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第三章
麻痺ん棒3

 毒の持続時間や再度毒を与えた時に毒の効果を延長できるかなど調べることは多い。

 とりあえず1体はそのまま倒して解体し肉を取る。


 モンスターは今や食料として使われるものもある。

 毒で倒してしまうと肉も毒で汚染されてしまうので基本的には食べられないのだがこの神経毒は処理によって取り除くこともできる。


 どれだけ肉に毒が残っているのか、あるいはちゃんと処理出来るかのチェックのためにも肉を持ち帰る。

 ちなみにワーウルフの肉は筋張っていて固く、美味しくないらしい。


「およそ1時間……と言ったところかね」


 ワーウルフから離れて観察をしていたら1時間ほど経ったところでワーウルフが動き始めた。

 毒の効果が切れてきたようである。


「どうしますか?」


「1体は倒して、もう1体は再度麻痺ん棒で刺してもらえるかい?」


「了解しました」


 完全に動けるようになる前に市原たちがワーウルフを仕留める。

 もうなんとか起きあがろうとしているワーウルフにも市原が麻痺ん棒を突き刺して攻略チームで囲んで警戒する。


 全身をブルブルと振るわせながらワーウルフは立ち上がり、弱々しく腕を振る。

 倒したり傷つけたりすれば実験の結果に影響を与えてしまうかもしれないので囲んで逃さないようにしながら回避に専念する。


 そしてまた力が入らなくなったようにふらふらとし出してワーウルフが膝をつく。

 それでもまだ体を支えられなくて地面に倒れる。


「今度は10分近くかかったねぇ。

 すぐだと耐性ができて効果が落ちるのかな?」


 最初は数分で動けなくなっていたのに一度起きたワーウルフはふらふらとしながらも10分ほど動けていた。

 急に槍が出す毒が劣化するとは考えにくく、ワーウルフの方に毒に対する耐性などが出来て効きにくくなっているのだと考えられた。


 最後のワーウルフが動けなくなっている間に先に倒された2体目のワーウルフの血や肉などの検体を採取する。


「やはり毒が効きにくくなっているねぇ。

 こうした特徴がワーウルフによるものか、他のモンスターにも共通するものか調べる必要があるねぇ」


 最後のワーウルフも30分程度で動けるようになった。

 こうして時間をかけながら実験を繰り返し、データや検体を集めていく。


 当然毒の効果を確かめたりするのに1日では終わらない。

 数日をかけてワーウルフを相手に毒を確かめる必要がある。


「すいません!」


「あなたたちは誰ですか?

 攻略中のゲートですよ」


 そろそろデータも取れたしワーウルフ相手の実験は終わりだなと思っていた。

 圭と夜滝はゲートを出て攻略チームはそのままボスを倒してゲートを閉じる予定だった。


 ゲートに向かっていると外からゲートの中に人が入ってきた。

 他のチームが攻略している最中にゲートに乱入するのは御法度の行為。


 市原たちは素早く武器を抜いて警戒する。


「覚醒者協会の者です」


 ゲートに入ってきた男は内ポケットから手帳を取り出して見せた。

 警察手帳のように身分を示してくれるものでそれを見て市原も武器を下ろす。


「お騒がせしてすいません。

 早急にこちらから避難していただきたくて」


「避難ですか?

 何かあったのですか?」


「あるゲートの攻略に失敗いたしまして、そのままゲートがブレイクを起こしてしまいました。

 ここからそう近いわけでもないのですが定められた避難範囲にここのゲートも入っておりまして」


「そうですか」


 どうしても今攻略しなければならないものでもない。

 責任者である夜滝も当然避難に同意してゲートを後にした。


『こちらブレイクを起こしたゲートです。

 ご覧のようにモンスターがゲートの中から出てきています』


 車の中で圭はブレイキングゲートの中継を見ていた。

 飛行型のモンスターでないのでヘリを飛ばして上空からゲートの様子を撮影している。


 ブレイクを起こしたゲートは圭たちが攻略していたのと同じC級で大きなナメクジのようなモンスターが出てきていた。


『あっ、誰かが来ました!

 覚醒者のようです』


 カメラがゲートからターンして走ってくる数人の人を映した。


『あれは……私の見間違いでなければヴェルター・ギースラーさんじゃないですか?』


 ヘリの上からでは遠目で分かりにくい。

 カメラがズームしていって先頭を走る金髪の男性の顔がようやく見えた。


 ヴェルターである。

 なんだか最近よく見るなと圭は思う。


 スーツ姿のヴェルターはどう見ても準備をして駆けつけたようには見えない。

 ナメクジが上から押しつぶすようにヴェルターに襲いかかってカメラから姿が見えなくなる。


 次の瞬間ナメクジの体が弾け飛ぶ。

 拳を振り切った体勢のヴェルター。


 ナメクジを殴って弾け飛ばしたのである。

 ヴェルターの筋力値と魔力値が高かったことを圭は思い出す。


 武器を持たなくてもそれだけのステータスがあればC級モンスターなど一捻りであろう。


「強い……」


 一緒に走ってきた人たちも覚醒者のようであるがやはりヴェルターの力は周りに比べて頭一つも二つも飛び抜けている。

 RSIに帰ってくる頃には要請を受けた覚醒者や覚醒者協会の人たちがついて事態は終息に向かっていた。


 ネットでも真っ先に駆けつけたヴェルターを称賛する声が上がっている。

 なんでこんな人が悪魔教に。


 そんなことを思わずにはいられなかった。

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