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第3章 《煉獄の森》の外
第69話 証

「……わふ……? わんっ!!」


 リベルかマタザかどっちのものかはわからなかったが、そんな声が聞こえたので俺は振り向く。

 するとそこには二匹ともいて、手に何かを持って二匹で相談するように目を合わせていた。

 俺が近づくと、


「わふ……? わふ(これは一体……? あ、主)」


「わふ……わふわふ(いいところにいらっしゃった。これについてなのですが)」


 ちょうどいい、と言った様子でそして何かを差し出してくる二人。

 リベルの方の手というか、前足の肉球の上に、それは乗っていた。

 それはメダルだった。 

 複雑な文様が刻まれていて、そこそこ価値がありそうな品だ。


「へぇ、メダルか? でも貨幣ではないな……何かの記念品か、それともどこかの家のものかな……俺には見覚えはないから貴族家のものではないかな……いや、有名でないだけかもしれないから、後でカタリナに聞いた方がいいか」


 そんなものだった。

 ちなみに魔力も特段感じない。

 いや、若干、残滓のようなものがないではない、かな?


「わふわふ?(人間の貴族はみんな、こんなものを持っているのですか?)」


 リベルのそんな質問に、俺は答える。


「みんながみんなというわけじゃないけどな。自分の家の紋章なりなんなりを刻んだ品というのは普通に持っているものだよ。メダルのようなものの場合は、自分の部下とか、知り合いとかに渡して後ろ盾があることを示すために使ってもらうために作ることが多いかな」


 オリピアージュ家のものも存在しているが、俺は追い出された時に全て取り上げられたので現物を示すことはできない。

 ただ、このメダルはそれと作りが似ていた。

 もちろん、刻んである紋章は全く別だし、メダルそれ自体の材質も異なる。

 オリピアージュ家のそれは、偽造防止のためにかなりの技術が使われていたし、材質も魔銀をこれでもかというくらいに使っている。

 偽造でそんなものを作れば普通に金貨が何枚、何十枚と吹っ飛んでいく品だ。

 そして露見すればかなりの重罰が科されることになる。

 今の俺がオリピアージュ家のそういう品を持っていたら罰をくだされる方になるのは間違いないので、取り上げられていて却ってよかったかもしれないな。

 そんな俺に、リベルがふと思いついたように言う。


「わふ……わふ?(そうなのですか。主人は作られないのですか?)」


「俺が? 俺が作っても仕方ないかな。使い所もないしさ」


 渡すべき知り合いというのも特段いないわけだし、そもそも俺が後ろ盾についたって何の権力もないのだからあるだけ無駄だ。

 そう思ったのだが、これにマタザが、


「わふ!(殿にお仕えしている者としての証が欲しいですぞ!)」


 と言い出し、これにリベルが賛同する。


「わふわふ!(私もです!お願いします、作ってください!)」


「えぇ……いや、作っても仕方ないと思うし、そもそもこんなものどこに依頼すればいいんだ……?」


 オリピアージュ家のそれはドワーフの職人とかに頼んでいたような記憶があるが、細かい手続きとかは家宰やらに任せていたから俺も詳しくは知らない。

 それに知っていても当時頼んでいたところは最高峰の職人だろうから、こうして追放されてかなり経済的に不自由な俺のような人間が依頼できるようなところでもないだろう。

 金は貴重だ。

 そのことを俺はこうなってからひしひしと感じている。

 もちろん、森の中に籠るんだったら全く必要ないのだが、街にいるとどうしてもな。

 買い食いとかしたくなってくるし、いろんな道具を買いたくなってしまう。

 メダル程度に金をかけるのは……。

 そんな俺の気持ちを肩の上のキャスが察したのか、


「にゃっ! にゃにゃ」


 リベルとマタザに何か、命令するように伝える。

 内容の細かいところは俺にはわからない。

 が、なんとなくはわかる。

 要は、金がかかることはやめるように、ということと、何か証が欲しいというのなら安いものならきっと大丈夫であろう、ということだった。

 おい、具体的な提案までするなよ。

 と一瞬思ったが、リベルとマタザはなるほど、と言った表情で、


「わふ!(値段などいくらでも構いませぬので、どうか!)」


「わふ!わふわふ!(素材も森の木で構いません!主人が手から何かをいただきたいのです……!)」


 そんなことを言ってくる。

 何がこれほどまでに彼らに忠誠を誓わせるのか、と思うが、まぁ、俺の技能の力なんだよな、とすぐに理解する。

 ただその割に、キャスはそこまで俺に完璧にしたがっている、みたいな感じでもないのはわからないところだ。

 俺の望んでいることとは異なることも普通にするしな。

 アトにしたって、そうだ。

 《従属契約》は完全に自由意志を奪う、という類ではおそらくないのだろう、ということはなんとなく気づいてはいる。

 契約に基づいて、俺に従いはするが……どこまで、どんな態様で、なのかは結局まだよくわからない。

 いずれ、そういった技能による支配状態を妨害できるような魔導具も欲しい。

 そういうものがあれば、その辺りについてもっと解析できるだろうから。

 ともあれ、今はとりあえずリベルとマタザの願いを叶えることを約束しておくことにしようか。

 

「二人とも、分かったよ。だが、値段は期待しないでくれよ……あと、他のコボルトたちにもあげるからな」


「にゃっ!」


 キャスがペシペシ頭を叩いてきたので、


「分かった、キャスにもだったな……これは大変そうだ」


 俺はそう言うしかなかった。

読んでいただきありがとうございます!

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