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第3章 《煉獄の森》の外
第89話 奇妙なこと

 暗く先の見えない階段を降りていく。

 思ったよりも深さがあって、このくらいの大きさの建物の地下室にしては意外だった。

 全くあり得ないわけではないが……こんな深さ、必要かな?

 そんな感じだ。


「……お、そろそろか」


 階段の終端が見えたので、俺はそこで後ろからついてきているマタザたちに止まるよう、合図する。

 彼らは俺よりも先に行くと言っていたが、俺とキャスの方が不意打ちにも強いだろうからそれは遠慮しておいた。

 ちなみにキャスは定位置、つまりは俺の肩の上に乗っている。

 自分の足で歩け、と言いたくなるが、別に常にここにいるというわけでもないからな……文句も言いにくかった。

 それに今はここにいてもらっていた方が俺も安心だ。

 何か反応できないものが飛び出てきたとしても、キャスに魔術で撃退してもらえるから。

 なんて、他力本願すぎるから、自分でもしっかり警戒しているが。


「……別に、危険なものはない、かな」


 街で調達した灯り取りの魔導具……《灯火トーチ》……とか呼ばれることが多いもので光はとっている。

 だから少し先くらいは階段を降りる最中でも十分に見えていたが、地下室に入ったことで全体がぼんやりと照らされて明らかになった。

 それなりに広い空間で、完全に端までは見ることはできないが、それでも大まかな形は分かる。

 広めの長方形の部屋で、上……つまりは教会建物の礼拝堂部分よりも若干広い感じだ。

 作りも非常に似ている……まぁこれは同じ建物だから当然、なのかな?

 微妙なところだ。

 地下室なのだから、物資を積んでおくための物置とかになるはずで、だとしたらそこまで作りは似ないのでは、と思えるからだ。

 なぜかこちらにも、上と同じような身廊や、それに奥の方には祭壇がある。

 上にある祭壇とは……何か少し違っている気がするな。

 禍々しいというか。

 祭壇の上には何かを象ったような象徴が安置されていた。


「……これは……」


 俺はつい、何も考えずに手を伸ばす。

 こういう時はもう少し慎重になるべき、というのは痛いほど分かっていたはずなのに。

 しかし、そこでよく考えて行動できるような人間だったら、こんな状態には陥っていないだろう、きっと。


 そんな不用意に伸ばされた俺の手を、


 ーーガッ!


 と、何かが掴んだ。

 俺が慌てて腕を引くと、


「わふっ!(殿!)」


 マタザが何か異変を察知したのか、そんな風に声を上げた。

 意外なことに、キャスは俺の腕を掴んだ手に反応していない。

 

「にゃ……?」


 首を傾げている。

 なぜだ?

 分からなかったが、次の瞬間、


「……それを動かすのはちょっとやめてくれないかな」


 そんな声が耳元で聞こえた。

 俺は驚いてそちらを見ると、そこには一体いつの間にか現れたのか、妙な人物が立っていた。

 俺の腕を掴んでいるのも、その人物で、後ろから手を伸ばすような形だった。

 俺が思い切り引くと同時に、その人物の手もパッと離された。

 ……いや、離されたように見えた。

 なんでこんな言い方になったかといえば、ずっと腕を取られていたというのに、何の感触も感じていなかったからだ。

 ただ、視界の端にその手が現れたのが見えたから俺も気づいただけで、感触からではなかったのだ。


「お前は……」


 俺はそのまま腰から剣を抜こうと、剣の柄を掴む。

 しかしその人物は慌てたように、


「ちょっと待った! 別に僕は君に、いや、君たちに危害を加えるつもりはないんだ。そもそも……そっちの二人は、獣人……いや、もっと源に近いかな? もしかして、コボルト?」


 そんなことを言った。

 何も言っていないのに、なぜそこまで分かるのか。

 俺はますます警戒を強くする。


「何者だ? なぜ、こんなところにいる? お前は……獣人なのか?」


 最後の質問は、その人物の見た目がまさに獣人のそれだからだ。

 いわゆる羊系の獣人族のように見える。

 顔立ちは普人族とほとんど変わらないが、頭に巻かれた巨大な角が、普人族とは異なる種族であることを示していた。

 身につけているものは……何か妙だな。

 ひらひらとした貫頭衣で、真っ白だ。

 こんな場所にいたにしては全く汚れが見えない。

 ここまで歩いてきた俺たちは結構汚れているというのにである。

 俺の言葉が聞こえたのか、その人物は言う。


「いくつも質問されるとどれから答えるか迷うところだけど……まず答えやすいものから答えよう。僕は、獣人ではないよ」


「……普人族にも見えないが?」


「そりゃあ、そうだろうとも。僕はいわゆる人類ではないからね」


「何を言って……」


 言葉の意味が分からなかった。

 しかし、そいつは俺の顔を穏やかな笑顔で見ながら、普通に続けた。


「気持ちは分かるけれど、そうとしか言いようがないんだ……もっとわかりやすく言うなら、そうだね。僕は、それだよ」


「それ?」


 我ながら馬鹿みたいだ、と思ってしまうが、そのまま尋ね返した俺に、そいつは腕をあげて指をさし、言った。


「さっき、君が動かそうとした、それさ」


 言われて俺は慌てて《それ》を見つめる。

 祭壇の上、存在している何かの象徴。

 それは、羊系の獣人を象ったような、人形だったのだ。

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