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第三章
悪魔の力1

 真っ暗。

 車の音だけが耳に届く。


 どれだけ車が走ったのかもう分からない。

 長かったような気もするし短かったような気もする。


 車が止まった。

 ドアが開く音がした。


「プハッ」


「申し訳ございません、このようなことをして」


 急に明るくなって圭は目を細めた。

 車中、圭は頭に袋をかぶせられていた。


 袋が取られてなんてことはない明るさでも眩しく感じる。


「村雨様はまだ正式にこうした場所にお越しになる権利がございませんので場所が分からないようにする必要があるのです」


「分かってます……」


 袋を取ったのは鈴木であった。

 圭は指定された日に以前行ったオフィスビルを訪ねた。


 そこで与力の儀なる儀式をやる場所に連れていくと言われて車に乗り込んだ。

 けれど相手もまだ圭のことは信用していない。


 黒い布の袋を渡されてかぶるようにと言われた。

 なんだかドラマみたいだなと思いながらも大人しく袋をかぶると車は出発した。


 そしてどこかに着いたらしい。


「こちらになります」


 着いたのはどこかの別荘地のように見えた。

 大きなお屋敷の周りに木々が生えていて周辺状況も分からなくて隔絶されている雰囲気がある。


 周りを見回してみてもここがどこであるのかヒントになりそうなものはない。

 屋敷かすでに何台か止まっている車ぐらいしか見るようなものがない。


「こちらをお使いください」


「これは?」


「お集まりになる方の中にはご身分を明かせないような方もいらっしゃいます。

 そのためにこのような集まりでは顔を隠す決まりとなっています」


 鈴木は仮面を圭に差し出した。

 儀式を受ける人の中にはもちろん顔を他の人に知られたくない人もいる。


 そうした人の顔がバレないように仮面をつける。

 どこかのブラックマーケットみたいと思うけれど原理としてはほとんど一緒である。


 視界確保のための穴と呼吸のための穴がある以外は真っ黒な奇妙な仮面を圭は着けた。

 鈴木や長里も同じく仮面をつけて屋敷に向かう。


「上級会員の鈴木と長里です。

 お客様をお連れしました」


「確認できました」


 鈴木と長里は懐からカードのようなものを取り出すと屋敷の前に立っていた仮面の男に渡した。

 仮面の男はカードを持っていた機械に通して2人に戻した。


 仮面の男がドアを開けて屋敷の中に入る。

 一度2階に上がり、奥の部屋に行く。


 その部屋にも仮面の男がいた。

 鈴木たちが入ってくると仮面の男は部屋に飾られている絵に手を伸ばして傾けた。


 すると床が開いて階段が現れた。

 まさか2階の奥の部屋に下に降りる階段があるなんてと圭は驚く。


 階段を下りていくが思ったよりも長い。

 おそらく1階よりも深く地下にまで下りているのだと気が付いた。


「こちらにてお待ちください」


 地下には20~30人ほどの人がいた。

 真ん中に丸く魔法陣のようなものが描いてあり、それを囲むようにイスが置いてある。


 そのうちの1つに圭は座る。


「何かありましたら長里の方にご用命ください」


 鈴木は圭のところから離れて他の会員にあいさつしに行った。

 キョロキョロと圭は周りを見る。


 みんな仮面を身に着けているので当然顔は分からない。

 中には真っ黒ではなくデザインされた仮面をつけている人もいて鈴木はそうした人にあいさつしているようであった。


 人が分からなくなるので仮面をつけられては調べるのにも厳しくはなる。

 一般的な相手ではそうだろう。


 しかし圭にとってはむしろ都合が良いとすら思った。


「本田清四郎……竹山圭吾……」


 圭には真実の目というスキルがある。

 顔は見えなくとも真実の目で相手の名前を見ることはできる。


 むしろ顔よりもバレたくないものが名前だろう。

 圭はこっそりとスマホを取り出して録音ボタンを押した。


 そして口元に持って行って真実の目で盗み見た名前をつぶやいて記録していく。

 さすがに全員の名前は記憶しておけない。


 一般人が多いのだけれど覚醒者もいる。

 そして覚醒者のうちの何人かは長里と同じく低いステータスがいつもと違う括弧で表記されている。


 長里を見てから家でも考えてみたけれど結局どうしてそのようなステータスが表示されるのか分からないままであった。


「村雨さん」


 一通り人の名前を確認したかなと思っていると鈴木が人を連れて戻ってきた。

 白と金で模様が描かれている仮面はどう見ても格が高そうに見える。


「今回儀式を執り行う司祭長が是非あいさつなさりたいと」


「お話は聞いております。

 非常に信心深い方のようで。


 私はレミデンと申します」


 やや片言っぽく話すレミデンは胸に手を当てて浅く頭を下げた。

 言葉遣いと名前を聞くに日本人ではないかもしれない。


『ヴェルター・ギースラー

 レベル323[166]

 総合ランクB[D]

 筋力A[C](一般)

 体力C[E](無才)

 速度B[E](無才)

 魔力A[D](英雄)

 幸運C「D」(一般)

 スキル:悪魔の権能アビリティイーター[貸与]、悪魔の権能ギフトアビリティ[貸与]

 才能:無し』


 なんだこのステータスはと圭は驚いた。

 これまで見た中でも低いステータスとの差が大きい。


 しかもスキルもなんだかおかしい。

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