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第三章
閑話・遠き地にて

「マティオのやつが捕まっただと!」


 エルボザールファミリーのステイアン・エルボザールはデスクを殴りつけた。

 信じて送り出した甥っ子が日本で逮捕されたという知らせを聞いてステイアンは感情を抑えきれない。


 しかもよくよく話を聞くと悪魔教同士の争いの中で日本の警察組織に捕まったのだと聞いた。


「卑怯なことをしやがって……」


 抗争の途中に割り込んでくるなど卑怯なマネをされたからマティオが失敗して捕まった。

 ステイアンは怒りに震えながらイスに座り、気分を落ち着かせようと葉巻に火をつけた。


「それで?」


「マティオのやつは欧州連盟に引き渡されるそうです。

 調べによると欧州連盟覚醒者協会で取り調べを受けた後コジューシュ特別刑務所に移送されるそうです」


「取り返そうか?」


「今詳細に調べて人を集めているところです」


 エルボザールファミリーは世界がこんなことになる前は大きな勢力を持っていた。

 しかし世界にモンスターが溢れて覚醒者が出始めてエルボザールファミリーは力を失った。


 影響が無くなり、覚醒者をいち早く抱えた他の組織に勢力圏を奪われてしまった。

 そんな時に悪魔の力を手に入れた。


 そこからまた勢力を盛り返してようやく他の国にも手を伸ばそうとしていたところにこれであった。


「我らの主は何と言っている?」


 完全に作戦は失敗。

 マティオは中でも悪魔の寵愛を受ける覚醒者で捕らえられたことは大きな痛手である。


 悪魔が怒っていないかどうかもステイアンは心配をしていた。

 今ここで悪魔に見放されれば状況はさらに悪くなる。


「それが……ミゲールさんによると怒ってはいないそうです。

 むしろ面白いものが見えたと機嫌が良かったそうです」


「面白いものが見れただと?」


 マティオが捕まったことが面白かったのかとステイアンは顔をしかめた。

 自分の使徒が捕らえられているのにそれを面白いなどと思うなんて悪魔は理解できないとため息をつく。


「ただしマティオさんは取り戻せと」


「なにぃ?」


 訳がわからない。

 マティオが捕らえられたことには怒らず面白い事などと言うが一方で捕らえられたマティオは取り戻せとも言う。


 どの道取り戻すつもりではあったがあまりにも悪魔は気まぐれである。


「マティオが捕われたことは他には徹底的に隠すんだ。

 もし他にバレたらその隙をついてくる奴らがいるかもしれない」


「分かりました」


「アニキはどうしてる?」


「マティオさんを取り戻すと息巻いていましたので何人かでなだめています」


「まあ、そうなるよな」


 ステイアンは頭を抱えた。

 自分の知る兄の性格ならばなんとしてもマティオを助け出そうとするはず。


 しかし相手だってそうしたことは想定して守りを固めているはずで簡単には返してくれないだろう。


「エルーガ姉さんを呼べ。

 アニキを抑えられるのはあの人しかいない」


「そのようにいたします」


「今回襲撃した悪魔教……こちらではゴルトミュンツェだったかはどうだ?」


 日本で言えば拝金教、あるいはその中枢組織である黒月会。

 欧州連盟の方ではゴルトミュンツェとなる組織がそれに当たる。


「今のところはあまり動きは……

 ただ監視に当たっていた中で連絡が取れなくなった人もいるのでなんとも」


「こちらの仕業だとバレたのか?」


「向こうの国では大々的にニュースになっているのでもしかしたらそちらから知られた可能性も。

 しかしゴルトミュンツェはこちらでは表向きまともな金融会社となっているのですぐに行動を起こしてくることもないと思われます」


「ゴルトミュンツェに備えるためにもマティオは早く取り戻さねばならないな」


 ステイアンは深いため息をつく。


「あとはカージン区域で……」


「殺せ」


 ステイアンは葉巻のケムリを吐き出しながら冷たい目で答えた。


「皆殺しにしてみせしめにしろ。

 こうすればしばらく他も大人しくするはずだ」


「分かりました。

 そのように処置いたします」


「ニホン……いつか覚えてろよ……」

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