重恭はクビになった。
殊勝な態度をとって謝罪を重ねればまだクビにならない可能性もあったけれど重恭は最善を尽くし、今回斎藤がケガをしたのは自らの行いのためであるという態度を崩さなかった。
むしろもう1人の護衛の味方をして護衛を危険に晒したとして訴訟まで視野に入れていると言い放った。
重恭はともかくもう1人の突き落とされた護衛の方は斎藤を訴える権利もあるだろう。
クビになったというかクビになりにいったようなものである。
気が短く激情タイプの社長はあっさりと重恭のことをクビにした。
それで自分の方が不利になることを全く理解していないようだった。
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