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第三章
共同研究の誘い3

「ふむふむ……話は分かったよ」


「どうせ今期には間に合わない。

 来期分に回して俺と平塚博士の共同研究にしよう」


「ほう?」


「割合は7:3」


「むぅ?

 それは……」


「7はお前の方だ」


「ええっ?」


 共同研究と言いながらも歴としては新徳の方が長く立場上も実際上になる。

 てっきり7の方を新徳が持っていくものだと思っていた。


 しかし新徳はニヤリと笑う。


「つまりはこっちでやれということかな?」


「察しがいいな。

 こちらも色々抱えている。


 それにこちらは主に高等級覚醒者向けに装備の最大値を目指しているからな。

 素材の能力を抑える方面まで手が回らない。


 出来るならそちらで引き取ってもらえればとな」


「こっちがメーンでやらされるのに3も持っていくのかい?」


「まあそう言うな。

 俺が持ってこなければそもそもなかった話だし、素材も提供するし素材の研究データも渡そう。


 むしろ3しか要求していないと思うぐらいだ。

 美味しいところはくれてやるんだ、3ぐらい良いだろ?」


「そうだねぇ」


「ついでに恩にもきてやる。

 どうだ?」


「上から目線は気に入らないが……面白そうだから引き受けようかねぇ」


「ありがとう、助かるよ」


「後でデータを送っておくれよ」


「戻り次第すぐにでも送る」


 そう言って新徳は立ち上がる。


「せっかちだねぇ。

 もう1杯ぐらいどうだい?」


「美味い紅茶ばかり飲んでいるとうちのまずいコーヒーが飲めなくなるからな」


 新徳は足早に部屋を出て行こうとする。


「助手君」


「はい?」


「あー……愛人なんて言って悪かったな。

 メールの返事がなくて気が立ってた」


「いえ、大丈夫ですよ」


「紅茶美味かった。

 ありがとう」


「どうも」


 めんどくさそうな人かと思ったけど悪い人ではなさそうだ。

 夜滝の雑な態度にも怒らないし懐の深さもあった。


「あながち愛人を囲い込んだというのも間違いじゃないからねぇ」


「いや……違うでしょ?」


 カラカラと笑う夜滝のカップにまた紅茶を注いでやる。


「でもいい話だね。

 研究としてもそうだけど……」


「レベルアップにも良さそうだよね」


 圭も話を聞きながら神経毒で相手を弱らせて他の人がトドメを刺すという方法がレベル上げに利用できそうだと思った。

 それどころか通常戦闘にも普通に使えそうな雰囲気がある。


「向こうの研究データを見て、実物を試してみないことには確実なことは言えないけどもしかしたらかなり使えるかもしれないねぇ」


「素材も手に入るなら毒棒君よりも良いよね」


「名前はそうだな……麻痺棒君とかどうだい?」


「……まあ夜滝ねぇの好きにしなよ」


「ふむ……少し可愛げを出すために麻痺ん棒とか良いかもしれないねぇ」


 夜滝はネーミングセンスが若干独特である。

 圭が止めなきゃもっと変な名前になりそうだったものもあったりする。


「まあ私たちはひとまず峠は越えたからしばらくのんびりとしていてもいいだろう。

 次にどうやってレベルアップしていくか、そろそろ考える必要があるかもしれないねぇ」


「そうだね」


 多少強くなったのでレベル上げの幅も広がった。

 しかし等級が上がるにつれてリスクも上がる。


 モンスターも危険になるし環境的にも過酷なものも多くなる。

 さらにはF級、E級となると覚醒者の数も多く、稼げない人もいるので対象となるモンスターも争奪戦となるのだ。


 幅は広がったけれど状況的にレベル上げは厳しいのである。


「自由狩猟特別区域、ゲート……それに塔もそろそろ候補にはなるかもね」


「現実的なのは自由狩猟特別区域だろうねぇ」


 ゲートでのレベル上げは比較的やりやすい。

 出てくるモンスターが決まっているので戦い方も分かる上に慣れていくこともできる。


 突発的な事故も起きにくく安全にレベルを上げられるという利点がある。

 その代わりにゲートそのものを見つけるのが大変であるというデメリットがある。


 ゲートもそれなりに発生したりはするのだが覚醒者が安定してきた現代において狩りのしやすい等級のゲートは人気でどれも奪い合いになっている。

 以前利用したような1日攻略権も全てのゲートで行なっているわけではない。


 ギルド単位でゲートの攻略権が買われてしまえば基本的に外部の人間は攻略に参加できないしギルドが買わなかった残り少ないパイは金を持っている奴がさらっていく。

 ゲートでレベルアップを図れるならその方がいいのだがゲートを見つけるのにかなりの労力がいるである。


 そうなると1番良いのは自由狩猟特別区域である。

 モンスターの種類が様々いる上に他の覚醒者がいるので気を使う面は大きいがいつでも開かれているのでゲートのような探す手間はない。


「何にしても波瑠の方が終わるまでは勝手に行くわけにもいかないね」


「そうだね」


 レベルアップに出られることは出られるのだけど多分波瑠は拗ねる。

 1人だけのけものにされたとお怒りになることは間違いない。


「おっとさっそく新徳博士から研究データが送られてきた。

 面倒だけど取り掛かるかね。


 早めにやっておけば他の研究者みたいにギリギリになって苦労することもないし。

 それでも今日は定時に上がるよ。


 晩御飯はハンバーグだ」


「はいはい。

 じゃあ帰りにスーパー寄らないとね」

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