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第4章 旧アジール村にて
第124話 質問

 リーダー格の男は流石というべきか、先に倒した二人よりもそれなりに上手のようだった。

 動きも素早いし、また振るう剣に込められた力も強い。

 狙いも正確だ。

 けれど、彼が前衛に回ったせいか、後衛の二人……弓術士と魔術師が狙いをつけるのに苦心しているようだった。

 普段からやはり最初の二人が主に前衛をし、この男はあくまでも遊撃的な戦い方をしているのだろう。

 そうなると、的が普段戦っているもの……魔物よりも小さくなっているだろうから、余計に狙いをつけるのが難しいのかもしれなかった。

 そのため、俺の方も最初の二人と戦っている時より、むしろ楽だった。

 向こうから飛び道具があまり飛んでこないので、避ける方向をあまり選ばなくていいから。 

 俺は終始優位に戦いを進め、そして男の息が切れ始めたのを見計らって、その剣を弾く。


「……っ!?」


 目を見開いた男。

 その腹部を狙い、蹴りを入れると、男の意識もまた刈り取られたのだった。

 

 残るは後二人。

 弓術士と魔術師だけだ。

 俺は即座に二人の元へと距離を詰め、まずは弓術士の方の意識を奪う。

 幸い、まだ弓を番える前で、ろくに反応できていなかったため、簡単なことだった。

 そして魔術師の方に向き直ると、魔術師の男はなんと、杖を投げ捨て、地面に両手をついた。

 詠唱の声も聞こえず、代わりに出てきた言葉は、


「……こ、降参いたします……どうか、ご勘弁を……」


 だった。

 流石に魔術師一人では無理だ、と冷静に判断を下したらしい。

 俺はそこで剣を納めることにしたのだった。


 ******


 さて、試したいのはここからだ。

 全員を一箇所に集めて、意識が戻るのを待つ。

 魔術師の男については特に気絶させてはいないから、しっかりと後ろ手にして縛っている。

 これから何をされるのか、と不安そうな表情をしているので、


「酷いことにはならないから、心配はするな」


 と言っておく。

 言ってから少し思ったが……逆に不安かもな?

 まぁ、これ以上はどうしようもないから仕方があるまい。 

 そしてしばらくして、徐々に男たちが目覚め出す。

 リーダー格の男がやはり一番いい奴を入れたからか、起きるのが最も遅く、ただ判断は早かった。

 目覚めてすぐ、自分が縛られているのを理解し、周囲をチラリと瞳を動かすだけで確認し、他のメンバーもそうなっていることを認識すると、


「……それで、何の用だ? これから衛兵でも来るのを待ってるのか?」


 そう尋ねてくる。

 この場合の衛兵とは、ミドローグの街の治安を守っている自警団のことを指しているな。

 街で犯罪などが起こった時は、参事会直轄の組織である彼らがやってきて、捜査なり何なりをするのが普通だ。

 だからすでに彼らを呼んでいて、もしくはここで騒ぎが起こったのを目撃した誰かが呼びに行ったのか、と思ったのだろう。

 しかし俺は首を横に振る。


「いいや? そんなつもりはないぞ」


 誰も呼んでいないし、この辺りは本当に人通りが少ない。

 誰にも目撃されていないだろう。

 

「じゃあなんだ……殺す気か? いや……だったらわざわざ待ってる必要なんて、ないか……」


 男はそう言って困惑している。

 そんな彼に、俺は言った。


「まぁ、大したことじゃないよ。これから俺が尋ねる言葉に、心から、うん、と言ってくれればそれでいいんだ」


「……? 何だよ。そうすりゃ、解放してくれるのか? お前に襲いかかった、俺たちを」


 そんなことするわけがないな、と思っているような聞き方だった。

 実際、普通ならこういう場合、何をしようがまともな解放の仕方などしないものだろう。

 最低限、ボコボコにするとか、一生反抗するつもりが起きないようにするとか、そのレベルのことをしなければ安心など出来ないからだ。

 冒険者稼業というのは舐められると商売にならない、と考えている者も少なくない。

 見るからに強そう、と思われていた方が依頼もしやすいからな。

 まぁ、俺の場合、そういうやり方をしていないので別に多少舐められても問題はないのだが。

 見た目も子供なので、そもそもそうそう一目で強そうとか思ってもらえないというのもあって、諦めている。

 そのうち年齢を重ねていけば、それなりの貫禄はついていくだろうし。

 今はいいのだ。

 そんなことを考えつつ、俺は言う。


「解放する、と言うのとは少し違うかもしれないが……酷いことにはならないよ。で、どうする? 別にこのまま衛兵に引き渡してもいいが」


 一応の選択は与えておく。

 これは別に慈悲とかじゃなくて、そうした方が、成功しやすい(・・・・・・)のではないか、と思ったからだ。

 そんな俺の狙いに気づかず……まぁ、気付き様がないのだが……男たちは顔を見合わせる。

 視線でどうするか、会話しているのだろう。

 最終的には全員で納得したのか、リーダー格の男が深くため息をついて、諦めたように言った。


「……仕方ねぇ。こんなことをやったって報告されたんじゃ、どうせ俺たちはもう冒険者なんてやっていけねぇ。だったら、お前の言う通りにした方が、まだいいだろう」


「よし、じゃあ……」


 そこで一旦、言葉を止めた。

 この後に続く一言が、まさに重要であることは、男たちには気づけないだろうと思いながら。

 そして俺は尋ねる。


「俺に従うか?」


 と。

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