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第4章 旧アジール村にて
第108話 クザン、尋ねる

「なんだ、やっぱり来てたのか。ってことはお前のお父さんも一緒か」


 ノアが僕の顔を見て、深く納得したような感じでそう呟いた。

 僕はそれに驚く。

 もちろん、僕が父と一緒に来ていることを、見てもいないのに言い当てたからだ。


「なんでそんなこと知って……」


 そう尋ねる僕に、ノアは当たり前のことを告げるように言ったよ。


「だって、このパーティー、うちで開いたものだぞ? 誰が来てるかくらい知ってるよ」


 そう、彼はこの時のパーティーの主催者一家だったんだ。

 それならば、全て納得が出来る、と今ならわかるんだけど、当時は流石にね。

 まだ七歳だ。

 彼の方は……かなり高度な教育を受けていたから、その頭脳はすでに大人に匹敵するところすらもあったわけだけど、僕の方はね。

 剣術の方ならそれなりに使えたけど、知識とかの方は正直あんまりだった。

 だから僕は慌てて彼に聞いたよ。


「えっ!? じゃ、じゃあ、僕が誰かも……!?」


 ノアはこれにも軽く笑って、頷いて言った。


「そうだな、分かってるよ。まぁ、分かったのは今ここで会ったからなんだけどな」


「……?」


「ま、それはいいだろ? それよりも……久しぶりだな。元気だったか?」


 そう言って笑うノアの表情は屈託がなくて、しばらくぶりなのだと思えないほど距離が近く感じたよ。

 だから僕も素直に口に出した。


「久しぶり……って、そうだけど! なんで言ってくれなかったんだよ!」


 ただ、すぐにそう叫んだ。

 当然だろ?

 色々と言いたいことがあってさ。

 ただノアは……多分、大体僕が言いたいことがわかっていてもなお、余裕の笑いを浮かべて言った。


「何をだ?」


 そんな彼に、僕はなんだか毒気というか、勢いが抜かれちゃってさ。

 少し静かになって、それから改めていくつか、《何を》言ってくれなかったのか、の《何》の部分をいくつも挙げた。


「何をって……このパーティーを開いたのが、お前の家だとか、僕の父さんと知り合いだとか、後はどうして秘密基地に来れなくなったのかとか……」


「だって別にそこまで強く聞かれてないしな。それにお前にそんなこといつ言えたって言うんだ? どうしようもなかっただろ。まぁ、言えないってのもあったけどさ。あとな……お前のお父さんは、俺とお前が会ってること、分かってたみたいだぞ。まぁ当たり前か。あの人が俺の護衛してたんだろうから、あの秘密基地にだってこっそり来てただろうしなぁ」


 ここに来て、流石に彼にも隠すつもりはないらしかった。

 つらつらと色々な情報を僕に言ってきた。

 どれについても意外で、僕はそれを一瞬では受け止めきれなかったけど、その中でもまず、気になったのは……。


「父さんも……じゃあ、僕がお前に負けたところも見てたのか……?」


 そのことだった。

 あの瞬間を……と言っても、何度となくノアには負けているのだけど、この場合のあの瞬間というのは、一番最初にノアに負けた時のことだね。

 それを父に見られていたと言うことが、たまらなく恥ずかしく感じたのだ。

 敗北を知られたから、とかそう言うことじゃなくて。

 僕の……なんと言うかな。

 最も見られたくなかったものをいつの間にか見られていた感覚というか。

 説明し難いけど、分かるだろう? 

 そう言う感じだよ。

 けどそんな僕の心配に、ノアは少し首を傾げてから、


「それは分からないな。お前のお父さんは忙しい。流石に毎回俺たちの模擬戦を観察しに来てたわけもないだろう」


 そう答えた。

 確かに父の仕事はノアたち一家から来る、護衛仕事が基本だけど、他にもやることは色々あるといつも言っていた。

 まさかノアが街中を散策しているのにずっと張り付いているわけもなかったからね。

 これには僕も納得したよ。


「……そっか。なら、いいかな……」


「俺に負けたところを見られるのがそんなに恥ずかしいか?」


「それは……っ! 別にいいんだけどさ。なんだかね……あんまり」


「よく分からないな……」


「そ、それより、ノアはここで何をしていたんだい?」


「ん? お前こそ」


「あぁ、僕はね……」


 そして、僕はここに来る羽目になった顛末というか、会場でのあれこれをノアに言った。

 すると彼は笑って、


「なるほどな。確かにお前の顔、だいぶ整ってるもんなぁ……今日のパーティーに呼んだのは、お前の家に身分的に近い人たちだし、そうなると、娘の方も結婚相手を探すくらいのつもりで来てるのも結構いそうだな」


「け、結婚相手って、僕、七歳だよ!?」


「女は七歳でも五歳でも三歳でも女だからなぁ。お前、小さい女の子におままごとにつき合わされたことないのか? あの秘密基地に集まってた奴らにだって、女の子はたくさんいただろ?」


「それくらいあるけど……あれはあそびだろ?」


「あそびだが、同時に将来を見据えた上での唾付けでもあるらしいぞ。うちの母上が言っていた」


「ええ、まさか……」


 ******


「お前、本当にモテてたんだな」


 メリクーアが呆れたようにそう言った。

 僕も同じく微妙な笑みで、


「まぁ、そうみたいだったね。でも実際に渦中にいるとそこまでいいもんでもなかったよ」


「そう言うもんかねぇ……」


「さぁ、続きだ。長い断絶を経て、そんなことなんてまるでなかったみたいにそんな風に楽しく話し始めた僕らだったんだけど……」


「また大袈裟な」


「大袈裟でもないさ。それくらいの気分だったよ。で、そんな僕らに後ろからふと、声がかかった」


 ******


「あの……」

読んでいただきありがとうございます!

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