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第15章 山積みな課題
第543話 山積みな課題と依頼報告

「……依頼の報告なんだが、今、いいか?」


 マルトに戻り、冒険者組合ギルド受付に向かうとシェイラがそこにいた。


「はい、大丈夫ですよ。レントさんが今回受けられたのは……あぁ、こないだのクラスク村からのものですね。こうして来られたと言うことは、問題なく?」


「……いや、どうだろうな」


 依頼をしっかり終えたのかどうか、と言う点については確かに問題なかったと言える。

 しかしながら、今回の依頼は比較的特殊な経緯を辿った。

 そのことについては説明しておくべきだろう。


「何かありましたか?」


 それなりに経験のある冒険者組合ギルド職員として俺の言い方に違和感を覚えたらしいシェイラがさりげなくそう聞いてくる。


「あぁ……クラスク村からの依頼は、村に出現した骨人五体程度の討伐だった。それについては比較的すんなり終わったんだが……」


「それ以外にも何かが?」


「そうなんだ。村には確かに五体の骨人がうろついていたんだが、それ以外にも出現してな。調べてみると、ただ野良の骨人がうろついていたのではなく、骨人がクラスク村周辺で発生していることが分かったんだ」


「そうなりますと……多くの冒険者の方はそこで依頼を中断されますが、レントさんは……?」


 シェイラは多く、というが大体半分より少し多いくらいだろうな。

 それも、流石に骨人五匹以上がいれば倒せるかどうかは微妙だ、という実力の銅級冒険者パーティーならば、ということだ。

 骨人の発生源がある、くらいであればなんとか出来る実力のある、銅級でも上位の実力を持つ者やパーティーであれば、これくらいで依頼中断はしない。

 油断や過信ではなく、そういう発生源があるのであれば、できるだけ早く片付けなければ危険だからだ。

 数ヶ月放っておいて、いつのまにか数百体の骨人の群れが出来ていた、なんてことになったら目も当てられない。

 もちろん、流石にそこまでになるということは滅多にないが、確率としてありえないというわけではないのだ。

 だから、もう半分の冒険者は中断せずにそのまま依頼に取り組む。

 報酬や条件の再交渉はありうるけどな。

 俺はシェイラに答える。


「あぁ、そのまま依頼を続けた。それで、案の定、骨人の発生源も見つけたんだが……そこも聖水で浄化しておいたよ。だから、もう骨人が発生することはないだろう」


「そういうことでしたか。そうなると、依頼料の上乗せについては……」


「村長の方からそういう相談もあったんだがな。今回のことで村がかなり破壊されていたんだ。だからそのことを考慮して、それは断った。ただ、食料や宿泊費についてはただで面倒を見てもらったし、珍しい食材や植物の提供を受けた。まぁ……悪くはなかっただろう」


「そうでしたか……それだけの状況にあって、初めから上乗せなどするつもりもなく、他に何の手当もないようでしたら冒険者組合ギルドとしても考えなければならないところでしょうが、レントさんがそうおっしゃるのでしたら、問題ないでしょうね。ちなみに、珍しい植物とはどんなものですか?」


 それはリブルがふと食事しているときに言及したもので、まさかあの辺りにあるとは全く思っていなかったもの……ルテット草というもので、極めて珍しい植物だ。

 小型の機械の動力機構に組み込まれる重要な植物で、王都の方に流せばかなりの額で売れる。

 正直なところを言えば、しかるべきルートで売却すれば今回の依頼料よりも高値になる。

 だからそれをある程度提供された、という時点で相当の黒字だった。

 だからこそ、俺はシェイラに色々ぼかした言い方をしたのだが、その瞳は明確にこう、主張していた。

 貴方が珍しい植物、と言うのであれば本当に極めて珍しい物なのは分かってるのでその情報を吐いて下さい、と。

 シェイラもこれで俺との付き合いが長いから、俺がどういう人間かよく分かっているわけだな……。

 まぁ、別に極端に隠匿するつもりもない情報だ。

 リブル達にもルテット草がそういう価値を持つ品であり、しっかりと管理すればかなりの利益を産める品であることは説明しておいた。

 それでいて今回の報告でぼかしたのは、生産管理についてリブル達クラスク村の人々がある程度見通しがつくまでは隠しておいた方がいいかな、と思ったからだったのだが……。  

 まぁ、こうなったら隠し通すよりも協力を求めた方がいいだろう。

 俺はシェイラに言う。


「あの村にはルテット草の群生地がいくつかあるんだ。それを数束もらった。だから問題ないんだ」


「ルテット草……!? また随分と大変な情報を持ってきましたね……。あれは人工栽培が大変難しいので、本来の生息地での栽培以外には大量生産が出来ないものですよ……レントさんに教わったことですが」


「俺も驚いたけどな。やっぱりこの辺は辺境だから、そういうのがふと見つかったりするから楽しい。ルテット草の価値については俺が村人達に説明しておいたし、知られている栽培管理の方法も伝えておいたから、そのうちマルトにも持ち込まれると思う。クラスク村には定期的に回ってる行商人もいるとのことだから、そこからマルトに来るんじゃないかと思うが……」


 リブルの話によれば、定期的に来る行商人はクラスク村の特産品の数々を仕入れてマルトで売却しているということだったから、素直にそのルートに乗ることになるだろう。

 といっても、極端に買いたたかれないようにルテット草の大まかな卸価格については村長に説明してある。

 あの村はこれからそれなりに潤うだろう。

 しかし、俺の言葉にシェイラが首を傾げ、


「……クラスク村に行商人が……? おかしいですね。確かに十年前までは定期的に行商人が行き来していた記録はありますが……見る限り、ここのところは偶然あの辺りに行った商人以外には特にそのような人はいないようですが……。あとで商業組合にも確認しておきますが……」


 そう言った。


「ん? だが確かに来ていたと……特段何かを買いたたかれたり不当な取引をしているという感じでもなかったぞ」


「そうですか。となると、単純な記録ミスかもしれませんね? でも、行商人の方についてはよくよく調べておきましょう。それと……骨人の発生源の話ですが、具体的には……?」

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