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第4章 旧アジール村にて
第116話 クザンとの相談

「さて、これからのことなのだけれど」


 クザンたちを迎えて次の日、色々と話し合いをしようと教会の礼拝堂……唯一今のこの村において取れる集会場になる……に集まったのだが、クザンがいきなりそう言い出したので俺は、


「おい、唐突に仕切り出すなよな」


 と止める。

 まぁ、正直なところ自由にさせてもいいのだが、キャスやコボルトたちの視線が若干怖い。

 それについてはクザンもわかっているようで、肩をすくめて、


「……冗談だよ。でも、これからのことは真面目に考えた方がいいからさ。ノア、君はどのくらいこの先のことを考えてる?」


 と尋ねてきたので、俺は一応、これからやろうと思っていることを話す。


「まぁ、そうだな……。いくつかあるが、まず大まかな目標として、この村を大きくしたい。具体的には、近くの都市であるミドローグくらいまでになれたならいいな、と。そのためには武力と経済力が不可欠だから、その辺りもどうにかしたい。で、そういうものを得るためには、まず村民集めからしないといけないなってのは分かってるぞ」


 するとクザンはなるほど、と頷いて、それから、


「流石にちゃんと計画立てては考えているみたいだね。でも、他に考えておいて欲しいことがあるんだ」


「なんだ?」


「村としてあるためには、しっかりとした設備というかな、そういうものがいるってことだよ」


「設備というと、井戸とか宿とかそういうことか?」


「いや、そうじゃなくて……通常、都市にはそれぞれ、行政組織があるわけだけど、そういった組織には大抵設置されているものがある」


 そこまで言われて、流石の俺も理解した。


「あぁ、魔道具関係だな……」


「その通り」


 クザンがこれについて言及したのはよく理解できた。

 この場合の魔道具関係、というのは、都市や村の運営に不可欠な魔道具を指す。

 もちろん、それぞれの街や村によって捻り出せる予算は色々なので、全ての自治体が共通して持っているとまで言える魔道具は少ないが、最低限あった方がいいもの、というのはある程度定義できる。

 今、一番必要そうなものをあげると……。


「偽証看破系の魔道具があった方がいいよな?」


 これは、たとえば盗賊なり犯罪者なりがやってきたときに、そいつが言っていることが本当かどうかを判別するのに役立つ魔道具である。

 ただし、そう言ったものはかなり手に入りにくい上、回数制限があるものだ。

 遠距離通信系も同様で、行政にあると非常に便利なものというのはそういう傾向がある。

 開発も進んではいるのだが、魔道具職人組合とかと契約して定期的に確保するとか、そういう方法によらなければなかなか、必要数を定期的に手に入れる、というのは難しいのだった。

 この点はクザンもよくわかっているようで、


「もちろんそうだけど、そういうのはそれなりの予算がないと厳しいから……お金、ある?」


 教会の内部を見ながらそう言ったので、彼もこの村にさほどの金はないことはわかっているのだろう。

 俺も苦笑しつつ答える。


「見ればわかるだろ。だが、そういうことなら……」


 別にクザンが無理難題を俺に言うためにこんな話をしているわけではないことはわかっていた。

 だから、続きも想像できた。

 俺の言葉の先をついで、クザンは頷いていう。


「まぁ、迷宮産出品を獲得するのが一番だろうね。もちろん、迷宮に潜ろうとも必ず手に入ると言うものじゃないけど……挑戦する価値はあると思うよ。流石に今すぐ、とは言わないけど、少し考えておいた方がいい」


「あぁ。ただ、それまではどうするかが問題だが……」


「その辺りはね。メリクーアに頼るといいさ。彼女は鍛治師だけど、同時に魔道具もそれなりに作ることができる職人でもある。ドワーフだからね。使用回数制限があるものなら、多分作れるはずだ」


「お、本当か。なら頼らせてもらいたいな……」


 加えて、俺もまた《魔工》技能があるから、それを成長させるチャンスかもしれない。

 ドワーフの技術を目の当たりにすれば、そこから盗んで技能のレベルを上げることもできる可能性もある。

 

「今、彼女たちは?」


「メリクーアとカウスは朝から鍛冶場作りをしているよ」


「おぉ、確かに昨日のうちに、ここになら作っていいって言っておいたが、仕事が早いな」


「分かって雇用したのかは知らないけど、カウスはミドローグ鍛治師組合の組合長だし、メリクーアもミドローグでは新参者とはいえ、数少ない一流のドワーフ職人だからね。彼らは疲れを知らないことは、ノアも知ってるでしょ?」


「そりゃあな。向こう(・・・)でも、ドワーフたちはどこにいても、俺たちに好意的な気のいい人たちだった。元気でやってるのか?」


 向こう、とはつまり、オラクルムのことだ。

 この場にはクザンと俺、それにキャスとマタザ、リベルしかいないのだが、誰が聞いてるか分からないからこその言葉遣いだった。

 これにクザンは苦笑しつつ答える。


「少なくとも、僕が向こうにいる間は元気にやってたさ。君のお父上だって、しっかりとやってるんだから、心配はいらないよ」


「なら、よかった。いずれ会いに行けたらいいんだがな……」


 果たしてそんな日が来るのか。

 今の俺には想像もつかない。

 けれど村を発展させていけばいずれは……そんな夢を持ってもいいだろう、と心の奥底で思ったのだった.

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