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第2章 《煉獄の森》の魔物たち
第50話 剥ぎ取り

「……さて、十分休憩はとった。そろそろ剥ぎ取りといくか」


「そうですわね……邪樹人は魔物の中でも有用な素材の多い、優秀な魔物ですわ。これからのことを考えますと、剥ぎ取りをしておくことできっと役に立ってくれるでしょう」


 俺の言葉にアトが同意を示した。

 邪樹人の有用性はまさに彼女のいう通りで、これからのこと、というのはその素材を街に持っていって売買することについてだな。

 俺はヒモよろしく、当面の生活費を後で彼女にもらう予定ではあるが、それで一年や二年という長い期間ずっと生活を維持していけるわけも無い。

 もちろんこの《煉獄の森》で生活し続ける限り、金銭は必要ないのだが、ここはあくまでもいざと言う時の隠れ家的な使い方をする場所であって、ずっとここに住み続けたいわけでもないのだ。

 コボルトたちの集落も完全に捨て去るつもりはないが、基本的にはどうにか街の近くに拠点を築きたい。

 それくらいの感覚である。

 ちなみに、あの集落については他の知恵ある魔物……オークとかゴブリンとかに利用されることがないよう、アトによって高度な祝福の魔術がかけられている。

 高い技能レベルもあり、その効果は非常に長いようで、それこそ一年くらいなら平気だという。

 それ以上になってくると、徐々に効果も落ちていく、と言うことだから俺たちの目標はそれくらいまでの期間に、なんとか普通に生活できるように拠点なりなんなりを得ることだろう。

 出来れば街に住みたい……が、結構な大所帯だからな。

 普通の家族なら四、五人だが、俺たちはコボルトたちも入れると十人以上いるのだ。

 街に家を確保するつもりなら、それなりに大きな家が必要になってくる。

 そしてそういうものは高価だ。

 だからなかなか難しい。

 まぁ、気長にやっていくしかないな。


 ともあれ、今は剥ぎ取りの方か。


「邪樹人の素材は、魔石と、樹皮が主だったよな? あとは……まぁ、本当なら全体的に高価な木材としての利用も可能らしいが、流石に持っていくのは厳しいよな……」


 加工すれば高級な木材として取引されることもある、と聞いたことがある。

 貴族向けの高級住宅とか、ログハウスとかで邪樹人の素材をふんだんに使っていることを売り文句とすることもあるくらいだった。

 しかし、それにはその通り大量の、具体的に言うなら規模にもよるが、俺たちが倒したクラスの邪樹人でも百本二百本は優に必要になってくるだろう。

 貴族向けのものとなると、さらに品質や魔力的な部分も詳しくみられた上でと言うことになるだろうから、さらに厳しい。

 まぁ、別に必ずしも家にするわけではなく、杖とかだったり、椅子やテーブルとかの家具だったりにも使えるからやはり売れるけどな。

 ただ四体とはいえ、これを俺たちで運ぶのは現実的ではない。

 

「一応、私の方で魔術袋がございますわ。こちらをお渡ししておいても構わないのですが……」


「えっ、そんなもの持ってたのか?」


 魔術袋とは、内部が極端に拡張された、いわゆる魔法の袋だ。

 その容量は製作した職人の腕などにもよるが、大きくなればなるほど高い。

 迷宮で見つかるものが最も高い効果を持つと言われているが、滅多に見つからず流通することもまれだ。

 そこまでの品は大抵は貴族や大商人が買うからな。

 一般人が手にすることはない。

 一般人でも手に入るクラスの魔術袋となると、職人の製作したものになるが、それですら金貨がどれくらい必要か。

 数もやはり少ないしな。

 そんなものを、アトは持っているというわけだ。

 俺も俺で、実家にいるときは持っていたけれど、残念ながら持ってこられなかった。

 父上としては、そんなものを渡していたと後で教会に知られれば間違いなくつけ込む隙を与えると考えてのことなのだろうから仕方がないが、あれがあれば色々便利だったのにとことあるごとに思わなかったわけではない。

 そんなものをアトが……。

 それさえあれば、容量次第ではあるものの、邪樹人四体の素材全てを持っていけるかもしれない。

 そんな期待をして彼女を見ると、


「ええ、教会から貸与されたものですが……内容量はそうですね、大きな倉庫に匹敵するくらいだったかと。色々入れていますが、いまだに限界が訪れたことは……」


 そう言った。

 その言葉に俺は驚くと同時に、残念に思った。

 驚いたのはもちろん内容量の話で、そこまでの大きさのものはオークションに出されたことがあるものでも聞いたことがないレベルだからだ。

 残念に思ったのは、教会貸与、というところである。

 そういうことならこれを借りるわけにはいかないからだ。

 一時的に何かを運ぶためになら構わないだろうが、これからアトは教会に戻る。

 この魔術袋をなくしたとか、そういうことを言うわけにはいかないだろう。

 街に行く際に一緒に行ってもらう、ということも考えられたが、これもやめておいた方がいい。

 アトはその存在が極めて有名で、俺たちと一緒に街などに入れば、俺についてかなり怪しまれるのが目に見えている。

 今回も、森を出られるあたりまで進んだら別れるということになっている。

 そのまま彼女は教会に戻り、俺たちは街を目指すのだ。

 

「それくらいの魔術袋、いつか手に入ればいいが……なかなか難しそうだな。仕方がない。今は魔石と持てるだけの樹皮のいいところを剥ぎ取って満足することにしよう」


「それがいいですわね」

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