「3……2……1、今だ!」
圭がカウントダウンをして夜滝が魔法を放つ。
水の槍がイービルグリーンアイに飛んでいき、同時に圭たちも飛び出すようにイービルグリーンアイに向かっていく。
「チッ、防がれたか!」
魔法が届くよりもイービルグリーンアイが気づく方が早かった。
翼をクロスさせて水の槍を防御する。
「来いっ!」
カレンの魔力による挑発もあって真っ直ぐに突っ込んできたイービルグリーンアイに対して盾を構える。
縦からわずかに顔を出して目を見すぎないようしながら位置を確認する。
「えっ……」
「カレン!」
イービルグリーンアイが盾に激突する。
カレンは腰を落として押し負けないようにしながらも柔らかく衝撃を受け止める。
わずかにカレンも押されたけれど上手く体当たりを防ぎ切った。
しかしイービルグリーンアイの攻撃はそれでとどまらなかった。
グルリと縦に一回転。
下から強い衝撃を受けて盾が飛ばされる。
なんとか手は離さなかったけれど完全にカレンの前は無防備に開いてしまった。
大きなグリーンの目がカレンを見つめる。
「あ、足!?」
情報があるとあるといってもそれは先に攻略した覚醒者たちの分析によるものでしかない。
ほとんどの場合一度倒しただけのものであるので何回も戦う通常モンスターと違って中ボスの分析は不完全なものになりがちである。
一度の戦闘では取らなかった行動だって相手が変われば行うこともある。
今回イービルグリーンアイはカレンの盾を蹴り上げた。
一応イービルアイにも足というものがあった。
それは外からもほとんど見えないぐらいの短いものでイービルアイがそれを戦いに使うこともなかった。
もちろんイービルグリーンアイにも足はある。
イービルアイとの違いはイービルグリーンアイの方が体が大きいので足もそれなりに大きいということだ。
まさかそれを攻撃に利用してくるだなんて誰も思わなかった。
「うりゃあああ!」
カレンが危ないと思って圭は助けに走った。
けれど誰よりも先に動いたのはカレンだった。
メイスを振り下ろしてイービルグリーンアイを殴り飛ばした。
「圭、波瑠、今だ!」
何が起きたのかみんな理解できていなかったがカレンの攻撃によって大きな隙が生まれた。
いざとなったらカレンを助けるつもりで剣を抜いていた和輝が指示を飛ばして圭もカレンの横を抜けてイービルグリーンアイに向かう。
「やっ!」
先に接近した波瑠がナイフを振る。
眼球を浅く切り付けられてイービルグリーンアイが悶える。
大きな眼球は武器であると同時に弱点でもある。
「くらえ!」
痛みでブルブルと震える大きな目に圭が剣を突き立てる。
こうして瞳を傷つけてしまえば状態異常は使えなくなるので脅威度は大きく下がる。
「夜滝ねぇ!」
「それきた、任せたまえ!」
いくつもの水の玉が空中に浮かび上がる。
夜滝が杖を振ると水の玉が飛んでいき、空中で刃に形を変える。
ブンブンと体を振って剣をどうにかしようとしているイービルグリーンアイを水の刃が切り裂く。
「よし!」
デロリと変な汁を流してイービルグリーンアイが動かなくなる。
少し待ってみても動きはないので完全に倒したと確認できた。
「カレン、大丈夫か?」
イービルグリーンアイよりまずはみんなの無事を確認するのが先になる。
ガッツリとイービルグリーンアイと目があったカレンの体調を確認する。
中ボスでもあるしイービルアイよりも状態異常を引き起こす力は強いはず。
なのにカレンはピンピンとしていた。
「うん、全然平気!」
「平気ならそれでいいんだけど……なんでだ?」
圭は首を傾げる。
カレンも魔法タイプではない。
魔力がそんなに高くなくてイービルアイだって抵抗しきれないはずである。
なのにカレンは状態異常を引き起こさないばかりかすぐさま反撃に転じて見せた。
抵抗するにしたってすぐに動けない。
「スキルは違うし……才能、にそうした抵抗力でもあるのかな?」
その原因を考えてみる。
魔力が高いから抵抗できたのではない。
ならば才能かスキルの影響かと思った。
けれど才能も物理的な防御力は高めてくれるがこうした状態異常に効くのか不明である。
可能性としてはありうる。
「装備……盾ではないか?」
和輝は違う予想をしていた。
再生力が高く体力値にプラスの効果ももたらしてくれるカレンの不屈の再生力を持つ肉体にさらに状態異常耐性までついているとなると流石に強すぎる。
優秀なスキルである可能性も否定はできないが再生力が高いだけでも強力なスキルであるのにそこまで効果が高いのは考えにくい。
そこで和輝は装備による効果なのではないかと考えた。
カレンが着けている装備は基本的に工房で作られたもの。
特別に状態異常に抵抗力を持たせる装備じゃないと知っている。
だからこうした効果を持つものといえば盾。
圭がカレンにプレゼントしたあの盾ではないかと推測していた。
「どこかで魔を払うとか言っておらんかったか?」
「あー……そういえばそんな説明もしたかもしれません」
「イービルアイも一種の悪魔系モンスターだと言われている。
イービルアイの魔力による影響を盾の力によって排除することが可能なのかもしれない」
「なるほど」
他に思い当たるような理由もない。
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