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第4章 旧アジール村にて
第101話 村の現状とこれからの展望

「……まぁ、ここにいる皆だけで作った割にはそこそこ村っぽくなったんじゃないか?」


 ほぼ完成した旧アジール村の全景を、入り口に当たる場所から眺めながら、俺はそう呟く。

 キャスやコボルトたちと、ほぼゼロからこの村を作り始めて一月ほどが経過した。

 教会建物はとりあえず石造で頑丈だから、掃除して補強した程度だが、それを中心にして、コボルトたちと木造の家屋を五軒ほど建てている。

 勿論、そちらは所詮は素人仕事に過ぎないので一階建ての極めてしょぼい建物に過ぎないのだが、コボルトたちの家族がそれぞれ一軒ずつ使うと考えると多いくらいだ。

 コボルトたちは、コボルトソルジャーであるマタザとリベルを除くと、今は十五匹いる。

 以前と比べて数が増えているが、これはここで生活していたら野生のコボルトが襲いかかってきたからだな。

 倒した結果、まだ息があったものが俺に従い、《従属契約》によって増えた形になる。

 大人のコボルトが十匹、子供のコボルトが五匹、という構成になり、まぁ、今後もコボルトの数は増えていくだろうが、この人数であれば家は五軒あれば十分だろう。

 コボルトたちはそもそも、家族ごと暮らすというより群れで過ごすのが基本なので、家も家族ごとに使うというより眠る時だけ好きなところを使う感じになってしまっているから余計に。

 犬獣人にも群れという概念はあるのだが、コボルトほど野生に近くないのか、家はちゃんと家族ごとに持つものらしいので、この様子をよく犬獣人が知る者が見れば違和感を感じるかもしれない。

 そのため、出来る限り家族ごとに使うように意識をしてくれないかという話はしている。

 勿論、それが本能に逆らってきついとか、精神的に問題があるとかいうのなら諦めるけどな。

 別に外部から人を大量に呼んだりする予定は今のところないので、しばらくは大丈夫だろう。

 とはいえ、だ。


「……そろそろ来るはずなんだよな」


「わふわふ、わふ?(冒険者組合を通じて依頼していた、鍛治師や大工たちがいらっしゃるのでしたか?)」


 マタザがそう言ったので、俺は頷く。


「あぁ。とりあえずの住むところを作るくらいは俺たちにも出来るけど、やっぱり本格的なちゃんとした建物は難しいからな。それに農業したり、森を開拓していったりもしていかなきゃならないし、そうなると細々とした道具類も必要になってくるだろう。鍬とかさ。購入する、でもいいんだけど、長期的に考えるとやっぱり鍛治出来る人間は欲しい」


 あわよくば《従属契約》を、とかも考えなくはないが、流石にそれはよくないなと思っているのでやるつもりはない。

 それができれば俺が鍛治に関する技能を身につけて、それをコボルトたちなどに教え込むこともできるため、村の発展にとってもいいのだが、流石にな。

 非人道的すぎるだろう。

 襲いかかってくる相手に対して《従属契約》を仕掛けることには特段何の心の痛みも感じないのだが、普通に仕事に来ただけの者を騙してそれをする気にはならない。

 まぁ、本当に自分の安全とかだけを考えるなら、次から次へと《従属契約》していくのが一番なのかもしれないが……いや、それも怪しいかもしれないな。

 少なくとも完全に自由意志を取り除くようなタイプの契約ではないことは、フォルネウスとの会話で理解した。

 だから、もし人間に《従属契約》を仕掛けたとして、そいつがどこかで俺の技能についてしゃべったりする可能性もゼロには出来ない。

 命令すればなんとかなるかもしれないが……そういうのも含めて、まだまだはっきりとは分かっていないことが多すぎる。

 今はまだ、あまり冒険に出過ぎるべきではない、と思う。

 せめて、この村拠点がある程度発展するまでは。

 ただ、勿論その間全く自分の技能について試さないというわけではなく、人間相手ではなく魔物相手に使っていきたいと考えている。

 魔物であれば、人間のようにベラベラ誰かに喋るということは基本的に出来ないからだ。

 そもそも独自の言語すらを持たないような魔物ならな。

 コボルトのような存在であっても、その言葉を理解できるような者は相当少数派だろうし。

 新しくコボルトと《従属契約》したのは、その始まりとして、という意味合いもあったのだった。


「わふ、わふわふ(しかし、今回来ていただく方達はここに長く居付かれる訳ではないのでは)」


「勿論そうだ。だが、とりあえず職人に来てもらって、ここでの仕事がそう悪いものではないということを分かってもらいたくてな。そうすれば、呼びやすくなるだろうし、そのうちここに長く住んでくれる奴らも現れるだろう。気が長い話だけどな。それと、彼らの仕事をお前たちにも見てもらって、出来ればその技術を盗んで欲しい。アトに対してやったようにさ」


「わふ!わふわふ(なるほど!そういうことでしたら是非に)」


 アトは俺たちに技能を色々教え込んでくれたが、彼女が俺たちに教えてくれたことで最も重要だったのは、教わるのではなく盗むのだ、ということだった。

 別に本来の窃盗とかとは違うが、相手の技術を見て、分析し、そして自らのものとするにはそれなりのやり方があって、それは全てに応用可能だから、と。

 幸い、アトには多くの技能があったので、それもまた練習が可能だった。

 そこで得た経験を活かせれば、鍛治師や大工たちのそれもまた、拙いかもしれないが身につけることは出来るかもしれない。

 無理なら無理で、金を払って教わってもいいし……。

 まぁ、なんというか夢が広がるな。

 そんなことを考えていると、遠くから馬車の音が近づいてくるのが聞こえてきた。


「どうやら来たらしいな。出迎えに行くぞ」


「わふ!(はい!)」

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