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第2章 《煉獄の森》の魔物たち
第49話 アト、命の重さ

「仲が良くなれたなら、嬉しいですわ。考えてみると魔物の方々とこうしてお話をできることって、まずありませんでしたものね。珍しい経験をしているな、と深く思いますわ」


「魔物にだって、意思疎通できる種族はそれなりにいるだろう?」


 いわゆる、亜人系とか魔人系とか、そう言われる種族のことだ。

 亜人は人族として扱われることも多いし、魔人にしても国や地域によっては扱いは異なるものの、人として扱われる。

 ただ、まぁ……オラクルム王国は人族至上主義……この場合の人族は、いわゆる起源四種と言われる、普人族、エルフ、ドワーフ、そして獣人を指し、その上で普人族こそを一番とする考えのことだ。

 非常に特殊な思想である、と俺は思うのだが、オラクルム王国では普通とされていた。

 そもそも教会がそのような思想のもとに活動しているから、教会勢力が強いところではその傾向が強くなる。

 もちろん、教会も馬鹿ではないというか、自分たちの布教について有利な状況を作ろうという意識があるから、あまり自分たちの思想が深く浸透していない、という場合には主張を弱める。

 例えば、あくまでも起源四種こそが世界の基礎となった種族なのだ、とか、そんな言い方にしたりな。

 他の種族はどうしても数が少なかったり、勢力が弱かったりするのでその感じで十分に布教活動として効果を発揮するのだ。

 もちろん、大抵の国では、というくらいの話でしかなく、そうではない国もかなりあるけれどな。

 それでも最終的には普人族の下に他の種族全てを置きたいのだろうから、それ以上主張を弱めるわけにはいかないのだろう。

 ともあれ、そう感じであることを考えると、魔物がいるにしても意思疎通というのは中々、聖女にできることではないのかもしれなかった。

 そんな俺の予想通り、というべきか、アトは言う。


「私としては特段何の差別意識もなかったのですが、周囲の方々が人々との交流を遮ることが少なくありませんでしたから。魔物の方のみならず、亜人たちにすら、それほど会話ができないことは普通でしたわ。当時はやはり、何も疑問を感じておりませんでしたが……今にして思うと、やはりおかしいですわね。私は元々、傭兵として様々な国で活動していましたので、亜人だろうと魔人だろうと、差別意識などありませんでしたのに、アレではまるで……」


 教会の差別主義者のようだ、と。

 はっきりとは言わなかったが、そう続けたかったのだろう、ということは明白だった。

 しかしそれはおそらく彼女の責任ではないのだろう。

 俺と《従属契約》をする前の彼女は、何らかの理由で平常ではなかったのだろうから。

 俺に従属してしまったことも平常とは言い難いだろうが、俺は彼女に基本的な思想の制限をしている感覚は特にない。

 俺から何らかの制限が技能を通して行っているとしても、それは俺や仲間たちには危害を加えない、という限度で行われているに過ぎないと思う。

 実際、アトは相当自由に思考しているからな。

 俺たちに対して、修行という名目であれば相当厳しいことも出来るわけだし。

 

「まぁ、その時のことは自分を責める必要はないだろうな。教会の……何らかの思考制御が、多分あったんだろうから」


「それでも、そんなものに統制されていた自分が情けなく思いますわ。傭兵時代、しっかり父から洗脳系についてはレジストできるよう、薫陶されてきたのですけれど」


「余程強い魔術や技能によってそうされてたということかな……やっぱり、聖王にはそういう力がある?」


「それは教会の聖王が、ということですわね? 正直、それについては判然としませんわ。私が抵抗できないほど高いレベルで、そういった技能を持っている可能性は……ないとは言えません。ですが、そうだとすると私がノア様のお力によってこうして正常に戻っているのに、ここに人を派遣しない理由が分かりませんから」


「それは確かにな。俺が聖王だったら、洗脳系の技能が解かれた時点で、ここに誰かを派遣するだろう。聖騎士団でも、アト以外の他の聖女でも、な」


「その辺りについては、聖王の判断は常に迅速でしたわ。反乱勢力が出現したら、その瞬間に出兵を決定するような方でしたから」


「聞きしに勝る好戦的な集団だな、教会ってやつは」


「何かを教示するには、まずは力を示すことですわ」


「正しいのだろうが、それと同時に恐ろしくなってくるよ……まぁ、そういうことなら、やっぱりアトが俺についたことは聖王にはバレてない可能性が高いか」


「そうだと思います。ですが、絶対ではありませんから。そこは警戒しておくべきです。実際に私は聖王のところに赴き、そのあたりについてどうなのか、調査いたしますが……私がその際に殺されても、どうかお心に留められませんよう……」


「ばか。そんなこと出来るか。アト、お前がそんな目にあったら、俺は必ず聖王を……」


「いけません! 復讐など、考えないでくださいませ。もちろん、その御心は嬉しく思いますが、ノア様が生き残られ、偉業をなされること、それこそが私の望みですから。どうぞ、お願いいたします……」


 アトが深く頭を下げてそういう。

 正直、承伏しかねるところが大きい。 

 しかしここでどうこう言ってもアトは頷かないだろう。

 俺は仕方なく、


「はぁ、わかった。でもアト。お前も危なくなったらすぐに逃げてこいよ。一年という時間を区切っても、俺は心配だ……」


「心配していただけるだけで、私は幸せですわ。ですが、そうおっしゃるのなら、十分に気をつけます。必ず、生きてここへ戻って参ります。ですから、ノア様たちも、決して欠けることなく生き残られてくださいませ」


 それもそれで、一つの問題だよなぁ。

 そう思った俺だった。

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