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第2章 《煉獄の森》の魔物たち
第26話 追手の発見

 ……あぁ、あれは駄目だ、化け物だ。


 そう思ったのは以前、洞窟の外に巨人……スカテネを見たとき以来のことだった。

 《煉獄の森》は化け物の巣窟だというが、その化け物たち以上の、人間を見るとは思っても見なかった。

 それは濃密で強大な魔力と聖力を周囲に放っていて、哄笑を上げながら周りの植物たちを破壊し続けている。

 その様はまさに煉獄の体現と言ってもいいだろう。

 にもかかわらず、その人物は見た目は非常に美しいのだ。

 真っ白なヒラヒラとした貫頭衣様の神官服に、高い階梯を示す帽子、緩やかにウェーブがかった長い髪は都会的な洗練を感じさせると同時に、その夢見るような紫色の瞳と相まってどこか非現実な存在感を漂わせる。

 それは少女だった。

 俺と同じくらいか、少し上くらいかと言った感じの。

 しかし俺とはまるで異なる凶悪性だ……関わり合いになりたくない。

 しかもあれは賭けてもいいが、教会から来た人間だろう。

 教会であれほどの純白の服を着ていて、かつあれだけの戦闘能力を持っているとくれば……《聖女》ということになる。

 聖女は教会に三人いる。

 《盾の聖女ミメット》《鎧の聖女ルナ》そして《剣の聖女アト》……。

 あれが一体どれなのかは、もう行動を見れば明らかだ。

 全ての聖女にある程度の攻撃能力はあると聞くが、しかしあそこまで攻撃的な性格をしているのは最後の一人の《剣の聖女》しかいない。

 最も年下で、神秘的な雰囲気を持っている少女だが、戦場においてはその純白の衣服が真っ赤に染め上がるとも。

 他の二人はあまりそういう役割を負うことがないので余計に彼女のその性格は際立っている。

 俺を追ってくる聖女がいるとすれば、できれば盾か鎧の方であって欲しかった。

 《盾の聖女》は穏やかで優しいという話だったし、《鎧の聖女》は理性的な人物だと言われているから。

 しかし《剣の聖女》は駄目だ。

 あいつには話し合いなど通じないだろう。

 俺は自分の運の悪さを呪った。

 考えてみれば初めからずっとそうだ。

 《聖王》スキルを得てしまったこともそうだし、捨てられた場所がこの《煉獄の森》であることもそうだし、やっと見つけた安住の地、洞窟の周辺がスカテネの周回ルートだったこともそうだし。

 俺はついてないな……。

 だが、別にここに来ていいことがひとつもなかったわけでもない。

 キャスに出会えたし、コボルトたちとも巡り会えた。

 ここに捨てられたのは父上の考えうる最も生き残る可能性が高い地がここだったからで、そこに恨言を言うのも本当は違うということも分かっている。

 置かれている状況はひどいが、ひどいなりに恵まれているのだ、俺は。

 実際、俺は生き残れている。

 この境遇に置かれた人間が、たとえ一日でも生き残れたとしたら、それは普通、運命とか幸運とかそういうものになってくるはずだ。

 そしてそれが俺にはある。

 きっと、多分、おそらく。

 だから……今回だってどうにかする。どうにかなる。


 そこまで考えた俺は、大してない勇気を振り絞って草むらから這い出し、そして例の人物……《剣の聖女》アト・ヘレシーの前に飛び出したのだった。


 ******


 おや、と私は思った。

 私の……というか、聖女に与えられた、《カード》の位置情報をたぐれるという権能によって私はこの辺りに目的の人物、ノア・オリピアージュ……いや、今はただのノアか。

 彼がいることを察知した。

 ちなみにこの権能だが、聖女によって細かいところが異なっていて、それは《神の頭脳》にアクセスする才能によるらしい。

 それができる者を聖女として教会が見つけ、囲っているわけで……と、聖女の仕組みについてはいいだろう。

 ともかく、私にはノアの位置が概ね、分かっていた。

 それでもあくまで大体であって、細かな位置は微妙だった。

 他の聖女ならばおそらく《煉獄の森》にいるということまでは分かっても、さらにその何処かを絞ることはできないだろうから、私はそこそこ優秀なのだった。

 だからこそ、戦場において必要な首をとる役目は私に任される。

 まぁ、他の二人の性格や能力が、そもそもそれに向いていない、と言うのもあるのだけれど。

 私は戦いが好きだ。

 聖女にあるまじきことだ、と言われてしまうかもしれないが、魔物相手でも、人間相手でも、戦っている最中が最も生きているという感じがする。

 元々私は傭兵の父に育てられ、この聖女としての才能が見つかるまでは戦場を転々とする生活をしていたことがその原因だろう。

 父は私に戦闘技術を仕込んだし、私はそれを楽しんで身につけた。 

 初めに人を殺したときには十歳にもなっていなかったし、けれどその時の自分の心には悲しみとかではなく、やっと一人前になれたという喜びしかなかった。

 その後、教会に属すことになった後も、その感覚は変わらない。

 お互いの命のぶつかり合い、その中でわかる相手の過去や心、そういう刹那にこそ生を感じる。

 だから私にとって、今回の任務もまた素晴らしいものだ。


 任務。

 根源技能《聖王》を持つ者を捕獲、もしくは殺害すること。

 なぜと言って、それはあってはならないもので、私は聖下に従う者として、それを排除しなければならないのだから。

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