日本IBM副社長、ラピダスは重要プロジェクト-2ナノ量産自信
古川有希、日向貴彦、望月崇-
ラピダスにはIBM側として最もリソースかけている-森本氏
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ビジネスニーズ合えばいろいろなオプションを検討-森本氏
日本アイ・ビー・エム(IBM)の森本典繁副社長(59)はブルームバーグのインタビューに応じ、米IBMにとって「日本とラピダスは非常に重要なパートナー」であるとの認識を示した上で、次世代半導体量産の実現に自信を示した。
最高技術責任者を務める森本氏はラピダスについて「IBM側として最もリソースをかけている」プロジェクトであると明らかにし、相当の資金や人材を投下していると述べた。具体的な投資額などはコメントを控えた。インタビューは6月8日に行った。
IBMは昨年12月、ラピダスと2ナノメートル半導体の製造における協業を発表。IBMは10年以上かけて2ナノ半導体を開発してきており、ラピダスはこの技術を基に2027年までに量産体制を確立する計画だ。
現在量産化されている最先端の半導体は3ナノで、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子が2ナノの量産に向けた準備を進めている。一方、日本の半導体メーカーは現時点で40ナノ世代までしか生産できない。
森本氏は「半導体開発は1社ではできない」と話す。協業相手について「日本を置いてほかにない」と強調するのは、日本の装置・材料メーカーや技術者と長期的な信頼関係を築いてきたからだ。ラピダスとの協業についても、同社の東哲郎会長や小池淳義社長の実績に言及し、「東さん、小池さんに懸けた」と話す。
IBMは14年に半導体事業を米グローバルファウンドリーに譲渡すると発表し、それ以降は先端半導体の技術開発・供与に特化してきた。半導体の設計、開発から量産までのプロセスを繰り返してきた過去20年以上の経験から、2ナノ半導体の量産についても、良品率の向上といった「技術課題ははっきりしている」ことで、実現に自信を覗かせる。
森本氏はラピダスで量産予定の2ナノ半導体の需要については、「先端品ほど引く手あまた。需要が必ずあると確信している」と述べた。「自動車やエレクトロニクスなどあらゆる分野で、先端半導体をどう使って製品をレベルアップし世界に対峙していくかが本丸だ」とし、日本の製造業の復興に貢献したい考えを示した。
森本氏は1987年慶応大学理工学部を卒業後、日本IBMに入社。米国のIBMワトソン研究所勤務やIBM東京基礎研究所所長などを経て23年から現職を務める。
半導体の安定供給確保を経済安全保障上の重要課題としている日本政府は、30年の半導体関連の国内売上高を20年比3倍の15兆円超に伸ばす目標を掲げる。TSMCやキオクシアホールディングスなどの国内工場建設にも補助金を支給するが、ラピダスにはこれまで計3300億円の支援を決めている。
業界内には、サムスンとラピダスの協業の可能性を予想する声もある。IBMがサムスンにも技術供与していることから、IBMの立ち位置について聞いてみたところ、「目的とビジネスニーズが合えば、当然いろいろなオプションは検討する」と返答した。
英調査会社オムディアの南川明シニアコンサルティングディレクターは、両社の提携はまだ白紙だと思うが、「両社ともIBMの技術を使っているので移管はしやすく、将来においては十分にあり得る話」だと述べた。