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第4章 旧アジール村にて
第122話 久々のミドローグ、冒険者組合にて

「……これと、これと、それにこれだ」


 ミドローグ冒険者組合。

 その受付に素材をいくつも乗っけていくと、冒険者組合職員が目を丸くした。


「こ、これは……一体どこで!?」


 そう言ったのも当然の話で、そこにあるのはいずれも貴重な素材ばかりだからだ。

 職員は続ける。


「……《水炎草》に《エルガの氷骨》、それに《浮遊花》! いずれもこの辺りでは決して見つからないものばかりで……だから依頼が滞っていたというのに!」


「そう思ったから、こうして持ってきたんだ。依頼自体は受けてないんだが、納品系だったから今から受けても構わないか? こういうやり方は本来、あまり好まれないのはわかっているんだが」


 納品系依頼でも、冒険者は基本的に受けてから探しに行く。

 そうでなければ、せっかく採取して冒険者組合まで戻ってきたのに、すでに他の誰かが納品しました、などということになりかねないからだ。

 もちろん、依頼者側からすれば誰が納品しても、目的の品さえ手に入ればそれで構わないだろうが、冒険者は職業である。

 しっかりと稼ぎが確保できるようなルールがなければ、こんな危険なだけな仕事を続けていこうなどとはならない。

 だからこその、ルール、ある種のマナーのようなものだった。

 例外としては、常に需要のある薬剤の素材、例えば下級ポーションに必要な素材とか、そういったものについては、依頼を受けずとも常に納めても問題視はされない。

 そういった依頼を常設依頼とか、常設採取依頼とか、そんな風に呼んだりする。

 ただ、今回俺が持ってきた品々についてはそのような依頼ではない、通常依頼なのだった。

 けれど、おそらく問題はない、という確信はある。

 実際、職員は俺の言葉に首を横に振って言った。


「いえいえ、全く構いませんよ。だって、いずれも一年も前からずっと張り出されてる《塩漬け依頼》ですからね。依頼者の方でもそろそろ取り下げようか考えていると言われていたものなんです。むしろありがたいですが……本当に一体どこで……?」


「それについては申し訳ないが、秘密にさせてくれ」


「ですよね。こんな貴重なものを採取できる狩場を教えるなんて、ないですよね」


「ま、そういうことかな」


 頷いてはみたが、実際はそういうわけではない。

 むしろ全く教えても構わないんだが、言ったところで信じてもらえるかどうか謎だし、俺の真似をする者がいても困る、と思ってのことだった。

 そんな俺の考えを知らず、職員は手続きをテキパキと進めて、報酬を数え上げ積み上げた貨幣を、ずい、と俺の方に押して、


「では、こちらが今回の報酬です」


「……依頼票に書いてあった金額よりも多いんだが……?」


 具体的には五割ほど多い気がする。

 元の金額も、その難易度に比例して極めて高かったので、それに加えて五割となると相当な額であった。

 だから本当にこれでいいのか、と少し不安になって尋ねたわけだが、職員は言う。


「先ほど申し上げた通り、一年も塩漬けになっていた依頼ですから。徐々に報酬額も上がっていったのです。依頼票には記載しておりませんが、これと思った冒険者に直接そのことを伝えて、受けるように頼んでもらえないかと依頼者の方から言われまして」


「それでも誰も受けなかった、と」


「ええ。やはりいずれの素材もこの辺りではそう簡単に手に入るものではなかったですから……でも、こうして片付けていただいたのです。これで依頼者の方にも満足していただけると思いますよ」


「それは、よかった。じゃあ、遠慮なくこの報酬はもらっていくからな」


「ぜひ。ではノアさん、またどうぞよろしくお願いします。ノアさんは来るたび、色々な依頼を片付けていただけるのでありがたいですよ。あっ、フレスコが今度来たときは組合長室に顔を出すようにと申しておりました。今は出ているので、また後でもお時間がありましたら……?」


 最後にこうしてそっと出しのように言ってきたのは、俺が面倒臭いと考えると思っていたからだろう。

 事実、フレスコからの呼び出しとなると少し面倒なのは確かだ。

 最初の方は大分遠慮している部分があったが、最近は本当にそう言うのがなくなってきたからな。

 まぁ、それだけ俺がこの街や冒険者組合に馴染んできたということに他ならないから、いいんだけどな。

 ただ、会うとそれこそややこしい依頼とか、面倒な依頼を投げられること頻繁なので、できれば遠慮したくもある。

 直接の呼び出しだから、そうもいかないだろうが。

 そこまで考えてから、俺は仕方なく職員に頷き、言った。


「……わかったよ。俺はこれから少し用事があるから、それが終わった後でいいなら」


「もちろんです! では、フレスコが戻り次第、伝えておきますね!


 ******


「さて、あんまり時間はないんだが……この辺りでどうだ?」


 俺は冒険者組合から出て、しばらく路地裏を歩いた。

 徐々に人通りが少なくなる通りに進んでいき、とうとう、誰もいない広場に出る。

 けれど、見えないが気配は確かにあり、俺はその気配に向けて話しかけたのだ。 

 すると、ぞろぞろと五人ほどの人間が出てきて、武器を抜き出した。

 それから、彼らのうちの代表と思しき男が俺に剣を向けて、言う。


「さっきの金と、素材の採取場所を言え」


 端的な脅しに、合理的だな、と思いつつ、俺もまた剣を抜いた。

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