121.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」
第9節「プロデューサー黒澤満 東映ニューアクション ③仲村トオル」
7.セントラル・アーツ「仲村トオル」大活躍
1986年5月、正月映画『ビー・バップ・ハイスクール』(那須博之監督)の大ヒットを受け、那須真知子脚本、那須博之監督、仲村トオル、清水宏次朗、中山美穂、宮崎ますみ(萬純)など同じメンバーが出演する第2作『ビー・バップ・ハイスクール 与太郎哀歌』の製作が発表されます。
公開に先立ち東映映像事業部は、人気が爆発した主演の仲村トオル写真集『トオルがトオル』を発行、8月1日、全国書店にて発売が開始され大ヒットしました。
セントラル・アーツが製作協力するこの作品は、8月9日、東映系にて全国公開されます。
同時上映は江川達也原作の羽賀研二主演『BE FREE!』(中田新一監督)。当初は東映東京撮影所の製作で進んでいましたが、準備稿を読んだ岡田茂の判断でプロデューサー、脚本家、監督が交代され、急遽黒澤満が呼ばれセントラル・アーツで製作した作品でした。
この2本立て作品は配給収入(配収)11億5000万円を記録、1986年度日本映画配給収入6位と予想通りに大ヒットします。
セントラル・アーツが製作協力する、仲村トオル、清水宏次朗コンビの『ビー・バップ・ハイスクール』は、那須真知子脚本、那須博之監督にて、マドンナは変わりながらも1988年12月の第6作まで続く人気シリーズとなりました。
〇仲村トオル、清水宏次朗コンビ『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ
第1作 1985年12月公開『ビー・バップ・ハイスクール』(中山美穂・宮崎ますみ) 配収14億5000万円
同時上映:『野蛮人のように』薬師丸ひろ子主演
第2作 1986年8月公開『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌』(中山美穂・宮崎ますみ) 配収11億5000万円
同時上映:『BE FREE!』羽賀研二主演
第3作 1987年3月公開『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎行進曲』(五十嵐いずみ・宮崎萬純) 配収10億1000万円 1987年度日本映画配収第8位
同時上映:『本場ぢょしこうマニュアル 初恋微熱篇』工藤夕貴主演
第4作 1987年12月『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲』(柏原芳恵・五十嵐いずみ・宮崎萬純) 配収12億5000万円 1988年度日本映画配収第6位
同時上映:『はいからさんが通る』南野陽子主演
第5作 1988年8月『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎音頭』(立花理佐・宮崎萬純) 配収7億3000万円
同時上映:『菩提樹 リンデンバウム』南野陽子主演
第6作 1988年12月『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇』(立花理佐・宮崎萬純) 配収6億7000万円
同時上映:『恋子の毎日』松村雄基主演
かつての勢いは無くなったとはいえ『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇』も堅調な成績でしたが、仲村トオルはこの作品で高校生役を卒業しました。
『ビー・バップ・ハイスクール 』で人気が沸騰した仲村トオルは、シリーズの合間を縫って様々な映画に主演しています。
〇1987年7月公開『新宿純愛物語』
1987年3月公開の第3作『ビー・バップ・ハイスクール 与太郎行進曲』に主演した仲村は、セントラル・アーツが製作協力した『新宿純愛物語』(那須博之監督)に主演しました。
新人の一条寺美奈が相手役を務めたこのアクション映画には、ビー・バップに出演する俳優たちや新日本プロレスの木村健吾なども出演しています。
講談社の雑誌『スコラ』から『新宿純愛物語 仲村トオル』と題した写真集も発売され人気を集めました。
7月、東映洋画の配給で山本陽一主演『恐怖のヤッちゃん』(金子修介監督)と同時公開されます。
結果、配収5億円と堅調な数字でしたが期待を下回る成績に終わりました。
〇1988年3月公開『ラブストーリーを君に』
続く8月には、東映とオスカープロモーションが共同製作する後藤久美子主演『ラブストーリーを君に』(澤井信一郎監督)に後藤の相手役としてW主演することが発表されます。
この映画は、フランスの小説家のディディエ・ドゥコワンの小説『眠れローランス 』を原作に黒澤満が企画し、オスカープロモーション社長古賀誠一に話をして製作した映画で、NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』愛姫役で一躍国民的アイドルとなり「ゴクミ」が流行語に選ばれるほど人気が高かった後藤久美子とビーバップで人気のある仲村トオルの純愛映画は、話題を呼びました。
これまで不良高校生役で体を張った演技をしてきた仲村は、この作品で等身大の大学生役を演じ、1月には文部省選定作品に選ばれました。
人気アイドルのW主演で大きな話題を呼んだこの作品は、1988年3月、東映洋画配給にて渋谷東急系でロードショー公開され、目標には届かず興行は堅調な数字で終わりましたが、この頃から盛んになった2次利用のビデオの売り上げが製作収支に貢献しました。
〇1988年12月公開『悲しい色やねん』
この年仲村トオルは、東映とサンダンス・カンパニーが製作した小林信彦原作『悲しい色やねん』(森田芳光監督)に主演します。
1988年11月発行 社内報『とうえい』第335号
この映画は、サンダンス・カンパニーの古澤利夫(藤峰貞利)が仲村を主演に企画し、セントラルアーツが製作協力しました。
12月、東映とオスカープロモーション共同製作の後藤久美子主演『ガラスの中の少女』(出目昌伸監督)と東映洋画配給で同時公開されましたが、厳しい成績に終わります。
〇1989年1月3日テレビ朝日時代劇スペシャル『家光と彦左と一心太助~天下の一大事 危うし江戸城!~』
1989年、テレビ朝日は仲村トオル主演で新春時代劇3時間スペシャル『家光と彦左と一心太助~天下の一大事 危うし江戸城!~』を放映しました。
舛田利雄が監督のこのドラマでは、主役の仲村トオルは徳川家光と一心太助の二役、若山富三郎が大久保彦左衛門役、酒井法子が太助の恋人役を演じています。
仲村トオル人気で世帯視聴率13.6%と好成績でした。
〇1989年8月公開『六本木バナナボーイズ』
次作は『六本木バナナボーイズ』(成田裕介監督)に主演、再び清水宏次朗と共演します。
セントラルアーツが制作協力し、『ビー・バップ・ハイスクール』のチーフ助監督だった成田裕介が監督、アクションは高瀬将嗣が担当しました。
またこの作品は、前年の11月に東映社員となった岡田裕介東撮所長付ヘッド企画者兼第一企画部長が、黒澤満と共に企画を担当しています。
8月に東映の配給で、同じく岡田裕介と黒澤満が企画した玉置浩二主演『右曲がりのダンディー』(那須博之監督)と同時公開されました。
この後、黒澤満が取締役である東映ビデオが製作を始めたオリジナルビデオ(Vシネマ)でも活躍して行きます。
1988年、東映太秦映画村は5月3日と9月3日、人気絶頂の仲村トオルを迎え、サイン会を行いました。
両日とも数多くのトオルファンが映画村につめかけたそうです。
次回は仲村トオルも活躍したセントラル・アーツ製作『あぶない刑事』を紹介いたします。