蛇寮の獅子   作:捨独楽

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この二次創作のハリーにファンタビ1~3のジェイコブおじさんを見せて脳破壊してぇ~


宴の前の準備

 

 ハリーはシリウスに、自分の身の回りで起きたことを話した。シリウスによるとハウスエルフとは、マルフォイ家やアズラエル家のような裕福で大きな家に住み、その家の当主に仕えるのだという。

 

「つくづく災難だったな。しかし、ヴォルデモートとは別の災いがホグワーツに迫っている、か……」

 

 

「ドビーが言った通り、それは僕を狙っているのかな?」

 

 シリウスは腕を組んで何かを考えていた。ハリーはシリウスに、誰かが自分を狙っているのではないかと尋ねた。

 

「そうとも限らん。ホグワーツは無駄に歴史が長いからな。あらゆる魔法に関する書物、古代魔法の伝説、創設者の秘宝……それ以外にも、ろくでなしが欲しがるお宝はごまんとある。名家ということになっているろくでなしの阿呆どもも、欲に目がくらむことはあるだろうよ」

 

「シリウスはその……そういうのに辛辣だね…僕の友達も何人かはそういう大きな家なんだけど…」

 

 ハリーの記憶のなかで、ファルカスの言葉が木霊していた。『シリウスの家は間違いなく純血とされる二十八の一族のひとつだよ』と。

 シリウスは間違いなく純血の魔法使いだが、ドラコと違ってそれを誇ることはなかった。

 

「昔から続いている家というのはな、ハリー。進歩を受け入れず停滞している家ということでもあるんだ。……まぁ、君の友達の家を悪く言ったつもりはない。そういう連中の可能性があるという話だ」

 

「それよりもだ。ハリー、もう一度友達と連絡を取ってみよう」

 

「手紙を出すんだね」

 

「……おいおい。たった一年で頭魔法使いになったのか?君には慣れ親しんだ文明の利器があるだろう」

 

 そう言って、シリウスは備え付けられた電話を指差した。

 

「……電話!!」

 

 ハリーは鞄からノートを取り出して、急いでハーマイオニーの連絡先を探した。ダーズリー家に入ったとたんノートを取り上げられてしまったので、電話をかけることはできなかったのだ。

 

(そうだ、僕はなんてバカだったんだ。ハーマイオニーの電話番号を暗記しておけばよかったのに……)

 

 実際にはそんなものは結果論に過ぎないが、とにかくハリーは震える指でハーマイオニーの自宅の電話番号を入力した。ジリリリと鳴る電話の音が、ハリーには長く感じた。三回ほど鳴ったあと、電話を受ける人がいた。

 

「はいもしもし。こちら、グレンジャーですが?」

 

 受話器からは、大人の男性の野太い声がした。

 

(繋がった!!)

 

「と、突然お電話をかけて申し訳ありません。僕は、ハーマイオニーさんの友人のハリー·ポッターと言います」

 

「ああ!!君がハリーくんかい!?いやぁ、うちの娘がお世話になっていると聞いていたよ!少し待ってくれ……」

 

「ハリー!!ハリー、どうしたの?ああ、でも話ができてよかった!私、あなたのことを心配して電話をかけたり、何回も手紙を出したのよ?!ロンもザビニもアズラエルもハリーから返事がないって言うから……」

 

 ハリーはそのあと、五分以上はハーマイオニーと話し込んだ。ハーマイオニーは、すぐにクラブのみんなに連絡すると言ってくれた。ハリーは久しぶりに人間の友達と会話できたことが嬉しくて涙が出そうだった。ハリーは念のために、アズラエルやザビニにも電話をかけてみた。ザビニの皮肉げで嫌みな声も、アズラエルのどこか勇敢さが溢れた声を聞くのも久しぶりだった。ロンとファルカスの家には電話がなく、ドラコはマグル関係のものなんてと冗談交じりに言っていた。

 

 

「マルフォイ一族はな、ハリー」

 

 他のみんなには、横の繋がりでハリーの無事を伝えることはできた。しかしドラコにだけは。ふくろうを使って手紙を送るしかない。そう悩むハリーに、シリウスがこっそりと教えてくれた。

