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第4章 旧アジール村にて
第125話 一般人に対する《従属契約》の効果

「あぁ、従おうじゃねぇか。なぁお前ら」


 リーダー格の男がそう全員に同意を求め、頷いたと同時に、俺と彼らの間に《繋がり》が出来たことを俺は理解した。

 キャスやコボルトたち、それにアトたちと《従属契約》を結んだ時と同様の感覚だった。

 つまり、これは俺と彼らの間にしっかりと《従属契約》が結ばれたことを意味する。

 まさかこの男も、今の一言で俺との間にそんなものが結ばれてしまい、さらに仲間たちに促すことで彼らも同様の目に遭わせてしまっている、とは想像もしていないだろう。

 かなり悪どいというか、ほぼ詐欺みたいな俺の手口であるが、まぁ、彼らは俺を殺そうとまでしたかどうかはともかく、襲いかかってきたのだ。

 文句を言われる筋合いはない。

 むしろ殺さなかっただけ、ありがたく思って欲しい。

 その結果が今後の人生、俺に対して服従、というのはそれはそれで酷い話だけどな。

 俺としては心はあまり痛まないので、彼らの存在はありがたい限りだった。


 そのために彼らが追ってきていることを知っても放置し、こんなところまで連れてきたのだから計画通りでもある。

 ただ、流石に、冒険者組合で依頼を達成したのを聞きつけた彼らが俺のことを襲ってくるだろう、とまで考えてやっていたわけではない。

 そこのところは偶然である。

 まぁ、街に来た時点で、いずれ誰か人間との間に《従属契約》を結び、色々と試したいと思っていたので、良い機会だったとは言えるが。

 もしも彼らがこうしてちょうどよく襲ってきてくれなかったら、別の方法を考えなければならなかったからな。

 ユリゼン連邦には一応、奴隷制度も一部残っているが、商売で行われてはおらず、あくまでも犯罪を犯したものに対する刑罰の一部として行われているに過ぎないから、そういう手段にも頼れない。

 オラクルムに戻れば違うだろうが、あの国には可能な限りもう近づきたくないからな。

 最悪、盗賊を狙うしかないかなとかは思っていた。

 ただ盗賊までいくと、そんなものと話しているところを誰かに見られると極めて面倒である。

 だからこそ、出来る限り犯罪者ではない相手を、という考えもあった。

 そういう諸々からして、この不良冒険者たちは俺の希望全てを叶える素晴らしい相手であるというわけだ。


 さてさて、それでは彼らの名前や技能を見ていこう。

 懐から《カード》を取り出すと、リーダー格の男が首を傾げ、


「……? そいつで何かするのか?」


 と尋ねてくる。

 彼からしてみれば、まだ何も命令されていない、という感覚なのだろう。

 しかし実際には俺の頼みはすでに彼らは聞いてくれた。

 約束は守るべき、と考えるともう解放すべきなのだが……逃げられると面倒だからな。

 でも、命令しておけば、逃げないか?

 とりあえず、聞いておくことにする。


「ちょっとな。で、お前たちの解放なんだけど、少し用があるから、縄を解いても逃げるなよ?」


 そう言ってみると、彼らは一瞬、虚ろな表情になって、頷いた。

 そして直後に表情を取り戻し、


「……あ? な、なにか今……?」


 とそれぞれ首を傾げている。

 うーん、今みたいな反応は初めて見たな?

 キャスやコボルトたちでは見れなかったものだ。

 まぁ、彼らにははっきりとした命令をしたことはあまりないし、彼ら自身が俺に従うというか、言うことを聞く、という意識が元からある。

 だが、この冒険者たちはそうではない。

 意思に反することを言われて、反抗しようとしたから今みたいになった、のではないだろうか。

 そんな気がした。

 ともあれ、俺の命令はどうも彼らに擦り込まれたようだ、というのは分かったから、縄を解いていく。

 まぁ、逃げられても彼らは俺を襲ったという負い目があるから、別に問題はない。

 それに逃げられたら逃げられたで出来る検証もあるからな……。


「……マジで解放してくれるのかよ」


 男たちは驚いた顔で俺を見つめていた。

 色々言っても、結局俺のことを信用しきれなかったのだろうな。

 まぁ、殺さない殺さないと言っても大抵は殺されるものだし。

 特に切った張ったの冒険者の世界では、武力でもって襲いかかり、敗北するというのはつまりそういうことである。

 だからほとんど諦めていたのだろう。

 

「俺は嘘は言わないぞ……可能な限りは」


 絶対とは言えないな。

 必要があれば言うだろう。


「……そうかよ。だが、なんだ。俺たちに何をさせるつもりだ?」


「とりあえず、いくつか約束して欲しい」


「何をだ?」


「今日、ここであったことは他言しないこと、俺のことは基本的に忘れること、今まで通り生活すること……あぁ、犯罪行為はもう二度としないこと。そんなところだな」


 やはりというべきか、想像通りというべきか、俺が一つずつ、指を折って命令を口にする度、男たちの目は虚ろになって、人形のように「ハイ……ハイ……」と言っていった。

 なんだか面白いなと思うと同時に、怖い。

 これは洗脳だ。

 まぁ、アトが俺にいきなりついたことからして、あれもまた洗脳なのだろうとは思っていたから、今更な話かもしれないが。

 ただ、アトの時とは違って、この男たちの反応はあまりにも意思に反したことを唯々諾々と受け入れてる様子がして、それが恐ろしかった。

 《従属契約》とはここまでの効果を持つのか?

 そう思って。

読んでいただきありがとうございます!

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