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第三章
麻痺ん棒1

「あっ……」


 スマホでニュース記事を流し見しているとふと覚醒者のことについて書いたものが出てきた。

 ヨーロッパの覚醒者との交流を深める目的でいくつかのゲートをそれぞれの地域で攻略するというものでトップの画像には手を振って記者に答えるヴェルターが写っていた。


 ちょうどインタビューに答える動画もあったので再生してみる。

 当たり障りのない感謝や今後の展望について話しているヴェルターは日本語がかなりうまい。


 けれどところどころまだ片言になっていて、そうしたところが日本に慣れようとしてくれていると好感を呼んでいるらしかった。

 声を聞く限りでは似ている。


 儀式の時に司祭長を務めていたヴェルターの声と動画のヴェルターの声はそっくりだと思った。

 やっぱり拝金教のヴェルターと欧州連盟の大使であるヴェルターは同一人物なのだ。


「珍しいものを見てるねぇ」


 夜滝が圭の見ているスマホを覗き込む。


「どうにも関東にあるブレイキングゲートをヨーロッパの覚醒者と協力して攻略して、逆に向こうのブレイキングゲートもこちらの覚醒者が協力して攻略しにいくみたいだね」


「実はウチの会社にも協力要請が来ているんですよ」


「そうなんですか?」


「ええ、ウチのチーフ含めて数人の小規模チームを派遣する予定らしいです」


 車を運転している市原信之介がチラリとバックミラーで圭たちのことを確認した。

 圭たちは今車で移動している。


 今日はRSIでのお仕事で黒い袋などを頭に被せられてはいない。

 移動の目的はゲートで麻痺ん棒の実地調査をするためであった。


 捕獲してきたモンスター相手にはしっかりとした有効性を見せた麻痺ん棒であるが実際戦闘の中で使うのには勝手が違う。

 動いている時に毒が出るか、毒がちゃんと効くかの他にも武器としての扱いやすさや耐久性なども実戦で確認するのだ。


「特別手当が出るので僕も行きたかったんですけどね。

 なんせもうすぐ子供が産まれるので」


「そうなのかい」


 同行してくれているチームはいつもの捕獲チームではない。

 捕獲チームで強いのはC級の小橋や大竹なのであるが2人とも魔法タイプでなく魔力が必要なC級に達していない。


 そのためにより強い人の強力が必要となる。

 なので今回第二攻略チームというチームであった。


 捕獲チームがモンスターの捕獲を主に担当するのに対して攻略チームはゲートの攻略を主に行うチームである。

 捕獲チームよりもより強さが求められるチームであり、運転をしてくれている市原は何とチームリーダーでB級覚醒者でもあった。


「なんでもゲートの攻略には大使であるヴェルターさんも参加なされるそうですね。

 向こうの方でもA級覚醒者として有名なのに親善のために大使までやってこうしてゲート攻略にも乗り出して、尊敬できる人ですよ」


 ヴェルターの人気は高い。

 端正な容姿をしていながらA級という高等級覚醒者。


 人格者でもありながら欧州連盟と覚醒者協会の親善のための大使ともなっている。

 日本が好きだと公言していることもあって日本での好感度も高かった。


「……ふふ、私にとっては圭の方がカッコいいぞ?」


「んん……ありがとう、夜滝ねぇ」


 少し渋い顔をしている圭に夜滝は冗談を飛ばす。

 ただ少し耳が赤くなっていることに圭は気がついていない。


 夜滝も圭がどうしてそんな顔をしていたのか知る由もない。

 やっぱりかなりめんどくさそうな相手だなと圭は思う。


「もうすぐ着きますよ」


 そうして雑談しているとゲート近くまでやってきていた。


「少し待っててください」


 道路が封鎖されている。

 近くにゲートがあるために一般人が入らないようにしているのである。


 もちろん今回圭たちはゲートを攻略するために来ているので入れない理由などない。

 車から降りた市原が封鎖をどけて中に入っていく。


「あれがゲートですね」


 封鎖から走ること程なくして道から見えるところに青く渦巻くゲートが見えてきた。

 封鎖されているので交通はない。


 そのままゲートに近い道にそのまま車を停める。

 圭たちが乗った車の後ろにももう一台。


 こちらには攻略チームの人たちが乗っている。

 車から降りてゲートに入る準備を進める。


 調査に利用するのはC級のゲート。

 本来ならもうちょっと弱い等級のところから試していきたかったが近くでちょうどいいのがこのゲートだった。


「これからゲートの中に入りますが我々から離れないようにお願いします」


 等級の低いゲートなら離れて見ているようなこともあるけれど等級の高いゲートになるとモンスターも強く、賢くなる。

 あまりチームから離れていると逆にチームを無視して圭たちの方が襲われてしまう可能性がある。


 常にチームと動いた方が守りやすく危険度も低くなるのである。


「それでは入りましょうか」


 カメラなどの機材を持ってチームに守られながら圭たちはゲートの中に入っていく。

 麻痺ん棒を使うのはB級覚醒者である市原。


 市原は魔力と速度に優れた覚醒者で魔力のステータスもB級であるので麻痺ん棒を扱うだけの力がある。

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