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第一章
風の始まり3

「覚醒者の等級をお聞きしてもいいですか?」


「等級ですか?


 いいですよ。

 私はB級覚醒者です」


 中には等級を言いたがらない人もいるけれど特に等級そのものを誰かに知られても不都合なことはない。

 伊丹もあっさりと等級を答えてくれた。


「へぇ……B級なのに協会で?」


 覚醒者協会はいわゆる公務員的なものである。

 様々な覚醒者にまつわる仕事をこなしていて給料なども安定している。


 それなりに給料も高くて一般人にとってはいい職業であると言ってもいいのだけどそれが高い等級の覚醒者となると話は違う。

 覚醒者のレイドチームに入ったり、大きな企業に雇われた方が遥かにお金を稼ぐことができる。


 B級ともなれば一度ゲートに入れば一年分の給料の額なんて稼げてしまう。


「まあどうするのか悩んだことはありましたけど小さい妹や老いた父がいたので安全を考えました。


 たまたま就職できたってこともあるんですけどね」


「そうなんですか、優しいお姉さんなんですね」


「やめてくださいよ」


 あまり笑うこともなく淡々と話を進めてきたので冷たい印象があったけれど照れたように笑う伊丹はB級覚醒者だなんて思えないような可愛らしい雰囲気があった。


「コホン……それでは失礼しますね」


「変なこと聞いてすいません」


「いえ、大丈夫ですよ。


 お体お大事になさってください」


 ちょっと変な空気になってしまった。

 伊丹が咳払いして立ち上がると病室を出ていく。


 軽く手を振って見送る。

 やはり、という思いが圭の中にはあった。


 伊丹がB級であることの予想はついていた。

 真実の目で見た時の等級はCだった。


 何人か色々な人のステータスを見る中で思ったのは開発された技術による等級分類と真実の目による総合ランクというやつには何故か差があるということなのだ。

 どうやら等級検査によって分類された等級は総合ランクより一つ上になっているらしかった。


 なので総合ランクCの伊丹の覚醒者等級はBだろうと予想をしていたのである。

 今のところは等級は総合ランクの一つ上という相関関係があることが濃厚であることが分かった。


「あれ、お客さん来ていたんですか?」


 伊丹と入れ替わって波瑠が病室に入ってきた。

 手には紙袋を持っている。


「覚醒者協会の人だって。


 俺も一応覚醒者だからね」


「へぇ……そんなに強くなさそうだったけど」


「……そうだよ、悪かったな」


 毎日見舞いにも来ているので波瑠とも少し仲が良くなった。

 村雨さん、弥生さんと呼んでいたのだけど圭は波瑠と、波瑠は圭さんと呼ぶようになっていた。


「はいこれ」


「おっ、ありがとう」


 波瑠は持ってきた紙袋を圭に渡した。

 その中には有名バーガーチェーンのハンバーガーが入っている。


 病院食も不味くはないのだけど圭は健康体であり若い男性である。

 病院のご飯だけでは物足りない。


 だから波瑠に買ってきてもらったのである。

 小うるさく言ってくる看護師はいないけれど念のためドアを閉めて袋からバーガーやポテトを取り出す。


 もちろん波瑠にお願いするのだから波瑠の分も買ってきていいとお金を渡してある。


「美味いな」


 手作り料理にはないジャンキー感がまた美味い。


「あの……圭さん」


「ん、なに?」


「ご相談があるんですけど」


「相談?


 俺でよければ」


 ポテトをモソモソと食べながら波瑠は神妙な面持ちで話し始めた。

 いつになく真剣な顔をしているのでちょっと圭も姿勢を正して波瑠の話を聞く準備をする。


「私……覚醒したみたいなんです」


「えっ?」


「実は……モンスターが倒れたぐらいの時に急に体がフワッとしたような感覚に襲われて……


 なんだか体の調子もいいし、あれ覚醒だったのかなって」


 圭のことがあって誰にも言い出せなかった。

 モンスターが死んだ瞬間波瑠は恐怖や疲労とはまた違った体の感覚を覚えていた。


 その時は圭が瀕死で必死だったので忘れていたのだけど少し体の感覚が以前とは違っているように感じた。

 病気ではなく体の感覚が鋭くなって軽くなったようないい変化である。


 なんなのか悩んだ結果にこれは覚醒したのではないかと思った。

 覚醒するということについては未だに謎が多い。


 日常生活を送っていたら急に覚醒したということもあれば危機に瀕した時に覚醒した例もある。

 あるいは覚醒した自覚もなかった人までいる。


 そのために今でも覚醒しているかもなんて希望を持って等級検査を受けに行く人は後をたたない。


「ど、どう思いますか?」


 追い詰められるような危険な状態にあると覚醒する確率は上がるなんて言われることもある。

 かなり危機的状況であったし覚醒してもおかしくないと波瑠は思っていた。


「えーと……」


 圭は真実の目を使ってみる。


『弥生波瑠

 レベル3

 総合ランクH

 筋力G(英雄)

 体力G(一般)

 速度F(神話)

 魔力G(英雄)

 幸運G(英雄)

 スキル:風の導き(未覚醒)

 才能:有翼のサンダル(未覚醒)』


「うん、多分覚醒していると思うよ」


 真実の目によるならおそらく覚醒している。

 未覚醒となっていたのにそれがなくなりレベルが0から3に上がっている。

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