人気漫画「るろうに剣心」の作者である和月伸宏さん(47)が、児童ポルノの単純所持容疑で書類送検された。11月21日、読売新聞が報じた。
 報道によると和月さんは容疑を認めており、「小学校高学年から中学2年生くらいまでの女の子が好きだった」と供述しているという。和月さんは今年9月4日発売の「ジャンプスクエア」10月号から、『るろうに剣心』の続編となる『るろうに剣心-明治・北海道編-』の連載を始めたばかりだったこともあり、ファンからは驚きの声が上がっている。
 「るろうに剣心」作者、児ポ法違反で書類送検に衝撃広がる 「新連載を読もうと思ってた矢先に」-エキサイトニュース
 この件です。
 まぁこの件に限らず、いわゆる「反表現規制」界隈では「単純所持の規制は地獄の一丁目」と言わんばかりの議論がなされています。
 しかしこのような議論は、実際の被害者の立場を無視する暴論と言えるでしょう。

 なぜ単純所持の規制が必要か
 そもそも、立法そのものの理念を考えれば、法による規制は誰かの人権を侵害する行為を防ぐためになされるべきです。では単純所持を規制した場合に防ぐことができる人権侵害とは何でしょうか。
 児童ポルノはその作成過程で、必ず児童虐待を起こします。児童への性的虐待を記録したものが児童ポルノのなるからです。つまり被害者にとって虐待被害が、記憶だけでなく誰にでも閲覧できる記録の形で残ることを意味します。
 それは被害者に、その記録が誰かの手によって流布し、誰かが自分の被害を見ているという恐れを生じさせます。一過性の被害とは異なり、この恐れは理論上永久に続き得る恐れがあります。加害者から記録物を回収したとしても、全てが1つ残らず回収されこの世から消えているという保証はどこにもないからです。
 児童ポルノの単純所持を規制することは、この被害拡大過程を阻むことに繋がります。児童ポルノを持っているということは、その作成にかかわったか流布にかかわったかのいずれかであるため、これを検挙することで現状の被害を解消し後続する被害を防ぐことになります。
 このような議論に対しては、流布が問題であるならば流布する行為だけを規制すればいいという反論が考えられるでしょう。しかし流布してしまっては被害の回復は望めませんし、そもそも流布が起こらなかったとしても(持っているということは作ったか受け取ったかなのでありえないですけど)被害の記録物を持っていること自体が被害者にとっては重大な人権侵害に値します。

 児童ポルノ単純所持規制を十全に機能させるために
 とはいえ、単純所持の規制には危うい面もあり反発が起こりやすいことも事実です。故に、十全にこの規制を機能させるために法律をブラッシュアップさせる必要もあるでしょう。
 例えば児童ポルノの定義です。単純所持の規制は実在する被害者の視点から議論されますが、元来児童ポルノ規制の議論は社会の風紀というあやふやな視点からなされることが多いものです。単純所持規制という強力な規制を行うにあたり、何が児童ポルノかの定義が明確でないことは問題です。故に単純所持を規制すべき児童ポルノを「児童虐待の記録物」というように定義することが必要でしょう。
 また警察の捜査姿勢も改めて検討される必要があります。どの犯罪に対する捜査でも同じことですが、捜査がいい加減で冤罪の疑いが強くなれば強力な規制はそれだけ実行しにくくなります。もし冤罪への恐れから規制が反発を呼びなされなくなるということが起これば、警察の怠慢が被害の救済や防止を妨げるということにもなります。

 とはいえやはり単純所持の規制は被害者側に立てば必要です。いわゆる「反表現規制」と呼ばれるお歴々には評判の悪い規制ですが、表現の自由は全てに全てに優先するというわけではなく、人々の権利を侵害しない範疇にしか存在しないことを強調する必要もあるでしょう。