さっさと5回目の儀式に出て終わりにしたいのだけど向こうの事情もあるのでそうもいかない。
次出られる儀式まで日が空くことになってしまった。
最近休みのたびにどこかに行く圭を夜滝は疑いの目で見ているしそろそろまたレベル上げもしたいと思っていたのでまたモンスター狩りをすることにした。
レベル上げも兼ねて塔に行ってみたいという波瑠の意見もあったのだけど塔に行くためにはまだちょっと制限があった。
そのために今回は自由狩猟特別区域に行こうと思っていたのだけどちょうど良さそうなゲートの1日攻略権が売られていた。
「それでー?」
「休みのたびにどこ行ってんだ?」
ということでゲートまでやってきたのだけど圭は女性陣に詰められていた。
圭が休みのたびにどこか行っているということは夜滝から波瑠やカレンに伝わっていた。
ゲート前まで来てしまえばもう逃げることもできないので夜滝たちに囲まれて圭はどこに行っているのだと質問責めにされていた。
当然ながら言えるはずがない。
怪しい悪魔教の集会に出ているだなんて。
今は黒月会でもかなりピリついてきていると聞いているので話すだけでも危険に巻き込まれるかもしれない。
「どこって……ちょっとこう……用事があって」
「毎回毎回私にも言えないような用事があるのかい?」
ここまで特別隠し事もなくやってきた。
このことの弊害というか、何も言わないことが非常に大きな疑問を呼んでしまっていた。
「……何か危ないことに首を突っ込んでいるんじゃないのかい?」
心配と言ってくれない悲しみのようなものが混じった夜滝の目に圭は罪悪感を覚える。
「……今は言えないんだ」
「圭……」
「でも信じてほしい。
全部終わったらちゃんと話すから」
「圭さん……」
「圭……」
危ないことに少しでもみんなは巻き込みたくない。
圭はみんなの目を見て答えた。
「でもそんなんじゃ……」
「これ、やめんか」
「爺さん……」
黙ってその様子を見ていた和輝が口を開いた。
「男には何かやらねばならない時がある。
圭とは短い付き合いだがウソをついたりする人ではない。
言えぬというのなら何か理由があるのだろう」
「か、和輝さん……」
目を見ればある程度はわかる。
色恋沙汰を誤魔化すような雰囲気ではない。
何か目の奥に決意のようなものが見える、そんな感じを和輝は受けていた。
誰にも言えずやらねばならないことがある。
何かは知らないが何かと圭は戦っているのだ。
「古い考えだが旦那を信じて待ってやれるのも良い女というものだ。
困ったら圭から言うだろう。
信じてやれ」
「べ、別にそんなに疑ってもないしねぇ」
「んー……まあ、信じてあげるのも大事、なのかな?」
「私は出来る女だからな、信じてるぞ」
和輝に諭されてみんながバツが悪そうに圭から離れる。
落ち着き払った和輝にそう言われると少し神経質になりすぎたかもしれないと思わされる。
信じてやれるのも良い女だと言われればなんだかこれ以上詰めにくい。
「女性って怖いですね」
「まあ心配してくれるのも愛されているという証拠だ。
何事もいきすぎてもいけないというだけの話だ」
「……まさか姉さんまでとは思うけど」
「カレンは意外と婆さんに似てるぞ。
俺もゲートに挑んでいたからよく心配をかけたものだ……」
やっぱり早くこのことは終わらせなければいけないなと圭は思ったのであった。
ーーーーー
気を取り直してゲートに入る。
「ここはE級ゲートで出てくるモンスターはイービルアイ。
デカい目玉に翼が生えたようなモンスターで目玉に見つめられると体が麻痺したり錯乱状態に陥るなどの状態異常になるかもしれない」
事前に渡されたゲートの情報を改めて確認しながら周囲の捜索を開始する。
ゲート中は洞窟のようになっていて、天井に光る石のようなものがはめてあって意外と明るい。
ゲートの所有者である企業はゲートをボス前まで攻略を終えていて、まだゲートのブレイクまで時間があるから他の覚醒者に攻略権を貸し出していた。
そのためにゲート内部の地図や出てくるモンスターの詳細まで提供してくれていてとてもありがたい。
「もう少し奥に行くと吸血コウモリが出てくるみたいだな」
先ほどまでは圭に対して疑問でいっぱいだったけれどゲートの中では油断などできない。
みんなもそれなりに経験を積んで来たので気持ちをしっかり切り替えてモンスターを警戒している。
「あっ、なんかいるよ!」
ゲートの入り口となっている部屋から適当な道に入り進んで来た。
小部屋のように広くなっているところに丸いものが見えた。
「あれがイービルアイだな」
真っ黒な丸いものは圭たちの足音を聞きつけて振り返った。
大きくみるとコウモリのようであるのだけど口などの器官はなく一面に大きな目だけがある。
「みんな、準備だ!」
イービルアイが翼を動かして空中に飛び上がる。
「行くよー!」
そんなに速度は速くなさそう。
いけそうだと思った波瑠が前に飛び出して行った。
「波瑠、目を見ちゃダメだ!」
分かっているけど体の大きな部分が目なのだ。
しっかりと敵の位置を見極めようとした波瑠はイービルアイと目が合ってしまった。
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