 

「昔はマグルとも繋がりを持っていた。その時の名残で、今も電話を使おうと思えば使えるはずだ」

 

「ドラコの家が?」

 

 ハリーはそのギャップに驚いたが、同時に納得もしていた。ロンは電話も知らなかったが、ドラコは箒に乗っているときにヘリコプターにぶつかりそうになったという冗談を飛ばしていたからだ。

 

 友達と会話できたハリーを、シリウスは暖かく見守っていた。ハリーを見るシリウスの視線は暖かく、ハリーは気がつかなかったが、シリウスの心中は穏やかではなかった。

 

(そりゃあ、あんな環境でマグルのことを嫌いになるなという方が無理だろうが……)

 

 シリウスは自分の中にあるスリザリンに対する偏見を脇においても、ハリーがマグル蔑視に傾いている現状をよく思ってはいなかった。シリウス個人としてはハリーにはジェームズのような存在になってほしいと思っていたし、マグル差別なんぞにかぶれてほしくもなかった。しかし、シリウスは従姉のアンドロメダから保護者としてのアドバイスを受けていた。

 

『ハリーの中に、純血主義に近い傾向が生まれていた場合?そうね、あなたならそれを躾て、正しい方向に矯正したいと思うでしょうね』

 

『それが大人としての義務だろう!』

 

『ええ。子供が可能な限り健やかに育てる環境を与えるのが親の義務であり、可能な限り真っ当に育てるように躾をするのも親の責任。でも、あなたが子供だった頃を思い出しなさい。あなたは大して親しくもない大人や、人として尊敬できない親から押し付けられた言葉を信用したかしら?』

 

『……む……』

 

 シリウスは自分がハリーから信頼されているとは思っていなかった。ハリーと直接話したのはこれで三度目で、ハリーにとってはいきなり出てきた文通相手のおじさんでしかないと自分を客観視していた。だからこそ、少しずつ共同生活で信頼関係を育みながら、ハリーの心の傷を癒してマグルへの怒りを和らげたいと思った。自分にできるかどうかではなく、それをやることがゴッドファーザーとしての役目だと思った。

 

(マグル差別なんてやめておけ。レイシストにまともな友達なんてできないぞ、ハリー)

 

 そうシリウスが言うタイミングは、少なくとも今ではない。今のハリーは、ダーズリー家から受けた仕打ちでとても冷静ではないからだ。シリウスはハリーの保護者として、ハリーのために行動しようとしていた。まずはハリーがなるべく冷静にこの言葉を受け止められるようにすることが、シリウスがすべきことだった。

 

 

 

***

 

 シリウスとの共同生活が始まって、ハリーは充実した日々を送っていた。シリウスが用意した家はマグルの住む住宅街の中にあり、二階建てだったが小さく、二人が住むには丁度いい広さに見えた。しかし家の中に入ると、シリウスの魔法によって空間は何倍にも広く拡張されていた。電球はシリウスの魔法によって自在に色を変え、家の中には色々な魔法に関する書物や魔法の道具があった。家の中を探検するだけで、ハリーは楽しくなった。

 

 あるとき、ハリーが箪笥の引き出しを開くと、中からバーノンの姿が見えた。バーノンは恐ろしい形相でハリーを怒鳴りつけ、ハリーを家に連れ戻すと言い張っていた。ハリーは反射的に魔法を使おうとした。

 

「ボー」

 

「リディクラス(馬鹿馬鹿しい)!」

 

 シリウスが杖をふると、バーノンは痩せて若返り歌を歌い出した。

 

 

「すまんハリー。こいつはボガートだ。箪笥の引き出しの中のような暗くて狭いところで繁殖し、人の怖がるものに化ける性質がある。怖がらせてすまなかったな……」

 

「……休暇中に魔法は厳禁だぞ」

 

「ううん、ごめんなさいシリウス。魔法を使おうとしてごめんなさい……」

 

 ハリーはボンバーダでバーノンを爆破しようとした。魔法を発動する前にシリウスに止められたが、止められてよかったとハリーは思った。こんなことで退学になるのはそれこそ、馬鹿馬鹿しいことだった。ハリーは反省して杖をシリウスに預けることにした。

