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第一章
暗い会話

「お、おい!


 あんたが上手くいくと言ったんだぞ!」


「予想外でしたね……


 まさか本当に覚醒者の法律を学んだ人を連れてくるなんて」


「どうするんだよ!


 このままじゃ俺が責任を問われてしまうだろ!」


 ゲートの前で男たちが言い争いをしている。

 言い争う男のうちの1人は波瑠の父親が勤めていた会社の副社長である山崎であった。

 

 このゲートは山﨑の会社で攻略権を落札したゲートであるのでここに山崎がいても誰も文句はつけられない。

 基本的にゲート周辺というのは一般的な人が入らないように封鎖されるので隠れて人に会うのにはうってつけの場所である。


 山﨑が大きな声を出しても誰にもバレないのである。


「あなたは責任に問われるでしょうね。


 ですがこちらはそちらの書類の不備であったといえばそれで済むだけの話です」


 そしてもう1人の男は保険会社で水野に対応した男であった。


「なんだと!」


 山﨑は保険会社の男に掴みかかる。


「俺が逮捕されてもお前は笑ってられるかな?」


「何ですって?」


「なんだ?


 小さい会社のおのぼり副社長だとでも思ったか?」


 押すようにして保険会社の男から手を離した山﨑は胸ポケットからスマホを取り出した。


「今時便利だからな。


 スマホ1つありゃ何でもできる。


 録音だってな」


 ニヤリと笑う山﨑に保険会社の男は眉をひそめる。

 これまで周りにバレないように何回か会ってきた。


 いつ連絡があるか分からないしスマホぐらい持っているのはお互いに当然のことである。

 しかし山﨑は用心深かかった。


 何が起こってもいいように密会での会話を録音していたのである。


「俺が捕まったら全部話してやる。


 それだけなら捕まらない自信があるようだけどこれまでの会話が漏れたらどうなるかな?


 俺は終わるだろうな。

 だけどお前も終わりだ!」


 死なば諸共。

 むしろ責任は自分ではなく保険会社の男の方にあると山﨑は思っている。


 自分を見捨てるなら簡単に口を割る。

 捜査に協力的なら逮捕されても少しは罪も軽くなるかもしれない。


 うっすらと笑顔を浮かべていた保険会社の男が無表情になる。

 細い目が睨むように山﨑を見つめているが山﨑はここで退くようなことはない。


 自分だけ責任を負わせられて捨て駒にさせられるつもりなど毛頭ないのである。


「分かりました、ひとまず落ち着いてください」


「どうするつもりだ?」


「録音されているのに言うはずがないでしょう?


 また脅されては敵いませんからね」


「うっ……録音は止める!


 だからどうするつもりなのか教えてくれ」


「……まあいいでしょう。


 録音してそれを公表したところであなたの罪も重くなるだけですから」


「何をするつもりだ……」


「簡単なことです。


 相手がいるから追及されるのです。


 いなければ、このまま終わるでしょう」


「なんだと?


 まさか……」


「ええ、消すつもりです。


 録音でもなんでもご自由に。


 これを聞いた時点であなたももう片棒を担ぐことになりました」


「そ、そんなの聞いてないぞ!」


「今、言いましたから」


 山﨑は顔を真っ青にしているけれど保険会社の男はまたうっすらと笑みを浮かべていた。

 軽薄そうな営業スマイル。


 しかしその細い目の奥には妖しい光が浮かんでいたのであった。

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