挿絵表示切替ボタン

配色








行間

文字サイズ

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
117/128
第4章 旧アジール村にて
第117話 着々と進む村づくり

「おっ、もうここまで出来たのか。すごいな……!」


 教会建物の外に出て、カウスとメリクーアの作業の進み具合を見てみようということになった。

 それでクザンと共にやってくると、鍛冶場となる場所には炉などが設置されている上、それを覆うべき建物すらもうほとんど出来上がっていた。

 もちろん、建物の方に関してはあくまでも仮のもの、という感じだがそれでも相当に出来上がりが早い。

 ドワーフの技術の凄まじさを改めて教えられたような気分だ。


「おぉ、ノアか。まぁドワーフが二人もいりゃ、こんなもんよ」


 そう言ったのは、ミドローグ鍛治師組合長のカウスである。

 その隣にいるメリクーアも頷いて、


「全くだぜ。こんなの余裕だ」


 と言い切った。

 しかし、


「ただなぁ……」


 と少し悩み事があるようで、これに気づいたクザンが尋ねる。


「どうかしたのかい?」


「いや……鍛冶場自体はこれでいいんだけどな。これからここで色々物作りをしていく訳だろう?」


「それは……そうだよね?」


 クザンは俺の方を見て確認してきたので、俺が頷きながら答える。


「あぁ、そのつもりだ。俺も俺で、できれば鍛治技術は身につけたいから、教えてくれないかと思ってるんだが」


 ついでに頼みにくい話の方も先にしておく。

 するとカウスが、


「お前が鍛治を!? 本気か!?」


 と驚いたように叫んだ。


「なんだよ、悪いのか?」


「いや、そういう訳じゃないが……お前、この村の村長だろう。他にもやることがたくさんあるんじゃないのか? 特に開拓村なんだから、鍛治などやってる暇が捻出できるとは思えんが」


 なるほど、どうやらカウスは心配してくれたらしい。

 しかしそれは無用だ。

 俺は言う。


「開拓村といっても、特段、外から人を入れる予定はしばらくのところないからな。ある程度、形が出来るまではそこまでやることもないだろうさ」


「そうなのか? いや、しかしカタリナ様はそんなつもりはないようだったが……?」


「……何?」


 それは初耳だ。

 というか、そもそもカタリナとはこの村についてそこまで詳しくは話していない。

 もちろん、手続き的なことやこれからの権利関係がどうなるかとか、その辺りについては詳しく話したのだが、この村をどうしていくつもりかとか、そういったことについてはそのうち、ということになっていた。

 これを俺は、俺の方がある程度落ち着いたその時に、と解釈していたのだが……。


「……なんだ、カタリナ様とは話していなかったのか」


「……まぁな。話さないとならないとは思ってたが、とりあえずの寝床を作るのに忙しくて、ミドローグに行く暇もなかったし……カウスは何か聞いたのか?」


「あぁ。というか、俺が来たのはそもそもカタリナ様から、その辺りについて色々聞いたのもある。この開拓村についてはミドローグが全面的に後見するので規模も大きくなる。だから、職人などの移住も視野に入れておいてほしい、と。まだ先の話だが、鍛治師組合も人員についてある程度目星をつけておいてくれれば助かる、とな」


「ミドローグの職人連中が普通よりずっと協力的だったのは、それが理由だったのか……なるほど」


 俺がミドローグの街でいくつか依頼を受け、職人たちとある程度の関係を築いてきたが故に好意的に振る舞ってくれているのだ、と思っていたのだが、それ以上にミドローグの権力者であるカタリナの影響が大きいらしかった。

 まぁ、当然か。

 いくら個人的に親しくても、流石にそれなりの大きさの都市の鍛治師組合長が、こうしてわざわざ開拓村にまで直接来てくれるなんていうのは普通はありえないことだからな。

 カタリナに色々勝手に決められているように思われるが、そもそもそうしてくれなかったらこれからの村の発展があまり進まない可能性もある。

 だからこれは感謝してこそすれ、恨むべき話ではないだろう。

 せめて事前に言ってほしかったと思うが、まぁ、それも俺がミドローグに中々戻れないのが悪いといえば悪い。

 近いうちに話し合いに戻るとは言っていたのだが、それも少しばかり延期してしまっているしな……。

 

「ここらで一度、カタリナと相談しに行った方が良さそうだな」


「おう、そうするといいだろう」


「ただ、これからここに職人たちがまだまだやってくる予定なんだが……」


 どうしたものかな、と悩む。

 指示を出せるのは俺だけだ。

 キャスもコボルトたちにも無理だし、クザンにいきなり任せるというのも気が引ける。

 しかしこれにはカウスが、


「職人たちなら俺の方で仕切っておいてやるよ。別にまだ村づくりに何か細かいこだわりがあるって訳じゃねぇんだろ?」


「今のところはな。まず住める家と、宿になるような建物をいくつか作ってもらえればそれでいい。あとは生活用品とか揃えて……というくらいだ」


 村が徐々に大きくなって土地が足りないとか区画を整理したいとかなったら、その時に改めて考えればいい。

 そんなことを考えるのも烏滸がましいほどに、今ここにはほとんど何もないのだから。


「なら大丈夫だ。任せておけ」


「悪いな……じゃあ、頼むよ」

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、下の☆☆☆☆☆を全て★★★★★にしていただければ感無量です!

ブクマ・感想・評価、全てお待ちしておりますのでよろしくお願いします。

ブックマーク機能を使うには ログインしてください。
いいねをするにはログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
※感想を書く場合はログインしてください
追放貴族は最強スキル《聖王》で辺境から成り上がる ~背教者に認定された俺だけどチートスキルでモフモフも聖女も仲間にしちゃいました~1 (アース・スターノベル)」 本作が書籍化しました! 2月16日発売です! どうぞご購入いただけると幸いです。 どうぞよろしくお願いします!
X(旧Twitter)・LINEで送る

LINEで送る

+注意+

・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
▲ページの上部へ