 

 ハリーにとってシリウスは、ハグリッドと並んで一番尊敬する大人になった。シリウスは普段魔法省で闇の物品を取り締まる仕事をしていたが、家に帰るとハリーに魔法を教えたり、二十日のパーティーに向けていくつかの礼儀作法を教えてくれた。一番助かったのは、タラントアレグラ(踊れ)の魔法をハリーにかけて踊り方を教えてくれたことだ。ハリーの運動能力は確かで、一度踊ったステップを忘れずに再現してくれた。ハリーはパーティーの日を楽しみにすることができた。

 

***

 

(……私が子供の時は、ジェームズはもう少し社交的だった気がするんだが……)

 

 ハリーを見るシリウスは、ハリーが周囲のマグルの子供と遊ばないのが気になっていた。シリウスが子供の頃、ジェームズの家に居候していたときは、マグルの子供たちとフットボールをして遊んだものだ。

 ハリーとの共同生活をはじめてから、ハリーは周辺の図書館に行って理科や数学の本を読むか、魔法の勉強をするかといったことはしていたが、マグルの子供と関わることをしなかった。

 

(少しアプローチの仕方を変えてみるか)

 

 シリウスは、パーティーが終わったあとでハリーを、躾ようと決意した。直接友達と会えば、ハリーの心にも余裕ができるだろうと考えていた。

 

 

***

 

 一方その頃、豪勢でありながらどこか陰鬱さが漂う屋敷の一室で、プラチナブロンドの魔法使いが己の所有するハウスエルフに魔法をかけようとしていた。

 

「よく見ておけドラコ」

 

「はい、父上」

 

 ルシウスの表情は普段とかわりなく気だるげだ。ドラコも普段と同じような冷酷で、残酷な罰を見れるという喜びに震えていた。

 

 ドラコは夏休みに入ってから、ハリーから手紙が来ないことに苛立ちハリーに怒っていた。友達面しておきながら、自分をまた裏切ったのかと思った。

 しかし夏休みに入ってから二週間で、ハリーからの手紙が届いた。手紙にはまずドラコへの謝罪が書かれており、ドビーというハウスエルフのせいで手紙が届けられなかったこと、マグルに監禁されていたことなどが書かれていた。

 ドラコは怒りに任せてドビーを問い詰めると、ドビーは自分を罰しながら白状した。そして今、ドビーは当主であるルシウスの罰を待っていた。

 

「下賎なしもべの行動は、マルフォイ家への裏切りに等しい」

 

 ルシウスは普段の調子を崩さない。

 

「お……お許しくださいご主人様……ドビーめは、ドビーめはハウスエルフ失格です……」

 

「誰がお前の発言を許可した?」

 

 

 ドラコは冷たくドビーを睨んだ。ドビーは両手で口をおさえた。

 

「本来であれば忠実ではないしもべには『洋服』をくれてやるところだが……私は寛大だ。家の恥を外に出すわけにはいかん。覚えておけドラコ。『ヒト』ではないものにこの魔法をかけるのは違法ではない。クルーシオ(苦しめ)」

 

 ドビーは哀れにも、ドラコの命令を忠実に守ろうとしながらカースを受けた。数分間もの間、痛みや火傷、窒息、骨折、内蔵の激痛……その他のあらゆる痛みを受けたドビーは、のたうちまわりながらも絶叫をこらえた。

 

 最初は心の底から笑ってそれを見ていたドラコは、やがて少しずつ怖くなった。しもべが本当に死んでしまったのではないかと思った。顔に笑みを張り付けながら、ドラコは父親の所業を黙って見ていた。

 

 やがてルシウスは呪文を止め、ドビーに命じた。

 

「地面が汚れたな。しもべの手で掃除しておけ」

 

 ドビーはのろのろと起き上がると、緩慢な動きで掃除に取りかかった。ドラコはそんなドビーを罵倒しながら、父上がしもべを殺さなくてよかったと内心でほっと胸を撫で下ろした。

 




ねえんだよぉ!ハウスエルフにゃあ!
人権がよぉ!

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