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第3章 《煉獄の森》の外
第80話 街に戻って 

 そんな感じで俺たちは色々な素材を拾い集めた後、意識を失ったままの魔術師組合長を連れて馬車に乗り、そのままミドローグの街に戻った。

 ちなみに、得られた素材はスケルトンキングの骨や魔石の破片の他、スケルトンキングが持っていた魔剣に鎧も含まれる。

 いつもだったら持ち帰るのにどうしようか迷うところだが、今回はカタリナが出してくれた馬車がある。

 乗り合いのものではなく、しっかりと彼女自身が所有しているものなので、荷物をいくら乗せたところで超過料金を取られたりはしない。

 しっかりと甘えさせて貰った。

 また、魔術師組合長個人の持ち物も俺の戦利品と言えば戦利品なのだが、こいつに関してはカタリナたちが持っていきたいだろうと思ってあえて辞退した。

 もちろん、価値ある魔道具の類いを沢山持っていたので、有用なのは間違いないのだが、カタリナに恩を売ることを優先することにしたのだ。

 しかし、カタリナは結局、調べ終わり次第、俺にすべて引き渡すか、もしくは相場で買い取ると言ってきた。

 倒したのは俺なのだから、俺が持っていく権利があるだろうと、そう言って。

 これはカタリナが俺に借りを作るのを嫌った……と捉えることも出来るが、今更な話だ。

 そういう気持ちが少しでもあるのなら、今回だって俺に頼ることはなかっただろう。

 つまりこれは純粋に俺に気を遣ってくれただけだ。

 まぁ、俺としてもそうしてくれるのなら非常にありがたいし、あえて断る理由もない。

 だから、もしも欲しいものがあったら優先的に買い取ってくれて良い、ということにして、カタリナの提案を受け入れたのだった。


 *****


「……魔術師組合長が、か。まぁあいつは確かに怪しい奴だったが、死霊術にまで手を出していたのは意外だったな」


 報告のため、冒険者組合に戻るとフレスコが執務室で感慨深げにそう言った。

 カタリナは冒険者組合を通した形で俺たちに依頼をしてくれたので、報告義務があるわけだ。

 ただ、事の性質上、依頼内容自体、冒険者組合長を除く職員たちには伏せられた形になっていた。

 そんなことも出来るのだ。

 権力者には。

 まぁ、カタリナには残念ながらそこまで大きな力はないわけだが、今回についてはカタリナとフレスコの個人的な繋がりからそれが出来ただけだな。

 目的もこのミドローグの発展で一致しているわけだし。

 そういう動きの中で、魔術師組合長はいささか邪魔だったのだろうな、と思う。

 

「怪しかったのか?」


 俺がそう尋ねると、フレスコは深く頷いて答えた。


「おぉ、怪しいも怪しいぞ。参事会員であるのは間違いなかったが、街の発展のためにと提案された計画なんかにはほぼ全部反対する奴だったからな」


「それは立場の違いとかでありうることなんじゃないのか?」

 

 フレスコやカタリナからすれば確実に街の利益になると思ってした提案であっても、魔術師組合長にとっては都合の悪いものである、などということはざらだ。

 たとえば、街の発展はするけれども、魔術師組合の利益が僅かになるような提案だったり、場合によっては存続すら怪しくなるようなものだってありうるだろう。

 そういうとき、魔術師組合長は自らの立場や組合それ自体を守るために反対に回らざるを得ない。

 普通の話だ。

 しかしフレスコはそんな俺の指摘に首を横に振った。


「いいや、そんなことじゃあなかった。俺もカタリナ様も、最初の内はそういう、魔術師組合長の力を削ぐような提案も多くしていたさ。敵対してるのは明らかだったんだからな。可能な限り、こっちが主導権を握れるように、って考えるのは当然の話だ」


「だったら……」


「だがな、あまりにも状況が膠着しすぎてると……結局どっちの為にもならねぇ。そういうことが分かってきた段階で、俺たちは譲り始めたんだ。あんまり良くねぇことだが、まぁ、同じ街に住む仲間だ。譲れるところは譲って、全員で発展していけるならそれでいいじゃねぇか。そうも思ってな。だから、ここのところの提案はほとんど、向こうが不利とかそういうこともなかったはずだ」


「それなのにずっと反対を? まぁ確かにそれはおかしいかもしれないな……」


「他にもある。どうもあいつはこの街に人を呼び込みたくない様子だったんだよな。人の往来が盛んになるように、と街道の整備とか、祭りの企画とかしてみても、あいつはそんなものに金をかけるなと強く言ってた。で、そんな中、ここに来て……」


「あぁ、街道周りでの商人たちへの襲撃多発、か。確かにそうなってくるとほとんど犯人は絞られたようなものか」


「そういうこった。だが、そうはいっても魔術師組合長だからな。怪しいこと限りないとはいえ、直接手を出してるとかそういうことはないだろうと願ってた。それなのに結果はこれだ。全く……」


「結局何のためにこんなことしたんだろうな、あいつは」


「そりゃ俺にも分からねぇが……」


「これから参事会の方で奴の尋問を行うんだろう? 内容については……聞くわけにはいかないだろうな」


 俺は別に参事会のメンバーというわけではない。

 あくまでも、カタリナから護衛を頼まれただけに過ぎない人間だ。

 もちろん、今回のことにここまで関わっているのだからどんなことがあったのかは知りたいが、踏み込んで良い分というものがある。

 今回の、魔術師組合長の尋問の内容に関しては流石に駄目だろうと思っての言葉だった。

 けれど意外なことにフレスコは、


「いや、いいんじゃねぇのか? カタリナ様もお前には多分話すつもりだろう」


「え?」


「今回のこと、一見解決したように思えるが、もう一波乱くらいありそうに思えるからなぁ。あの人もそういうことには鋭い。お前の力を借りるためには話しておいた方が良い。それくらいのことは考えておられると思うぞ」

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