伊集院光いじゅういんひかる
タレント
NHK新人演芸コンクール・落語部門(1988)
三遊亭楽大として
インタビュー
落語家というのは息の長い仕事で新人の基準がすごく長いんです。この時、決勝に残ったのも落語家歴13年とか15年という人たちだったから、まだ2年かそこらだった自分が本選の舞台までいけたことは嬉しかったですね。
若いうちの特権ともいえますが、生き急ぎがちですぐに結果が出ることを期待してしまう。だけど落語の世界は果てしなく、自分が上達しているのかどうかすら自信が持てなくなってくる。この世界で食べていけるかな、いやダメだという具合に感情の起伏が激しかった時期に、少なくともNHKが主催する大会で決勝進出者に選んでくれた。そのことは自信になりました。権威主義といえばそれまでですが、落語界では大きなイベントですから多くの方が見てくださり、そのことで周りからも認めてもらえる。これがきちんとテレビに出た初めての経験でしたし、本当にうれしかったです。
「黒いなんてもんじゃないよ。向こう歩いている時ね、随分でっけえカブトムシがいるなって俺思ったんだからよ」 お酒欲しさに隠居からほめ方を教わったものの、ほめようとすると変な会話になってしまう
いざ決勝に進んだところですけべ心も出て力が入りすぎていた気はしますが、自分なりに噺(はなし)を変えたところを春風亭小朝師匠が「良かった」と言ってくださったと聞きました。十数年後、お会いした時にも「あの時のことは、よく覚えているよ。(落語家をやめて)もったいないと思ったよ」とまで言ってくださったのは、改めてすごく嬉しかったですね。
当時オンエアをビデオで見た時は「もっと、こうもああも出来たのに!」とすごく恥ずかしくて、「うわーっ!」となりましたが、55歳の今は「よく頑張ったじゃん」と声をかけてあげたい。「そこは違う、もっと溜めて間をとった方がいい」というところももちろんあるけれど、あのころの腕と能力を考えたら「あの子、よくやってるね」って。
「今日は大変だよ、上げてもらうけどね、ほめちゃうよ」
伊集院光いじゅういんひかる
タレント
1967年、東京都出身。六代目三遊亭円楽に弟子入り、三遊亭楽大を名乗り落語家として活動。88年、伊集院光の名前でラジオ出演。トーク力と雑学的教養に長け、タレント、ラジオパーソナリティーとして幅広く活躍。主な出演番組は、ラジオ「伊集院光のオールナイトニッポン」「伊集院光 深夜の馬鹿力」、テレビ『クイズプレゼンバラエティーQさま!!』『雑学王』など。NHKでは、『100分de名著』『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』などに出演。2023年4月スタートの新番組『魔改造の夜』、FM「伊集院光の百年ラヂオ」に出演する。