おわりに

 国家は、国際法違法行為を行った場合には、国家責任を負うが、その行為が国家に帰属することが要件とされる。

 すなわち、国際的に違法なサイバー行為が行われた場合、その行為者が特定され、かつ、その行為者と主権国家との関係が立証されなければ、当該国の国家責任を問うことができない。

 これが、サイバー空間の「帰属問題(アトリビューション)」と呼ばれるものである。

 よって、我が国に対する国際的に違法なサイバー行為が行われた場合、我が国が、その行為者を特定できる能力を保有していなければ、当該国の国家責任を問うことができない。

 すなわち、抑止が効かないばかりでなく、武力攻撃に匹敵するサイバー攻撃を受けても自衛権の行使ができないことになる。

 従って、海外からのサイバー攻撃の発信源を逆探知する能力および平時のサイバー偵察を可能とする法令等の整備を急ぐ必要がある。