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第四章
怖い女性たち1

「うーわ、こんわぁ〜」


 例のよって夜滝の部屋。

 今日はいつものメンバーに加えて和輝と優斗もいた。


 つけっぱなしのテレビではワイドショーがやっている。

 その内容はなんとピンクダイヤモンドについてであった。


 意外とピンクダイヤモンドはヤバかった。

 ピンクダイヤモンドとしては新設のギルドであるがその前から活動していた。


 以前はD級の男性が1人いて、その男性を中心としたギルドでやっていたらしい。

 サークル的なノリで覚醒者をやっていたのであるがある時実際に事故が起きてしまう。


 ボスと戦っている時のことで共同して攻略していた覚醒者チームがやられてしまったのだ。

 なんとかボスを倒してゲートを攻略したピンクダイヤモンドであったが女性ばかりでやられた覚醒者を運ぶこともできない。


 真っ当に活動していたので外に出て覚醒者協会に連絡をと思ったのだけどその時のゲートは崩壊するのが早かった。

 せめて遺品でもといくつか装備品だけを持って外に出た。


 そして覚醒者協会に連絡したのだけど決して悪いことをしていないピンクダイヤモンドはちゃんと起きたことを説明した。

 もちろんお咎めなんてあるはずもなかったのだけど持ち帰った装備品のことも聞かれることがなくてそのまま話は終わってしまった。


 一応ゲートは攻略したわけで本来共同していた覚醒者と分け合って支払われる攻略成功金はピンクダイヤモンドに全て振り込まれた。

 ゲートから持ち帰った素材もピンクダイヤモンドが独り占め。


 そしてさらには持ち帰ったはいいものの引き取られなかった装備品も手元に残しておきたくなくて売り払ってしまった。

 全てをピンクダイヤモンドが手に入れることになった。


 いつもよりもはるかに多い金額。

 それがピンクダイヤモンドを化け物に変えたのである。


「金って……怖いな」


 ワイドショーの番組が用意したボードなどでわかりやすく説明が進んでいく。

 大きなお金が手に入ってしまうことがきっかけだった。


 カレンはグッと眉をひそめた。

 お金が欲しいという気持ちは分からなくないがお金のために人まで殺すという気持ちは理解できない。


「このレベルの覚醒者がこうしたところで高が知れているというだろうにな……」


 温かいお茶を飲みながら和輝も首を振る。

 さらにピンクダイヤモンドはそこからバレないように時々一緒に入った覚醒者を消して装備品を奪ったり、相手のミスを無理矢理指摘して多くお金を受け取るなどのことをしていた。


 不意をうって丸ごと消してしまったこともある。

 途中遠藤のスキルも覚醒してさらに犯罪行為は加速した。


 上手くいって同じ等級の覚醒者に比べれば稼いでいた。

 そうして多くのお金をせしめていたのだがピンクダイヤモンドに不協和音をもたらす出来事が起きた。


 ピンクダイヤモンドの1人と唯一の男性が婚約を発表したのだ。

 サークル的な緩い集まりであったが実際の中身としてみんなその男性に対して大なり小なり気持ちがあった。


 そんな中で抜け駆けのような婚約発表だったのである。


「うわ……一気に女のバトルになったねぇ」


 興味もないと思ってみていたけどピンクダイヤモンドの歴史が思っていたよりも波乱に満ちていてみんなテレビに見入ってしまう。

 嫉妬とは恐ろしい。


 口では祝福しながらもピンクダイヤモンドの中では確実に良くない感情が頭をもたげていたのだ。

 また覚醒者たちを不意打ちして倒したのだが仕留めきれずに反撃を喰らって男性が剣で切られてしまった。


 婚約者である女性は男性を助けようとしたのだけど他の女性たちは助けようとしなかった。

 それどころか婚約者である女性を手にかけた。


「うそー!」


「さいっていだな……」


 この時に残ったメンバーがピンクダイヤモンドとして再始動し始めたのである。

 とんでもない話に波瑠から悲鳴が上がって、カレンも驚愕の表情を浮かべる。


 ピンクダイヤモンドは想像していたよりも遥かにぶっ飛んだ女性の集まりであった。


「私たちじゃなきゃ危なかったねぇ」


 正しい実力を隠していた夜滝たちだったからピンクダイヤモンドを倒すことができた。

 そうでなきゃもっと被害が出ていたかもしれないと夜滝は思う。


 こうしたピンクダイヤモンドの話はピンクダイヤモンド自身から出たものであった。

 自分の罪を軽くしようと他の女性たちをあっさりと売って白状したのだ。


 ただし白状したのは4人全員であったためになんの意味もなかったけれども。


「女性って怖いね……」


「うむ、覚えておけ優斗」


「…………少しだけだけど村雨さんも似たような……」


「優斗、気づいちゃいけないこともあるんだぞ」


「村雨さん、刺されないよね?」


「……分からん」


「お爺ちゃん……」


 ピンクダイヤモンドの話を聞きながら優斗は姉であるカレンのことをチラリと見た。

 圭がやっていることは決してお遊び感覚のサークル的なことではないが表面的な状況を見るとピンクダイヤモンドと少し似たところがある。


 圭が刺されるなんて思わないけどカレンも含めて圭に対して好意を抱いているのは優斗から見ても分かる。


「まあここにいると女性は強い。圭が誰かと付き合うとなったらきっと応援してくれるだろう」


「……そうだね」


 女性陣は大丈夫かもしれない。

 むしろ圭の方が1人に選ぶことなんて出来ないのではないかと優斗は思う。


「まあお姉ちゃんを泣かせないなら……」


「お前さんも大概カレン想いだな」


「そりゃあね」


 圭がカレンを泣かせるなら優斗も容赦をしない。

 自分よりも父親みたいだなと思って和輝は笑う。

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